第36話 ハーピー部隊


 ブーモたちの確認は終わった。


 彼らは海で素潜りで漁をしていたので効率が悪い。網などを用意して渡せばきっと収穫量は増えるだろう。


 ひとまず収穫量増加の工夫はこれくらいでよいだろう。次はやはり我が国の戦力強化をしなければならない。


 俺は本拠の洞窟近くの森でミアと話し合っていた。


「ご主人様! ハーピーを召喚してくれるの?」

「そうだな。やはり飛行ユニットは強いから」

「わーい! ご主人様大好き!」


 ミアが嬉しそうに笑って俺に抱き着いてきた。


 空を飛べるユニットは間違いなく強い。なにせ敵に対空手段がなければ一方的に攻撃し続けられるのだから。


 ハーピーの場合は火力に少し難があるが、それも毒の弓矢である程度の改善はできる。つまりハーピー航空部隊は強力無比な存在となり得る。


 それにハーピーは維持に必要なEPコストも軽いからな。今の肉国ならば余裕で養える。


「【召喚の儀】」


────────────────

EP残量    :4000

EP消費(年間):2960

EP獲得(年間):49000

EP消費    :小 中 大 極 全

召喚可能種別  :肉 植 岩 魚

固有スキル   :人


魔物ランク数

F:300 E:200 D+:1 B:1

A:1   U:1 

────────────────


 呪文を唱えると肉国の現状を表す文字が周囲に浮かび上がる。


 俺はEP消費『中』、召喚可能種別『肉』、固有スキル『人』を選んだ。そして心の中で「ハーピー来い」と念じ続ける。


 一度召喚した魔物は同条件を設定して念じれば、再び呼ぶことが可能だ。つまり俺はハーピーやオーガをEPが許す限り召喚することができる。


 ただしアルラウネの大量召喚は無理だ。あれはEP消費『極』の設定なので、一体の召喚だけで所持EPの七割を持って行かれてしまう。


 もしアルラウネが大量に呼び寄せられたら、恐ろしい力となっていたのだが残念だ。それとミアというかセイレーンも召喚は無理だ。彼女は召喚ではなくて進化で手に入ったから。


「【魔物召喚】」


 目の前の地面に魔法陣が出現し、そこからワシの翼を持ったハーピーが現れた。


 だがハーピーだった時のミアとは少し見た目が違う。ミアは茶髪だったが、新しく呼び出されたハーピーは赤髪。それに髪も腰まで伸びているロングヘア。


 服装こそ似通ったスカート姿で、きちんと弓も持っているのでミアと比べて戦闘スタイル自体が違うなどはなさそうだが。


「私、ハーピーと申します。よろしくお願いいたします」


 新たなハーピーは俺に丁寧に頭を下げてくる。


 なるほど、やはりミアとは全然性格が違うな。まず一人称からして大きく違う。ハーピーというか同じ魔物にも個体差があるようだ。


「ボクはミア! 君はボクに従ってね!」

「かしこまりました。上位種であるミア様に従うのは当然のことでございます」


 ハーピーはミアの言葉に唯々諾々と従う。


 そこに嫌悪などの感情はないように見える。魔物同士でも身分差で喧嘩することがあると聞いたが、ひとまずは大丈夫そうだな。


 ミアがハーピーから進化したので上位種だから、彼女の下につくのならば問題ないということだろう。


「ハーピー、ちなみに参考に聞きたい。例えば同じハーピーの下につくのは嫌か?」

「嫌です。どうして同じ能力の魔物に従わなければならないのですか」


 今度はハーピーはしかめっ面をしている。本気で嫌そうだな。


「ならオーガは?」

「同じランクの魔物の下もちょっと……」


 なるほど……同ランクの魔物もダメなのか。


 新たにオーガを召喚して剣豪オーガの下につかせるのを考えていたが、現状ではそれもダメそうだな。ゴブリン博士が魔物の編成には気を使うという意味が分かった。


 上位種族や高ランク魔物がいなければ、全ての魔物を魔王が率いることになりかねないぞこれは。そうなると当然ながら軍を分けることは難しい。


 ……でもあれだな。先日はゴブリン博士をトップに据えた軍を編成したが、魔物たちは特に不満もなく従っていた気がする。


 ランクUnknownだからゴブリンやオーガよりもランク上判定で、魔物たちも不満なく従っていたのだろうか? ゴブリン博士だけは本当に謎なんだよなあいつ。


「じゃあハーピーを更に五十体くらい召喚するか」


 俺は魔物召喚を連呼して、ハーピーを五十体くらい召喚した。


 目の前に大量の翼持ちの可愛い少女たちが溢れている。なんというかこう、目の保養になるなぁ……。彼女ら、短いスカートだから生足も見えるし。


「むー……ちょっとご主人様! ボクのこと見て!」

「わぷっ!?」


 そんなことを考えているとミアが再度抱き着いてきた。俺の頭に胸が当たって……いやこれ押し付けてきてるな!?


「ご主人様に色目使ったらダメだからね! 命令だからね! 使いたかったらボクみたいに進化すること!」


 ミアがハーピーたちに命令する。


「はい」

「えー、まあ命令なら仕方ないかー」

「逆に考えれば進化すれば別に構わないと……」


 ハーピーたちは各自バラバラに返事をするのだった。なんかちょくちょく俺に気がある感じの言葉も聞こえる。


 あれ? 航空部隊を編成するはずだったのだが、これ下手したら俺のハーレム部隊みたいになるのでは……? 自意識過剰か?


「ご主人様! ボク頑張るからね!」


 俺は一抹の不安を抱えながら、ミアに抱きかかえられ続けるのだった。


 なお後で発情したので必死に逃げた。



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今年最後の投稿となります。

ありがとうございました。よいお年を!


それと次回投稿は1月2日予定です。

年始だけお休みしますがご容赦ください……!

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