第67話 増援
グローム軍勢との衝突は、三体のヌシの加入で一気に形勢逆転。
人々が魔境を避ける要因のひとつである強大な力を持ったヌシ――それが、魔境に暮らし始めた人々を守るために共闘し、グロームへと牙をむいた。
この事実は、グローム側の戦意を大きく削ぐことに成功。
「は、話が違う!?」
「ヌ、ヌシが味方をしているのか……?」
「これも予言者エルカの力が成せる業なのか!?」
ヌシまでがこちらの味方になる――ずっと行動をともにしてきたアルはともかく、パーディやゾウィルの加入については魔境村で暮らす俺たちにとっても想像できなかったことだ。
おまけに、向こうにはもうまともな騎士がほんのわずかしか残っていない。
大半は忠誠心の欠片もない、報酬目当てのチンピラだ。
一気に勢いを増す魔境軍勢。
押し寄せていたグローム軍を跳ね返しつつあるが、ここでさらに驚くべき情報が先遣隊として敵の動きを追っていた者からもたらされる。
「エルカ殿! グローム側にさらなる増援が!」
「な、なんだと!?」
まだ兵力が残っているのか。
さらに、
「大変です! グロームの軍勢がエクルドの防衛ラインを突破して王都に迫っています!」
「なっ!?」
こちらは優勢に事態を運べているが、エクルド側は窮地に陥っているようだ。それで兵力を魔境側に割く余裕が生まれたってわけか。
「どうしますか、エルカ様」
「…………」
俺は決断できずにいた。
本来であれば、ここの兵力を割き、エクルド側へ応援に向かうべきなのだが……ここからさらに増援が来るとなると、戦力を動かすのは危険か。
こういったケースではじっくりと作戦を練っていきたいところではあるけど……あまり悠長に構えている時間はない。今はなんとか押し返せたが、すぐに増援が加わって勢いが復活するかもしれないからな。
決断を迫られる中――突如、どこからともなく声がした。
「待たせたな、エルカ!」
勇ましいその声の主は、
「っ!? スレイトンか!?」
グローム時代の友人にして騎士団の若きホープであるスレイトンだった。
おまけに、やってきたのはスレイトンだけじゃない。
彼の背後には、志を同じくする多くの騎士たちが。
「ここは俺たちに任せてエクルドの援護に向かえ!」
「し、しかし……」
「心配はいらねぇ! こちらもまだこれから増援が到着する見込みだ!」
頼もしいスレイトンの言葉に、俺は立ち尽くす。
どうやら、彼はグロームの動きを察知して戦える力を独自に蓄えていたようだ。
「よし……エクルドの援護に行こう!」
「はい!」
「俺も同行しよう!」
リリアンとアル――それから、三十人近い兵力を割き、エクルド援護のために一度魔境を離れることにした。
次に戻ってくる時には……みんなで勝利を喜び合えていることを願うよ。
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