汽笛一声異世界へ 〜不老不死の元鉄道技師と朗らか田舎でほのぼの開拓〜
鐵 幻華
プロローグ 異世界へ、出発進行
「だから私は前々から広軌路線の新設を提案していたんです!」
私はこのセリフと共に計画書と机を思いきり叩いた。すると周りに座っている役員達は驚いた顔をしていたり、そっぽを向いて他の役員と話をしていたりと知らん顔しやがって......。
他人事だと思っているのかなんなのか…なにが なのか。
すると
「前々から言っていても計画しただけで実証実験なんてしてなかっただろう」
とある役員が言う、すると周りの役員も口々に
「そうだそうだ!」
「こんなペーパープラン持ってこられて誰が実行するか!」
と罵詈雑言が飛び交う。
私は衝撃を受けた。
「貴方達は何をみているんですか?実証実験に着いてはこの計画書の6ページ目に書いてありますよね?!」
役員は紙をペラペラとめくる、すると
「この資料は…」
「既に実証実験が済んでいる…だと?」
なんとこの役員達は最初の6ページすらまともに読んでいなかったようだ。
なんと言うことなのだろうか、寝る間も惜しみ部下達と共に協力して、国と鉄道のためを思って作ったこの計画書は全く読まれることなく否定され続けてきたのだった。
何故だろうかそんなことを考えているからか目頭が熱くなる。私はこんな人達に情けない姿は見せまいと踏ん張る
「貴方達は私のここまでの努力を否定し、問題から目を背け、なにより国と鉄道の発展を遅らせた!」
正直あと何秒か遅れていたら泣いていただろう。
「今からでも実行に移そう 」
「何故この計画書を誰も見なかったんだ 」
「だいたい狭軌路線を複々線化した方が良いと言ったのは...... 」
今度は私の意見への肯定、今までの発言や言動の不満不平を誰かに投げつける声があちらこちらから聞こえてくる。
一体この会社は何なんだ。私は手を額に当てる、すると急に視界がぼやけてくる
「あれっ、なん......だっ 」
そういえば最近計画書作りと実験ばかりの日々でろくに寝ていないことを思い出す。
バタン
「おい、君!? 」
「旭日さん!旭日さん! 」
と言う声と共に体を揺らされている感覚がする。
「おい!誰か救急車を...... 」
次の瞬間光に包まれ不思議な空間に移動していた。そこには1人の女性が座っていた
「あら、目が覚めたようね。とりあえずこれでも飲んで」
そう言うとティーカップに入ったお茶を渡される。
現状を把握できていない状態で急に渡され、少々手が震えている。するとその女性は私の手をギュッと握らながら言った。
「大丈夫よ、そう焦らないで 」
そう言いながらこちらに微笑む。
とりあえずお茶を飲み少しでも状況を把握しようと辺りを見渡す、辺りは雲に囲まれ、虹があらゆる方向にかかっている。お茶を飲み終えカップを目の前の机に置く。
「あ、あの…お茶ありがとうございました。それで、どちら様でしょうか?それにここは...... 」
その女性は優しく微笑み空に指で何かを描いた。すると部屋の真ん中あたりに球状の画面が出てくる。
そこには私を囲み忙しなく動いている社員達と会議室の写った。
「旭日さん…貴方は28歳と言う若さで死んでしまいました 」
その女性は儚げな表情を浮かべながら私に告げる
「そっか、私死んじゃったのか…」
国と鉄道の為にと思い実験と失敗の繰り返しの日々を過ごし自分の死に関して考える余裕なんて無かった私にとって、死というのはどこか他人事で現実感のない出来事だった。
「あ!まずは自己紹介ですね!申し遅れました。私はこの世界の神様の1人、ソーカルです。よろしくお願いしますね。」
お辞儀をされた。
「こちらこそよろしくお願いします。」
こちらも立ってお辞儀をする。
私はいわゆるあの世と言うのにこのまま行くことになるんだろうか。そんなことを考えていると女神様は
「もしかしてこのままあの世に行くと思ってる?」
とピンポイントで当ててくる、さすが女神様だ。
「まさか異世界とか?なんて 」
と聞き返すと女神はにっこりとした笑顔で
「ご名答!旭日さん!貴方には異世界に行ってもらいます!」
元気な声とともに可愛い仕草で女神様の胸が寄るその胸は実に大きく富士山の様だ。
「まぁ、良いですけど」
こんなに早く死んでしまったんだし、せっかくだから異世界でゆっくりと暮らそう、なにせあんなに研究してきたんだから。
「何か御希望などありますか?」と女神様は券売機のようなものをカチャカチャと動かしている。
「〜ん、そうですねぇ〜 」特に何か欲しいものとかはないのだが。
「どこかのどかな田舎の平地に送ってください、そして長い間ゆっくりと生活したいです!」
との願望を伝える。
「分かりました!では不老不死と言うことにしておきます。そして平和でほのぼのとした田舎町にお送りいたします!そして肝心の見た目ですが......私の好みで高校生くらいの女の子にしますね!」
高校生か懐かしい響きだ。あの頃はまさか異世界に行くことになるとは思っていなかったけど。
せっかくの機会だしのんびり過ごそう。そして女神様は券売機での入力を終え硬貨を入れて切符を発行している。
驚いたのは現世と同じ様に《領収書が必要な方は領収書ボタンを押してくださいと言う声が聞こえ》あのけたたましいブザー音が鳴り響いた。
「はい、これが切符です。こちらの改札機に入れてください 」
女神様が差し出してくれた切符は『異世界行き平地方面、発行者女神ソーカル』と書いてある。外の世界へ繋ぐ改札の前に立つと後ろから
「それでは良い旅を 」
こちらに女神様が手を振っている。
「ありがとうございます 」
と言って手を振りかえす。
切符を改札へと入れる、改札が開きあっという間に光に包まれる。
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