そうなの?
「……という訳で、全ての元凶は王子とその恋人なんですよね」
「話には聞いてたけどマジ腹立つわね王子共、クソじゃん」
クロを撫でながら近くの椅子に座らせたリィーンさんに、今までの事を掻い摘んで説明した後での言動である。
なんか物凄い真顔なリィーンさんが淑女にあるまじきセリフを吐いてくれた。
その通り過ぎて反論出来ねぇ。
さすが王子とエトワール嬢。
でも一応忠告しとこうと思います。
「ダメですよクソとか言っちゃ、確かにクソですが……そこはこう、おうんこ様などに変えましょう」
「そっちのが汚いです」
たしかに。
自分で言っといてアレだけど。
「ふむ、…………では、排泄物様に致しましょう」
「そうしましょう」
そうするんだ?
え、良いの?
いや、うん。
本人が言ってるんだからまあいいか。
「で、これからどうするのか、決めてらっしゃるのよね?」
「ええ、ですが、こちらから何かを仕掛ける事は出来ないので、基本的に受け身となりますね」
頭を撫でてないとクロが不機嫌になるから、話してる間中ずっと撫で続けてるんだけど何の苦もないですありがとうございます。
めっちゃゴロゴロ言ってるよクロちゃん、はぁー可愛い。
「相手は王子ですものね、それもそうか…………」
「廃嫡されたとはいえ、王子である事には変わりありませんからね」
マジでそこがめんどくさいんだよなぁ。
サクッと暗殺出来たらいいのに。
なんだかんだで王子が大事なのか、自決させる訳でもなく、王城に軟禁してるんだもんなぁ。
これで反省するならもう少し温情をかけるつもりなのかな。
あれ?温情ってかけるものだっけ?
…………まあ、いいか。
「でも、行動が後手に回るのは良くないんじゃ?」
「はい、なので、何が起きても対処出来るように根回しをその他もろもろして行きます」
首輪に付けてる機能にも、なんかあった時の為の物を考えられるだけ付けてるのはそういう事なんだよね。
「予測出来るんですか?」
「まあ、簡単にではありますが、一番最悪を予想すれば良いかと」
「例えば?」
「誰か王子よりも地位の高くて頭の悪い人間が、王子に丸め込まれ、暗殺者を送り込んで来る、等ですかね」
そんな俺の説明にリィーンさんはというと、物凄く不審そうな顔をして口を開いた。
「……あるんです? そんなの」
「有り得る話ではありますよ。
ただ、向こうに筒抜けになっている可能性もありますので全ては言いませんが」
「えっ」
俺の説明に驚いて目を見開き、言葉を詰まらせるリィーンさん。
「王家の人達が私達に見張りを付けずに居るという事は無いと思いますので」
「なるほど……、でも、一応私にも説明しといた方がいい事とかあるんじゃないですか?」
そう言われれば確かにそうである。
「…………では一つ、クロの付けている首輪を無理に外そうとした場合、その人間に致死レベルの電流が流れますのでご注意下さい」
「お嬢様になんつー危険な物装備させてんですか!!」
「私がクロにとって危険な物を装備させる訳が無いじゃないですか! 他の人間など知りませんが!」
「あぁ、そう…………」
堂々と断言したら、何か残念な子を見る時の目で溜息を吐かれてしまった。
解せぬ。
「んなぁん」
「ねぇクロちゃん、俺がそんなんする訳ないよねー!」
「なぅう?」
「はぁあクロちゃん可愛いいー首傾げたぁあー!」
「コイツのこれはなんで許されてるんですかお嬢様……!!」
嘆くように頭を抱えるリィーンさんから、そんな声が聞こえた。
まあ、それはアレだ、俺だからだよ。
********
タカユキは、アタシにとって大事な子。
昔から危なっかしくて世話が焼けるけど、優しくて、暖かい子。
体が大きいのに頭が悪くて、いつも的外れな事をしちゃうけど、それでもアタシの事が大好きだって全力で行動してくれる。
だからアタシも、タカユキにそれを返すの。
タカユキが長く喋れば喋る程、何を言ってるのかアタシには全然分からないけど、『好き』と『ごはん』と『ダメ』と『いい子』は分かるの。
タカユキはアタシの事を子供みたいに思ってるのかもしれないけど、アタシからするとタカユキの方が子供なのよ。
大きくなっても世話の焼ける、可愛い子なの。
───────ねぇ、それって、好きってこと?
好きじゃなかったら一緒にいないでしょ?
───────そうじゃなくて、もっとこう、恋愛感情みたいな、そういう意味で。
レンアイ、って何?
───────えっと……、一緒に居てドキドキしたり、嬉しくて泣きそうになったりする気持ちよ。
よくわからないわ。
それってどういう時になるの?
───────好きで好きでしょうがなくて、どうしようもない時ね。
ふぅん。
そうなんだ。
───────今は分からないかもしれないけど、あなたならきっといつか、分かると思うの。
アンタは?
───────私?
そう、アンタはそんな気持ちになったことあるの?
───────あるよ。
そうなの。
───────だけど、私はその人に嫌われちゃったから。
ふぅん。
そいつ見る目無いわね。
───────え?
だって、こんな優しい子、大事にしないなんて馬鹿じゃない。
───────どうして?
アンタはアタシから見てもいい女なのに、それに気付いてない奴なんてそれまでの奴よ。
───────本当に大事で、好きな人だったのよ、何も知らないくせに酷いこと言わないで!
そりゃあアタシはアンタの事知らないわ。
───────だったら、適当な事言わないでよ!
適当な訳無いでしょ、話は最後まで聞きなさい。
───────あなたに私の何が分かるっていうの!
分かるわよ、アンタは、アタシと一緒なんだから。
───────あなたと私の、どこが一緒だっていうの! あなたは人を信じられてる! 大事な人が居て、大事にして貰えてる! 全然違うわ!
あぁもう、本当に世話の焼ける子ね。
それはアンタの見た世界でしょ。
もう少しちゃんと見なさい。
───────何を見ろっていうのよ! 幸せそうなあなたを見て、私は嫉妬で醜くなってる! 惨めなだけよ!
人間ってホントに視野が狭いのね。
よく見なさいな。
タカユキは、アタシを見てないわ。
───────え?
あの子はね、現実が全く見えてないのよ。
アタシを大事にして、可愛がって、大切にしてるけど、それだけ。
誰も見てないし、見えてない。
───────どうして、そんな事が分かるの?
分かるわよ、生まれた時から見てきたんだから。
だけどアタシは、それでいいと思ってる。
───────何故?
タカユキが大事だからよ。
あの子は馬鹿だけど、それが分からない子じゃない。
だからアタシは、あの子がちゃんと見れるようになるまで待つつもりよ。
───────本当にそれでいいの?
いいのよ。
だって、アタシは……───────
「クロちゃん?どしたの?」
「にゃあん」
「なぁに今日は甘えん坊さんなの!? もうクロちゃん!可愛いいいい!!」
わしゃわしゃと頭を撫でてくれるタカユキの掌に頭を押し付ける。
すると、タカユキは嬉しそうな顔で笑う。
それだけで胸の辺りがあったかくなるから、それでいい。
タカユキが大好きだから、自分できっと気付いてくれるはずだから。
……でも、あんまり待たせるようなら、怒ろうかな?
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