第68話 戦況

 スレイトンが同じ志を持った騎士たちを集め、強大な戦力として魔境組に加わった。

 おかげでこちらの状況は一気に改善したわけだが……逆にエクルド側が窮地に立たされていることを知る。


 そこで、俺はリリアン、そしてアルに三十人規模の兵力を引き連れてエクルド援護のために動きだす。


 魔境を離れておよそ一時間。

 目的地である平原へとたどり着くと、そこではすでにグローム軍とエクルド軍の激しい戦闘が始まっていた。


「あの中に割って入っていくのは厳しい状況ですね」

「事前通達もないからな……エクルド側が俺たちを味方と判断してくれるかどうかもハッキリしないし……」


 仕方のないことではあるが、正直、動きづらい状況ではあった。

 こうなる前にしっかり打ち合わせができていれば、いくらでも対処できたのだろうが、まさかここまで一気に戦火が広がるとは……ただ、今回の戦いはグローム側にとっても入念な下準備を終えて仕掛けてきたものとは思えなかった。


 スレイトンがあれだけの兵力を集めてこちら側についたのがいい例だ。


 そう考えながら戦況を見守っていると、徐々にグローム側の旗色が悪くなっていくのが分かった。


「エクルド側が押しているようですね」

「……いや、そろそろだ」

「えっ?」


 ここで、俺の記憶が嫌な情報を呼び起こす。

 あのゲーム――【ホーリー・ナイト・フロンティア】における大国の扱い。いくつか登場する連中の戦い方は、圧倒的な兵力でゴリ押してくるというものだった。

 今、こうしてグローム王国がやっている戦法こそ、まさにゲーム内に出てくる大国の軍組織がする手口。

 ということは……


「エルカ様! 後方からグロームの援軍が!」

「っ! やはりそうきたか……」


 現れたグロームの増援。

 その数はおよそ百。


 戦況が有利になり、士気が上がっていくエクルド軍。

 しかし、あれだけの数の増援が来たとなったら、その高まった士気は一気に下降するだろう。そこからまた盛り上げていくのは難しい。

 だとしたら……俺たちがやることは決まっている。


「よし。俺たちはあの増援側を叩こう」

「私もそれがいいと思います」

「決まりだな」


 リリアン、アル、そして魔境組の兵たちも覚悟を決めた。

 俺たちの方が数では劣っているものの、ひとりひとりの力量は勝っているはずだ。


「まずは俺がヤツらに牽制をする!」


 竜玉の指輪によって得た強大な魔力を風に変えて、俺は迫りくるグロームの軍勢へと容赦なく放つ。その結果、グロームの騎士たちは突風にあおられて隊列を乱し、パニック状態となっていた。


「今だ!」


 混乱に乗じて敵勢力へと殴り込みをかけていく俺たち。

 おかげで、少ない兵力ながらも増援に駆けつけた戦力を無力化することができた。


「これでエクルド側の優勢は揺るがないだろう」


 向こうの戦いも収まったようだし、ここらあたりでエクルドと合流するとしよう。

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