第11話 調査開始

 今日もまた魔境へと足を運ぶ。

 だが、今回はアルベロスのようなモンスター絡みの案件じゃない。

 この魔境に眠る激レアアイテムを手に入れるため、魔境へ入るのだ。


 ちなみに今回の同行者はリリアンとアル。そして新しくヴィッキーを加えた三人と一匹だ。


「あ、足手まといにならないよう気をつけましゅ!」


 好奇心に任せてついてきたヴィッキーであったが、最後の最後で噛んでしまうあたりかなり緊張しているのだというのが伝わってくる。

 そんな彼女を見て、


「無茶は禁物ですよ。危ないと分かったらすぐに退避してください」

「すでに我らは仲間だ。君のことは全力で守る」

「あ、ありがとうございます!」


 リリアンとアルから頼もしい言葉が出てくる。

 ヴィッキーも嬉しかったようで、「はい!」とすぐに元気よく返事をしていた。


 全員の仲がより深まったところで、本題へと移ろう。

 俺が目指すのはこの魔境にある洞穴。

 そこに、超激レアアイテムが隠されているのだ。



 ――ここにアイテムが隠されている経緯について語るには、まだ俺が前世の世界で暮らしていた頃の話をしなくてはならない。


 当時、俺はあるソシャゲの開発チームに所属していた。

 小さな頃からゲームプログラマーに憧れ、いつか自分の手で世界的大ヒット作品を生みだすのが夢だった。


 ……まあ、小学生が思い描く夢なんてこんなものだ。

 実際、この仕事がどれだけハードで、しかも自分の思い通りに運ばないと気づくまでにはあまりにも長い時間が必要となる。早く気づける人は早いのだろうが、俺はほとんど手遅れ状態となってから気づいた。

 だが、その時の知識がこうして生きるとは……人生とは本当に分からないものである。


 ――話を戻そう。

 この世界に来る直前、俺は作業中にあるエラーに気がついた。

 それは、第二章という序盤で登場する魔境で手に入るにはあまりにも強すぎるアイテムの存在だった。


 そもそも、このアイテムがとんでもないバランスブレイカーだった。

 こんなのが全ユーザーの手に入ったら、一週間もしないうちにサービス停止しなくちゃならいないほどの代物だ。


 だから、それを忠告しに行こうとして――俺は気を失った。そして気がついたら、この世界に迷い込んでいて、エルカ・マクフェイルという人間になっていたのである。


 まあ、そういった事情から、ここがもし修正されていない世界だとしたら、まだアレが残っているはずなのだ。

 ただ、経緯が経緯だけに、場所を特定するのは困難だった。

 城から持ってきた地図だけでは限界がある。

 

「うーん……こっちへ行ってみようか」


 俺が先頭になって、リリアンたちを導く。

 目的地がハッキリしないことに、誰も疑問は抱いていなかった。それもまた、俺が予言者だからだろう。その期待にこたえ続けるためにも、あのアイテムは手に入れておきたいところなのだが――


「うん?」


 ふと、何かの音が聞こえた。

 これはひょっとして……


「何か聞こえる。――こっちだ!」

「エ、エルカ様!?」


 驚くヴィッキーを尻目に、俺は音のした方向へと走っていく。

 ようやく音の正体が分かる場所までやってきた俺は、


「す、凄い……」


 しばらくの間、ただ茫然と目の前の光景を見つめ続けることしかできなかった。

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