異世界転移したら魔王にされたので、人の頭脳を持った魔物を召喚して無双する ~人間の知能高すぎるだろ、内政に武芸にチートじゃん~
純クロン
転移直後の混乱 編
プロローグ
とある平野で二つの勢力が相対していた。
片やコウモリのような翼を持った四足歩行の悪魔。そしてそれが引き連れるは全長2mはあろう岩ゴーレムの軍勢。
ゴーレム軍は五十を超える兵数。人より大きく頑強な軍は見ている者に恐怖を抱かせる迫力がある。
それに対抗するのは……たった四名の人型の魔物たちだ。
いや正確に言うならば一名はただの人間ですらあった。
「我が悪魔国の土地を奪った愚か者たちよ! 速やかに返して死ね! 行け、ゴーレムたちよ! 蹂躙せよっ!」
悪魔が咆哮すると同時に、ゴーレムたちがゆっくりと歩を進め始めた。
このままいけば三名の魔物と一名の人間は、ゴーレムに踏み潰されるだろう。だが彼らは余裕しゃくしゃくの態度。
「クックック。ワシらの力を甘く見るはどちらが愚か者か。剣豪オーガ、相手をしてやりなさい」
四名のうちのひとりが呟いた。
そのものは白衣を着た小柄な体躯、緑の肌、尖った耳に鷲鼻。
俗に言うゴブリンがメガネを手でくいっと上げながら命じる。
「お館様以外からの命なのは気に食わないが致し方あるまい」
剣豪オーガと呼ばれた者はゆっくりと前に出る。
身にまとうは毛皮の腰みのだけ。2mを超す巨体にして筋肉隆々、そして青い肌の姿はまさに鬼と呼ぶにふさわしい存在だ。
オーガは剣豪と呼ばれるだけだけあって、身の丈ほどの巨大な鉄剣を構えた。
「ふん! オーガ風情が何をほざくか! 貴様なぞゴーレムの下位互換の魔物だろうが! 《彼の者の神髄を見通せ!》」
悪魔が吠えた瞬間だった。剣豪オーガとゴーレムの周囲の空中に文字が浮かび上がった。
そこには以下のように記載されている。
╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌
オーガ ランクD+
力 :C
敏捷:D
体力:C
魔力:―
知力:C
技能:武芸の鬼
ゴーレム ランクC
力 :A
敏捷:F
体力:B
魔力:―
知力:F
技能:岩の身体
╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌
「ぐはは! ステータスも知力が少し高い程度のオーガではないか! それでこのゴーレム軍団に勝てるわけがあるまい!」
四足の悪魔は嘲笑した。
彼はステータス――身体能力などの数値――を表示して、剣豪オーガの能力値を覗き見たのだ。
元よりオーガはゴーレム相手に単騎では勝てない。
オーガは身体の丈夫さも力でもゴーレムに劣るのだ。
互いにパワータイプのインファイター。ゴーレムとオーガの戦いは普通なら単純な殴り合いになる。
そのため力でも耐久でも劣るオーガに勝てる要素はない。
ましてやゴーレムは五十を超える軍勢だ。
四足歩行の悪魔からすれば質でも量でも圧倒しているのだから、負けるはずはないと判断されて当然だった。
「クックック、言われておりますが?」
「口論に興味はない。拙者が語る術は口ではなく
剣豪オーガは獰猛な笑みを浮かべて大剣を肩に担いだ。
「くはははは! 何と愚かな魔物か! その変な棒を振り回して何ができると言うのです! さあ行きなさいゴーレムよ!」
悪魔は爆笑し続ける。
彼はそうして最後のチャンスを失ったのだ。ゴーレムを撤退させるという唯一の正解の。
ゴーレムと剣豪オーガは互いにゆっくりと近づいていく。
そして互いに攻撃の射程圏内に入った時、剣豪オーガは大剣を両手で振りかぶり上段に構える。
それは決して力任せの脳筋が、何も考えずに振り上げたモノではなかった。
自分の力を限界まで引き出すための武術の構え。
武術は人の技術だ。人が己をより強くするためにつくった技。
同じ人でも武術の達人と一般人では、同じ生物とは思えないほど戦闘能力に差が出る。
であれば…………そもそも別の生物であれば。人を超えた怪力が武術を極めれば、いったいどうなるのか。
知性のないゴーレムはそんなことも分からず、剣豪オーガに突撃して肉薄してしまったのだ。
その瞬間、だった。
「チェスドォォォォォォォ!!!」
剣豪オーガは力の限りに大剣を振り下ろし、岩ゴーレムは半身を右と左に真っ二つに両断された!
