第23話 探索の成果

 一夜明け、いよいよダンジョン探索当日を迎えた。


「さあ! 行きましょう!」


 イベーラは朝から絶好調だった。

心なしか、昨夜より瞳の輝きが増しているように映る。

 ゴーテルさん曰く、彼女は貴族であるが外で動き回るのが好きなタイプらしいので、ダンジョンへ向かうのが楽しみなのだろう。

 ……しかし、そんなイベーラの期待を裏切ってしまって申し訳ないが……ダンジョンはそこまで楽しい場所ではない。今回は魔鉱石の存在を確認することが第一の目的となるため、深入りはしないようにするつもりとはいえ、いつどこでモンスターが襲ってくるかは分からないからな。


 その辺りは注意して進む必要がある。

 こうした意識はみんなに持ってもらわないとな。


 探索前にダンジョン探索の心構えを再認識し、いよいよ内部へと足を運ぶ。


「ここが……ダンジョンか……」


 自分が生みだしたダンジョンに自ら挑戦していく――ある意味、最高の贅沢ではあるが、場合によっては命の危険もあるため浮かれるわけにもいかない。

 ……とはいうものの、やっぱり自然とテンションが上がってしまう。これではイベーラのことをとやかく言えないな。


 打ち合わせの通り、みんなで辺りを警戒しながら先へと進んで行く。

 しばらくすると、天井の高い空間に出た。


「何やら……妙な気配を感じますね」


 顔を引きつらせているのはリリアンだった。

 しかし、彼女が感じている「妙な気配」――それは、俺も感じている。だが、これは悪いものではない。むしろ、求めていた物が存在している何よりの証拠だ。


「これは間違いなく……魔力だな」


 そのひと言に、周りが騒然となる。

 魔力があるのなら、その魔力を放出している存在――つまり、魔鉱石が存在しているという事実につながる。


「魔鉱石はこの近くにあるみたいだ。辺りを探しみよう」


 俺がそう呼びかけると、全員が「おおー!」と勇ましい返事をして散っていく。とりあえず近辺だけに限定し、密に連絡を取りながら魔鉱石を探していく。


「モンスターの気配はなさそうですが……」

「だからといって油断しないようにな、リリアン」

「ご安心を」


 念のため注意喚起をしておいたが……まあ、リリアンには必要なかったかな。俺と会話をしながらも、しっかり周りをチェックしている。


 一方、リドウィン王国組だが、こちらも慎重に調査を続けていた。

 メンバー最年長であり、かつてはダンジョン探索を行った経験もあるというゴーテルさんを中心に、魔力をたどっていく。

 すると、ディエニが何かを発見する。


「ゴ、ゴーテルさん! この石って……」

「むっ? ――でかしたぞ、ディエニ」

「じゃ、じゃあ!」

「ああ……これは魔鉱石だ」


 ついに魔鉱石を発見し、ガッツポーズを披露するディエニ。

 それを見ていたイベーラの闘争心に火がついた。


「やりますね、ディエニ……私も負けていられません!」


 気合を入れ直すも、正直、そこまで力む必要はない。

 何せ、魔鉱石がひとつでもあったということは、このダンジョンはテストプレイの状態である――つまり、とんでもない鉱脈が眠っているってわけだ。

 ディエニの発見を皮切りに、あちこちで次々と魔鉱石が発見される。その量たるや、俺以外のメンバーの想像を遥かに超えていた。


「こ、こんなにたくさん魔鉱石があるなんて……」

「どうやら、見誤っていたようだな」

「しかし、こうして大量の魔鉱石が手に入ったのは紛れもなくエルカ様の予言のおかげです」

「それは間違いないでしょう」


 ゴーテルさんからもお墨付きをもらえるのは嬉しいな。



 その後、俺たちは持てるだけの魔鉱石を袋に詰め込んで村へ戻ろうとしたのだが、改めて確認してみると凄い量だった。

 これ……全部売ったとしたらかなりの額になるな。

 ただ、今後のリドウィン王国との関係性を考慮すると、よく話し合わなくちゃいけないな。


「エルカさん……」

「分かっているよ、イベーラ」


 さすがに想定以上の魔鉱石が手に入ったことで、あちらも動揺しているみたいだ。

 まずはこの大量の魔鉱石を村へ持ち帰らないとな。

 話はそれからだ。

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