嬢記

@ichiCal

行き先

 あの日は朝早くに寝た、ような気がする。とても早い朝で遅い夜らへんの時に眠りについた様な気がする。昨日は珍しく1人でシケた布団で寝かせられた。帰りやがった。自分と同じ境遇の女を探すのに忙しかったが私より哀れな女なんて出てこなかった。女は惨めな部分を隠すのが本当に得意なんだろう。惨めな部分が露呈してしまうと自分を自分で保っていられるプライドが無くなって溶けてしまうんだろう。朝からしょーもない事をとりとめなく考えている。14:00から面接だ。左耳が痛い。元彼から貰ったステッカーを剥がしたからか、日焼けが不細工なスマホケースが震えた。「今日はありがとう、無事家着いたよ〜面接頑張ってね!」だって。頑張るかよ、どうせ受かるんだよ。

 私は1番不細工が多そうなお店を選んだ。理由は自分が優遇されるために決まっている。不細工が多いお店に自分のような綺麗な顔が入ったらどうなるのだろうか?自己肯定感を高める道具の端くれほどにはなるだろうか?と慢心しきっていた。待ち合わせ予定の場所にはバスで向かう。このバスの路線には1年生の時から本当にお世話になった。ひとり映画なんて洒落たことをした時も、好きな人とお酒を飲みに行く用にも、まだクソガキだった頃に勢いで元元彼と飲みに行った1番の思い出の時もこのバスだった。そして今風俗行きのバスに私は乗っている。

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