「…………は?」
まさか岩ゴーレムが瞬殺されたことに、悪魔ゴーレムは狼狽する。
普通の魔物ならばここで動揺するだろう、だがゴーレムは知性がない。
残りのゴーレムたちもそのまま剣豪オーガに突撃していく。
「キエエエエエェェェェェェ!!!!」
剣豪オーガは更に上段、上段、上段と大剣を何度も振り下ろす!
その一振りごとにゴーレムは真っ二つ! もはやただの虐殺であった!
薩摩示現流、人が生み出した剣術のひとつ!
防御した敵の刀ごと相手の頭を打ち砕いたとまで言われる剛剣!
それを怪力のオーガが扱うことで、常軌を逸する破壊力を持ったのだ!
「ま、待てそんなバカなそんなバカな!? ゴーレムだぞ!? オーガが二体がかりでも勝てるか分からぬゴーレムが、何故オーガ一体に棒切れに蹂躙されてぇ!? しかもステータスもゴーレムの方が上だぞ!?」
両断されていくゴーレムたちを後方で見て、もはや混乱の極みにある四足歩行の悪魔。
「クックック、人間は低い身体能力を道具や技で補った。なればステータスなどという身体の能力表示では、到底表しきれるものではありません」
白衣を着たゴブリンは愉悦の声を出した。
その間にもゴーレムは更に斬られていき、もはや残るは二十体ほどになる。
このペースでいけばすぐに全滅するだろう。
「く、くそっ!? 何としてもこのことを我が主に伝えなければっ……!」
四足歩行の悪魔は劣勢と見て、翼を羽ばたかせて空へと飛翔する。
だがそれは遅すぎた。よく見れば今までいた四名のうちの一は、すでに地上にはいなかった。
「本当にゴブリン博士の言う通りだ! じゃあボクの出番だね!」
背中にある鷲の翼を羽ばたかせ、かぎ爪の足を持った少女がすでに上空を飛翔していた。
茶色の短い髪やヒラヒラの服やスカートが風で揺れている。
彼女は両手で弓に矢をつがえると、逃げる悪魔の翼の根に狙いを定めた。
「なんだ? ハーピー……くだらん! 何ができると言うのだ! 投石など当たるはずがない!」
すでに悪魔とハーピーの距離はかなり離れている。普通の視力を持つ者ならばもはや小さな点程度にしか見えない。
更にそこまで離れているのだから、そもそも風などの影響でまともに矢を飛ばすのは難しい。
だが彼女は普通ではなかった。黄色の目は明らかに悪魔を見据えている。
「風は大丈夫だね。じゃあ言われた通りに、翼の付け根をロックオン? まあいいや……えいっ!」
彼女が放った矢は少し揺れながら黒い点に飛んでいく。
そして狙い通りに悪魔の翼の付け根に直撃した。
「ぎ、ぎやああぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ば、ばかな……ハーピーが、魔、法……?」
逃げ切ったと安心していた悪魔は、断末魔の悲鳴と共に墜落していった。
この世界には弓は存在しないので、悪魔からすれば飛んできた矢は理外のものであった。
そして投石は遠く離れすぎていて当たるはずがない。
悪魔からすれば魔力のないハーピーが、遠距離から魔法を放ったとしか思えなかっただろう。現実は矢と違って大外れであったが。
悪魔はやられた手段を知ることすら出来ずに、地面にたたきつけられて潰れて死んだ。
少女は翼をバタバタとはためかせながら、地上にいる残りの四名の近くに降り立つ。
「やったよ! 敵を倒したよ!」
「クックック、よくやりました。射手ハーピー。あなたの飛行能力はもちろんのこと、鳥の目に風を読む力は弓兵として理想的だ」
「えー……ゴブリン博士じゃなくてご主人様に褒めて欲しいなぁって……」
ハーピーと呼ばれた少女はチラチラと視線を向ける。
その先にいるのは中肉中背で特徴のない人間の男だった。
「…………よくやった。みんなすごいぞ?」
男は彼らに対して褒めの言葉をおくる。
身の丈を越える大剣、丈夫な弓矢、そして剣術。
人類の研磨された技術を扱える魔物たちは、並みの魔物を遥かに凌駕する存在であった。
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