第37話 魚の魔物を呼ぼう


「魚……なぁ」


 俺は本拠の洞窟の中で考え込んでいた。


 ちなみにだが家に住むのは諦めた。家を建てられそうなのがゴブリン博士しかいないが、彼は銃とか他の仕事がいくらでもあるためだ。


 住めば都、この洞窟が俺の首都みたいな……悲しい。


「クックック。どうされました?」

「いや魚というか水中ユニットってなぁ。あまり活躍の場がないイメージがあるんだよな」


 シミュレーションゲーム系だと水中ユニットは大体不遇だと思う。


 そもそも水中ステージが少なくてあまり活躍の場所がないのだ。具体名を出すと変形することで水中ユニットになるゲッ〇ーの3……空の1と陸の2しか使った記憶ないぞ。


「クックック、陸でも能力は落ちますが使えるのでよいのでは?」

「そうだけど勿体ない気がしてしまうんだよ」


 確かに魚国のマーマンは平均ステータスでは割と強かった。でも特化した能力がないから軍同士の戦いとなると微妙そうなんだよな。


 例えばマーマンのワンランク下の魔物であるスモルゴーレム。岩国との戦いの時は頭悪くて落とし穴に落ちて行ったが、力と体力ならばマーマンより高い。


 盾役と扱うならマーマンよりも優れているだろう。頭が悪くても本来なら真っすぐ突撃させればよいだけなのだから。


 本来ならマーマンの強みは水中で戦えることなのだ。それがなければDランク下位の魔物になってしまう。魚国の他の魔物にも言えることだろう。ようは水棲生物を陸で戦わせると弱体化すると。


「クックック、とは言えもし敵が水中から攻めて来た時、我々は索敵すらおぼつかなくなります」

「……逆に言えば敵が攻めてくる場所が分かれば、陸地で迎撃すればよいか。やはりここは強い魔物を一体召喚しよう」


 イメージとしては水中版ハーピーみたいな感じか。水の中の敵の情報を逐一集めてもらうと。


 いくら水中から攻めて来たとしても、最終的には上陸してくる必要があるからな。


「【召喚の儀】」


────────────────

EP残量    :1500

EP消費(年間):5460

EP獲得(年間):49000

EP消費    :小 中 大 極 全

召喚可能種別  :肉 植 岩 魚

固有スキル   :人


魔物ランク数

F:300 E:200 D+:51 B:1

A:1   U:1 

────────────────


 俺の周囲に文字が浮かび上がった。


 EP残量が心もとないが次の収穫時期まで残り一ヵ月ほどだ。イモが獲れればEPに余裕ができるので何とでもなる。


 召喚に使うコスト――EP消費――は迷うところだが『大』にしよう。水中で単騎で索敵してもらう予定なので弱い魔物では無理だろうから。


 召喚可能種別は当然『魚』だ。固有スキルの『人』も選んでおこう、索敵役だから頭が良い方が適任だろう。


「【魔物召喚】」


 目の前の地面に魔法陣が出現しそこから上半身が女性、下半身が魚の魔物が現れた。


 すごく露出が多い。上半身は貝の胸当て以外は何もつけていない……!


 桃色の髪を腰まで伸ばしているが肌の露出が凄すぎて、つい胸の谷間などに視線が向いてしまう。そんな彼女は宙に浮いて俺に微笑みかけてくる。


「私はマーメイドと申します。よろしくお願いいたします、主様」


 マーメイドは綺麗な声で告げてくる。大人しくて清廉そうで今までの魔物にはいないタイプだな。いかん、見惚れている場合ではない。


「《彼の者の神髄を見通せ》」


 マーメイドの周囲に文字が浮かび上がり、彼女のステータスが表示されていく。


╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌

マーメイド ランクB+

力 :D

敏捷:B

体力:C

魔力:B

知力:B

技能:海の歌い手、高速泳法

EPコスト:500

╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌ 


 ステータスが高水準に纏まっている。


 特に力が低くてその分だけ他が上がっているような感じなのがよい。索敵メインの役割なので力は不要だからな。敏捷と知力が高いのは素直にありがたい。


「マーメイド、お前には海の見張りを主に頼みたい。我が国で海に入れるのはお前だけなので、基本的に敵の海魔物は上陸させてから迎撃することになる」

「なるほど。なので海にいる敵軍の情報を逐一把握して、報告するのが私の仕事なのですね」


 マーメイドは小さく頷いている。


 彼女はかなり頭がよさそうだな。流石は知力Bということだろうか。


「問題は連絡手段か。もう一体くらい連絡係用の魔物がいるか?」

「それもよいとは思います。その上で私に案があるのですが……水中で壊れないトランシーバーを頂けませんか?」


 水中で使えるトランシーバーはある。主にダイビングなどで使っている人もいるはずだ。確かにそれがあればタイムラグなしで連絡が取れるな。


 いやそもそもだ。水中でなくても通信手段の類は欲しい


 前の戦いでも軍を二つに分けたのだから、連携を密にする手段は必要不可欠だろう。後でゴブリン博士に製造をお願いしてみよう。


「分かった、トランシーバーが用意できるか確認しよう。ちなみにだが状況次第では陸上での戦力に使ってもよいか?」


 マーメイドのランクはB+だ。我が肉国でミアに次いで二番目に高いランクなので、敵が海から攻めてこなかった時に遊ばせるのは勿体ない。魔力Bなので魔法攻撃とか強そうだし。


「もちろんでございます。私は主に水を操る魔法が得意ですが、それ以外にも魅了魔法が扱えます。弱い魔物の心を奪って戦闘放棄も狙えますよ」

「それは心強いな……期待してるぞ!」


 こうして水中戦力というか、水中索敵能力も手に入れた。


 後は次のEP収穫を待ってからストーンドールを召喚することかな。これで我が国の戦力はかなり補強されることになるだろう!

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