30 ヴィデュール
師匠が手本に中級HP回復薬を作った後。
俺も中級HP回復薬を試しに作ってみたが見事に失敗したので、下級MP回復薬の作成と下級HP回復薬の作成を交互にすることとなった。
それから黙々と機械の様に材料を持ってきては回復薬として消費し、材料が無くなったら倉庫へ取りに行きを繰り返して、その日は終了した。
因みに俺がここで作った回復薬は作った量の3分の2を店に並べてもらい、その売り上げの3分の1を俺が貰っている。
次のログインからはスヴァさんとの体のレベル上げと錬金のレベル上げを交互にするか。
まぁスヴァさんの予定次第ではあるが。
それから現実世界で約5日、ゲームの世界で約42日が経過した。
△▼△▼△
サービス開始から8日目の朝7時40分ごろ。
ゲーム内ではサービス開始の日時を2日目としたら53日目の6時ごろ、正確には5時41分だ。
今日はアセヴィルと共に『ムークォ聖王国』へと出発する日だ。
スヴァさんも一緒だ。
この約42日、実質96時間程で俺のステータスは『腐人の行進』の時とは比べ物にならないぐらいに成長した。
――――――――――
名称:イズホ
種族:水人族
職業:見習い―水術師
状態:正常
Lv.41
スキル
剣術Lv.37、杖術Lv.15、水術Lv.15(Max)、烈水術Lv.24(Lv.9)、火術Lv.8、魔術Lv.6、錬金Lv.22、魔力操作Lv.23、魔纏Lv.13、鑑定Lv.20、精神強化Lv.27、身体強化Lv.10、筋力強化Lv.12、霊力強化Lv.9、耐斬Lv.3、土属性脆弱Lv.10
スキルポイント:475
称号:―――加―(状態:秘匿)、初めての師弟関係、ターラフェルの弟子、腐人討伐の功労者(フレイトゥル)、下級錬金術師、下級術師
装備:革鎧、革籠手、聖樹皮の軽靴、瑠璃の界魔首飾り、鉄剣×2
――――――――――
レベルは17上がり、スキルもそれぞれ大幅に上がった。
称号は2つ増えたがどちらも、スキルレベルが一定に達した時に与えられたものだ。
装備はさすがに初期装備のままだとあれなのでと、数日前に革鎧と革籠手を買い、試しにと確認してみたら靴と首飾りだけ装備できたのでこの4つとしている。
靴のおかげかいつもより体が軽く感じる。
今の強さなら、あのブラッドウォーカー相手にダメージを負うことなく、一方的に殴ることが出来るだろう。
それと、この約42日の間に共生国家以外の、1つの種族のみの国家への通り道が開拓され、沢山のプレイヤーが旅に出ていた。
フレイトゥルから近いところで言うと、南東方面の水人族の国『ヴィデュール』と北西方面の炎人族の国『アグラストゥア』への道が拓かれていた。
その通り道には所謂エリアボスと呼ばれる魔物か聖物が居るらしく、俺たちの行く聖王国への通り道のジャイアントベアもエリアボスと呼ばれる奴だろう。
『ヴィデュール』への通り道にもボスはいるらしいが俺たちは素通りだろうな。素通りできるかは知らないが。
取り敢えず大使館の寝泊まり用の部屋から出て、アセヴィルがいるであろう部屋に向かおうとするがその前に、廊下の途中でアセヴィルに出会った。
「あ、アセヴィル」
「ん? どうした?」
「いや、出発はいつぐらいになるのか聞きたくて」
「あぁそれか、出来るだけ早い方がいいとは思うが、何か用事があるならそれに合わせるぞ」
「うーん、そんなに用事はないけど、師匠に挨拶だけはしておきたいと思ってて」
「そうか。じゃあ行ってくると良い。それが終わるころには東門に俺は居る」
アセヴィルはそう言って歩いて行った。
じゃあ、アセヴィルの許可がもらえたことだし、師匠の店に行って挨拶してくるか。
と、もはや歩きなれた道を通って師匠の店にたどり着いた。
この朝6時という時間だと師匠が何処にいるか判らないので、素直に正面から入るとする。
扉を手前に引いて店の中を見てみるが、果たしてそのカウンターには師匠はおらず、店番の男の人が立っているだけだった。
「いらっしゃい、あれ? 今日からしばらくはこの国から離れるってお婆ちゃ、店長に聞いてたけど」
「出発前最後の挨拶でも、と。師匠は今どこにいるか、分かりますか?」
「店長は今、どこだろう。多分作業部屋だと思うけど、いなかったら倉庫整理してると思うよ」
「ありがとうございます。行ってみます」
その情報をくれた店番の人にお礼を言い、店の裏に繋がる扉の方へ歩く。
それにしてもこの人のお婆さんが師匠だったとは。まぁ俺はこの人とそんなに関わりはないし名前も知らないから、そこまで重要な情報じゃないが。
そんなことを考えつつ、たどり着いた作業場の扉を開け中を見てみる。
するとそこには、ちょうど何かを作り終わったのか、立ち上がり物を移動させようとしている師匠がいた。
「……ん? お前さん、聖王国へ行くんじゃなかったのかい」
「行くには行きますが、師匠にしばらく会えるか分からないので挨拶に来ました」
「……そうかい。じゃあちょいとそこで待っときな。物を持ってきてやるから」
そう言うと師匠は俺の横を通って倉庫の方に行ってしまった。
そこで待ってろ何て言われてしまったが、正直時間の無駄のように感じるのは気のせいだろうか。
まぁ、いいか。何か持ってきてくれるらしいし。
せっかくだし作業部屋で何かしようかと思った少し後。
倉庫の方から師匠が戻って来た。手には何かが入っていると思しき木箱を持って。
「……お待たせ。お前さんに必要なモンを持ってきてやったよ」
「俺に必要な物?」
「……そうさ。この箱の中には上級HP回復薬と上級MP回復薬が5本ずつ。
……そして中級傷薬が3本、最後に霊力の操作を補助し、通りやすくしてくれる短杖を入れておいた。
……短杖は今からでも使えるだろうし、回復薬はあたしの用意できる最大の物さ。
……まぁ短杖以外はあんたにはそんなに必要のないものかもしれないが持って行ってくれ」
そう言ってその木箱を渡された。
中を見てみると確かに回復薬計13本と短杖が入っている。それと手紙のようなものも入ってるな。
「師匠、この手紙みたいなのは何ですか?」
「……あぁ、忘れてた。もし、聖王国でも錬金をしたいのならそれを聖王国王都の生産者ギルドに持っていきな。あたしの弟子の1人が聖王国で店を開いてるから、そこに案内されるだろう。そこで設備を貸してもらいな。
……錬金以外の事はあたしには分からないから、それだけしか渡せないが精々頑張るんだね」
「ありがとうございます」
師匠は珍しく一息に長文を話すとそのまま作業部屋にこもってしまった。
その背中にお礼を言い、店を後にした。
――――――――――
昨夜に時間経過の纏めを更新しております。
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