第14話 謎の勢力?
アルが探知した、複数の人間の存在。
ひとりくらいなら迷い込んだって考えられなくもないが……複数とあると話は別だ。もしかしたら、国家の命令で動いている調査団かもしれない。
とにかく、俺たちは接触する前に一度その姿を確認することにした。
危険を伴う可能性もあるため、ヴィッキーにはひと足先に村へ戻るように伝えたが、
「わ、私なら大丈夫です! 自分の身は自分で守れますから!」
鼻息荒くそう語ったヴィッキー。
確かに、あの城のメイドさんたちは護身術を身につけているって話だった。
俺としても手荒なマネに出る気はない。相手の正体を見極めるまでは大人しく身を隠しているつもりだ。仮に、近づいてきている者たちの正体がハッキリしたとしても、まずは穏便に事を運ぶ必要があるため、無用な接触を避けるつもりでいる。
そうした認識をみんなに話して共有し、気配の正体を探るために接近を試みてみる。
アルを先頭にして相手との距離を確認しつつ、少しずつ詰めていった。
「どこの国の調査団でしょうか」
「皆目見当もつかないな」
わざわざ魔境に集団でやってきたとなれば、その目的はやはりこの土地の調査だろう。
ここを手に入れたいと願っている国は少なくない。
だが、もう何度も入植しては失敗を繰り返しているため、大半の国は余計な出費を防ぐために無謀な挑戦を止める。それがここ数年ずっと続いていたのだ。
俺のように追放という刑罰の一種に指定されているというなら分かるが……複数というのが気になるな。
まさか、凶悪な犯罪者をここに解き放とうとしているんじゃないだろうな……まずい。なんだかその可能性が高く思えてきた。
「これはひょっとすると……厄介な状況になるかもしれないぞ」
「ま、まさかそれも予言ですか!?」
「いや、これはただの勘だよ」
このようなイベントは盛り込んだ記憶がない。
魔境が舞台となる章でも、主人公組とほぼ同時にここへやってくる調査団は存在していなかった。
となると、これはオリジナルの展開?
ますます注意が必要になってくるな。
滝から少し離れ、茂みの中に身を潜める。
それからちょっとずつ前進をすると――めちゃくちゃデカい岩が出現。森の中にあったせいなのか、その巨岩にはたくさんの苔が張りついており、周辺には揃いの制服に身を包んだ者たちが六人いる。
性別の振り分けは男女ともに三人ずつ。
そのうち、女性のうちのひとりは今の俺やリリアン、ヴィッキーと同年代くらいに見える。
武器を持ってはいるようだが……想定していたような凶悪犯ばかりというわけではないようでひと安心。
「どこの国の調査団でしょうか」
「ここからでは判断できかねるな」
「でも、悪い人たちではなさそうですぅ」
「そうだな。嫌な臭いもしないし……敵意を持ってここへ来たわけではないようだ」
アルが「敵意がない」と判断するなら、やはり彼女たちは純粋に調査をするため、この魔境へ足を踏み入れたわけか。
問題は……すでに俺たちが村づくりに着手しているという点。
すでにかなりの人数がこっちには入植してきているが……向こうがそれについてどのような対応をするのか、それによっては争いに発展しかねない。
そんな不安を抱いていると、
「うん? あれは……」
目に留まったのは、彼女たちの着ている服――その背中に大きく描かれた紋章だった。
あの紋章には見覚えがある。
確か、【ホーリー・ナイト・フロンティア】に出てくる国で、あれと同じデザインの紋章を持つ国があったはず。
……もし、記憶が正しいなら、あの国とは――仲良くやっていけそうだ。
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