【Phantom Vision】

まど

プロローグ

2030年ー

人類はホモサピエンスとして10万年前にその起源を発して以来、最大の変革を迎えた…


【突発性偶像顕現能力症候群】


英名の頭文字から【アリスシンドローム】と呼ばれるその病は、主に15歳から25歳の男女に突発的に発現し、アリスシンドロームが発現した人間が持つ【概念】や【認識】を他人の感覚野に擬似的に投影出来る様になると言う症状を発症させる。


例えば、人が目の前の机に突然りんごが出現したと【空想】する、当然、現実で視認する机の上にはリンゴは存在せず、当たり前ではあるが誰にも空想した机上のリンゴを観測する事は出来ない。


しかしアリスシンドローム患者が先程と同じ【空想】した場合、そのリンゴが実際に机の上に出現する。厳密に言うと、アリスシンドローム患者が【空想した机上のリンゴ】を本人及び本人以外に強制的に認識・観測させられる事で、そこにリンゴが【擬似的に発生】するのである。


人間と言う生き物は、観測できない事象を現実として認識する事は出来ない、つまりどれだけ声高に机の上にリンゴが有ると宣言しても、実際にそこにリンゴが有ろうが無かろうが、机の上のリンゴを知覚出来ない限りは【リンゴは存在しない】という事になる。


これを逆説的に考えると、机の上にリンゴがある事を観測してしまった人間に対して、たとえどれだけ実際にはリンゴは存在しないと説明しても、そのリンゴは存在する事になってしまう。

人間は自分の視覚、嗅覚、触覚等の五感で存在を確認したものを原則的には否定出来ない。


今現在、貴方か持っている物でもいい、時計や携帯電話、本やコーヒーカップ、どんなものでも構わない、貴方が手にしているそれが、仮に現実に存在しないとして、貴方はそれが【実物】か【虚実を認識させられたフェィク】か証明可能だろうか?


これはそんな突然変異を図らずも享受した【新型人類】と、その存在の出現により存続を危ぶまれかねない【旧型人類】との生存競争の物語。


投げられた賽の出目は真実か、虚実か…

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