スリ少年、アルフレッド・バーガーズ

久石あまね

第1話 アルフレッド・バーガーズ

 薪ストーブに直接手を触れたら必ず火傷するのと同様に、アルフレッド・バーガーズに関わると必ず火傷する。それは全く疑いようのない事実である。彼の弟である、ミハイル・バーガーズはその事実に対して否定はしない。


 ミハイルの兄、アルフレッドは10歳のサラサラとした金色の髪を程よく伸ばし、灰色の瞳を持つ。その瞳は彼の気分によって輝きが変化し、人々を魅了させる。彼は顔が整っており、よく年上の少女の頬を紅く染めさせた。彼はやや寡黙で、決して弁が立つ方ではなかったが、その彼の押し付けがましくない性格が、彼と接する人々を油断させた。だから彼は容易にスリや強盗、スープに軽い毒をいれるいたずらをなどをよくした。ミハイルとアルフレッドの住むリバーウッドの村には数軒家があるが、アルフレッドはそれらの家々に勝手に侵入しロックピックを使用し金庫の中を覗いたりした。ときにはミハイルもアルフレッドに誘われて他人の家に不法侵入した。他人とは言え、小さい頃からよく知っている奴らの家だから不法侵入がバレたら、アルフレッドはよくげんこつを食らわされていた。ミハイルはそんな兄を見て、よく笑っていた。兄のアルフレッドもそんな姿を弟のミハイルに見られるのがうれしそうでヘラヘラと笑っていた。


 アルフレッドとミハイル。ふたりはリバーウッドの村のサーロ孤児院で育てられた。サーロとは豚の脂身という意味だ。サーロは北の帝国では高級品で、それを食べられるのは貴族や高級騎士ぐらいだ。この孤児院の由来は孤児である子どもたちが、高級品であるサーロを食べられるぐらい豊かになるという意味が込められている。無論この北の帝国では階級移動は滅多になく、農民は農民のまま、貴族は貴族のままといった具合に、身分が変化しない。


 

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