第70話 最終決戦の舞台
いよいよ俺たちは最後の戦いに打って出る。
思わぬ劣勢を強いられているグロームの軍勢だが――恐らく、本隊には一連の戦闘行為を支持する黒幕がいるはずだ。
そいつを打ち倒せば、この戦いは終わる。
俺たちはそう確信して、敵の本陣へと向かって魔境を出発。こちらの防御に関してはアルを除いた二体のヌシと、そのヌシに従うモンスターたち、さらにパーディの話ではまだ見ぬ四体目のヌシも加入する予定らしい。
こちらの守りは万全と言っていいだろう。
そもそも、グローム側からすれば重要性はエクルドの方が上。
あそこを支配下におけば、魔境へ攻め入るのも簡単になると予想したのだろう。
だが、事態はグローム側の思い描く展開にはならなかった。
エクルドによる激しい抵抗。
そして、魔境へ進んだ軍勢も返り討ちに遭った。
この戦いで、グローム側はなんの成果も得られていない。
それどころか、無駄に戦力を消耗しただけであり、それどころか勝利したエクルド側の士気をあげる結果となった。
グローム軍を率いる指揮官が何者かはいまだ不明だが、これは非常に屈辱的なことだろう。
その事実に激高して短絡的な行動を取ってくれたら、こちらも対応しやすいのだが……さすがにそうはならなかった。
ギリギリのところで踏みとどまり、体勢を立て直しているのだろう。
まもなく夜がやってくる。
本格的な衝突は夜明けを待つことになる。
とはいえ、そう決めつけるわけにはいかない。
劣勢を打破するために、常識を覆すような手を打ってこないとも言えないからだ。これは同行しているスレイトンも同じ考えだった。
「今のグロームは手負いの獣……ここでの敗退は国家として立ち直れないくらいのダメージになりかねないというのはさすがに理解しているはず。――次は、何もかもかなぐり捨ててでも勝ちを取りに来るはず」
「だろうな」
その辺りの意見は俺もスレイトンも一致している。
あとは、残りのグロームの軍勢がどこを拠点としているか、だ。
俺たちはなるべく目立たないよう魔境に沿って移動し、途中で偵察兵を送りだして周囲の様子をうかがった。
すると、ひとりの偵察兵から有力な情報がもたらされる。
偵察兵によれば、南西にある小高い丘を越えた先で、たくさんのグローム兵がいるのを見つけたという。
どうやらそこが敵の拠点らしい。
「ならば、そこを一気に攻めよう」
「そうですね……ここで決着をつけるべきでは?」
「私もそう思うな」
スレイトン、リリアン、アルはそう言って俺へと視線を向ける。
対して、俺の下した決断は――
「やろう。ここでグロームを仕留める」
総攻撃だった。
しかし、この事態を魔境にいる者たちやエクルド王国に知らせる必要があるとも考え、数名の兵士に伝令役を頼むことにした。
これで、準備は万全。
偵察兵からの情報を総合し、まずはヤツらの戦力の一部をこちらへおびき寄せる作戦を取ることにした。
トラップ魔法も仕掛け、まずは出鼻を挫く作戦を立てよう。
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