第59話 ルート開拓

 正体不明の敵は、確実にこの近辺に存在する。

 狙いはエクルド王国か、それとも魔境か。

 事態を明確に把握するため、俺は一度グローム王都へ戻るという商人数名に声をかけた。

 目的は商会の代表者であるオーガンさんか、騎士団にいる俺の友人のスレイトンに真相を確認するため。

 もし、エクルド王国領内と魔境近辺に展開している謎の兵士がグロームの者たちならば、こちらとしても然るべき対応を取らなければならない。


 とりあえず、出発した商人たちからの返事を待つとして――俺はこの魔境の開拓に汗を流そう。


 気になるのは四体目――最後のヌシの存在。

 大蛇ゾウィルは微妙なところだが、少なくともアルとパーディについてはこちら側についてくれている。残りは一体なのだが……他の三体は居場所を知らないという。


 まあ、三体との関係は悪くないと思うので、今のところ急いで四体目と接触を試みなくてもいいだろうと判断。

 今日は魔境村の進捗状況を確認する。


 まず目についたのは農場だ。

 農業のノウハウを持つ人が多く移住して来ていることもあり、ここがもっとも発展していると言っていい。


「おおっ! これは凄いですね!」

「エルカ様にそう言ってもらえると嬉しいですな」


 農場担当者は誇らしげに胸を張る。

 そのドヤ顔が許されるくらいの規模だ。


「収穫はいつ頃になりそうですか?」

「そうですねぇ……成長の早い品種でしたら、一ヶ月後くらいにはなるかと」


 なるほど。

 完成した味にもよるけど、これだけの規模で販売ルートを確保できれば利益はかなりの物になる。……まあ、そのルートを見つけるのが大変なんだけどね。その点は腕利きの商人たちも多いから、なんとかなりそうだけど。


 続いてはダンジョンについて。

 今日もイベーラたちが探索に出ているが、思っていたよりも魔鉱石やアイテムの量は多いという報告を受けている。なので、ギルド設立に向けても本格的にスタートをさせていくつもりだ。


 さらに、今日はもうひとつ確認しておきたいことがあった。


「位置としては……この辺りでいいかな」


 俺が見ておきたかったのは、魔境と外をつなぐルートだ。

 魔境の外から村のある場所までは深い森を通って来たけど、もっと時間を短縮し、尚且つ安全な道を確保したいと考えていた。

 可能性がもっとも高そうなのは牧場建設予定地の先にあるルートだ。

 こちらは魔境の外へ向かって伸びている道というだけあって、最初に通ってきた森の中よりも早く、それでいて進みやすい。


「最初からある程度開けているし、ここを真っ直ぐ魔境の外へ道を拓けたらなぁ……」


 場所は大体決まった。

 

「あとは……人を集めて作業をするだけだ」


 農場や牧場も形ができつつあるし、ここから魔境の外へ通じるルート開拓に人員を割いても大丈夫だろう。

 これができれば、俺たちの村は外とより身近な交流が可能になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る