第16話 紹介
「予言者エルカ・マクフェイル……あなたの噂は私たちの国にも届いています」
「それは光栄ですね」
さすがは魔境調査団のリーダーを任さられるだけあり、知性的で落ち着いた、お手本のような「大人の女性」だった。
しかし、同時にどこか物足りなさを感じる。
本当にこの女性がリーダーで大丈夫なのか……確かに、いろいろと賢そうではあるが、魔境という危険性を考慮した時、少し頼りないのではと思ってしまう。
とはいえ、彼女たちが本物の調査団であることは間違いないようなので、俺はここまでの経緯を包み隠さずイベーラたちへ話す。
「そのようなことが……」
「し、信じられない……」
イベーラだけでなく、他の調査団メンバーも同情的な反応をしてくれた。
続いて、魔境について話をしようとしたが――その前にこちらのメンバーの紹介しておくことに。
俺が呼びかけて、隠れていたリリアンとヴィッキー、そしてアルが出てくる。
「「「「「っ!?」」」」」
さすがにアルが出てくるとリドウィン調査団の面々はギョッとして身構える。ただ、俺たちと一緒にいるという事実に気づくと、すぐに武器を下ろした。
「そちらの巨大な犬は……」
「この魔境で暮らすモンスターのアルベロスです。俺たちはアルって呼んでいます」
「は、はあ……」
リドウィン王国調査団のひとりにアルの話をするが……どうにもピンときていない様子だった。
とはいえ、こうしてアルが俺たちと行動をともにしているというのは紛れもない事実。信じられない光景ではあるのだろうが、ここは受け入れてもらわないと。
――で、話はイベーラたちの目的に移る。
「俺は追放先がこの魔境でしたが、あなた方はどうしてこの魔境に?」
「理由については……他の国の方々と同じだと思いますよ」
「つまり、この魔境に潜むお宝が目当て、と」
単刀直入に尋ねると、イベーラはニコリと微笑みながら頷いた。
「私たちの住むリドウィン王国は資源に乏しく、大国と張り合うにはいろいろと力不足であると言わざるを得ません」
それはゲーム内の情報と合致する。
リドウィン王国の規模は、大陸の中でも下から数えた方が早いくらい小さい。今は近隣国家の関係が良好なため平和ではあるが……何かひとつのきっかけでこの均衡はあっさりと覆る可能性がある。
イベーラはそれを理解していた。
だから、リスクを避けるために新たな資源を手に入れようと、この魔境へやってきたということらしい。
「しかし……あなた方がこの地に暮らしているというなら、私たちは手出しができませんね」
残念そうに表情を曇らせるイベーラ。
それは彼女だけでなく、他の調査団メンバーも同じだった。
彼女たちがどれほどこの地に期待を寄せていたか――その想いの強さがうかがえる反応だった。
「ふむ……」
この地に眠るお宝、か。
先日手に入れた竜玉の指輪もそのひとつだが、中には俺が持つにしては荷が重いレベルの物もある。
それらについて、彼女たちともう少し詳しく話し合いの場を持ちたいと思った。
なので――
「みなさん、一度うちの村に来ませんか?」
イベーラたちを村へ案内することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます