間章 みんながイチャチャ、初デート経験編
第20話 デートのお誘い
学級裁判が終わり、Cクラスの雰囲気は少しずつ元通りになりつつあった。
「よかったな…」
「そうね。でも、釈然としないわ」
取り戻しつつある雰囲気の中、北条だけはまだあの雰囲気を残していた。
「……まぁ、有馬京介は退学にはならなかったし、気にすることはないと思うけど…」
「違うわ、私はこの学級裁判が終わるまでの流れに釈然としていなのよ」
「……流れ?」
俺の頭上に?マークが浮かんだ、が大方予想はつく。
「ええ、そうね。言葉に表すのは難しいけれど、なんでしょうね。まるでここまでの流れが作られてた道でそれを沿ってきた感じ、わかるかしら?」
「考えすぎでしょ」
「だと、いいのだけど…」
どうやら、北条は今回の学級裁判に疑問を感じているらしい。学級裁判の始まりから、2回目、そして有馬京介の件、全てがまるで仕組まれたかのような、そん感覚を肌で感じているのだろう。
全くもって、勘が鋭いのか、悪いのか。
とはいえ、はっきりしていることは北条にいい影響を与えているということ。ただ問題が、いまだに友達を作らない姿勢を保っているところだ。これだけはなんとかしないといけない。
「あ、あの〜〜赤木くん!!」
後ろから俺の名前を呼ぶ声。後ろを振り返ると、目を瞑りながら、両手を重ね、少し縮こまっている相葉が突っ立っていた。
「相葉?どうした?」
「そ、そのですね。今週の土曜日は空いているでしょうか?」
恥ずかしそうに頬を染める姿は初々しさを感じるが、同時に違和感も感じた。そう、いつもの相葉とは違う雰囲気。
「今週の土曜日?」
今週の土曜日、特に用事はなかったよな?多分……。
「ちょっと待ってね」
俺はスマホを取り出し、カレンダーをチェックする。
「……うん。空いているけど」
「じゃあ、そ、その〜〜一緒に遊園地に行きませんか!!」
その言葉はCクラスの教室中に響き渡った。周りの視線はほぼ全員、俺たちの方に注がれ、雰囲気が一変する。
な、なんだ、この視線は、急に目線が……。
「べ、別にいいけど…」
「ふわぁ〜〜やったぁぁ!!では、また連絡しますね!!」
「う、うん」
満遍な笑顔で大きく体を揺さぶり、飛び跳ね、ルンルンで席に戻る相葉。その姿に俺の感じる違和感は晴れる。
なるほど、この違和感は相葉のテンションの違いか。いつもの相葉はジミジミとしていて、基本的に内気だが、今日の相葉は少し……なんて表現すればいいんだろう。輝いていた?だろうか。
「ど、どうしたんだ?」
その様子を見た北条はこちらを見つめていた。
「よかったわね…」
俺は北条の一言に疑問を感じた。何がよかったんだ?
「なぁ、何がよかったんだよ…」
すると、北条は呆れた顔でため息をついた。
人の顔を見て、ため息なんて失礼なやつだな
「赤木くん、もしかしてだけど、気づいていないなんてことはないわよね?」
「…………へぇ?」
俺の反応を見て、またため息をついた。呆れた表情を見せる北条、だが俺はその理由に全く気付けていなかった。
「本気で言ってるの?」
「あ、う〜ん。わからないんだが…」
「私は何も言わないわよ」
「別に、聞いてないし…」
「そう…」
北条は理解しているらしいが、全く俺は理解できていない。「よかった」、この言葉の意味を考えるんだ。北条が理解んできたんだ、俺が理解できないはずがない。
俺は今日一日、「よかった」の意味、真意を考え続けた。だが、全くわからず、そして気付けば、授業が終わり、放課後になっていた。
「わからない…」
ここはやはり誰かに頼るべきだろうか。けど、北条には絶対に聞けないし、だからと言って、相葉に聞くわけにもいかない。なら、俺が聞くべき、相手は……。
「あれ?俺ってもしかして、友達がいない?」
今思えば、この高校に入学してから遊んだ回数は何回だ?0回だ。いや、あのお疲れ様会を含めるなら、一回はあるが、とはいえだ!!
「まさか、俺って結構、失敗してる?まさかのボッチ!?」
いや、まだ希望がある!!そうだ!!学だ、学ならわかるかもしれない。見た目はイケメンだし、それに話しやすいし。
「よし!!明日、聞いてみよう!!」
そのまま1日が終わった。
次の日の放課、俺は学をカフェに誘った。かなりの勇気を振り絞っての誘ったのはこれが初めてだ。
だって、誘うために話しかけると周りの女子がギラギラした瞳で睨みつけてくるんだもん。
女子って怖い……。
「わざわざ誘ってくれ、嬉しいよ。赤木くん」
「まぁな、ちょっと相談事があってさぁ」
「へぇ〜赤木くんって人に相談するんだぁ〜〜」
隣から聞こえてくる女子の声、一人、邪魔者が混じっているようだ。
「杏奈はなんでここにいるのかな?」
「だって面白そうな組み合わせなんだよ?女子の間では少し話題になってるし、ついて行きたくなるでしょ?」
満遍な笑顔と裏腹に俺にはわかる。きっと不敵な笑みで笑っているに違いない。だが、別に聞かれて困る話でもないし、いいか。
「まぁ、杏奈のことは無視して…」
「むぅ、ちょっと〜〜!!」
「で、相談なんだけど」
「あっ、うん。本当にいいの?」
「ああ、杏奈は無視してくれていいから」
ギャーギャーとうるさい杏奈を無視して、俺は相談に乗り出す。
「それでだけど、実は俺、とある女の子に「遊園地に行きませんか?」って言われたんだけど、どう思う?」
学は真剣な表情で考え込む。
どうやら、真剣に考えてくれているようだ。これが頼れる友達というやつなのだろうか。歓喜極まれいって感じだ。
「うん。これは「デート」のお誘いだね」
「で、デート?デート、デート……デーート!?」
まさか、この俺に「デート」という言葉に出会うなんて、いや、待て!!なぜ、俺が誘われたんだ?相葉とはそこまで長い付き合いではない、むしろ最近知り合ったばっかだ。なのに一体なぜ……。
「デートかぁ〜〜流石にないだろ」
「そうかな?赤木くんってあんまり目立って動かないけど、なんやかんや、北条さんと一緒に頑張ってるイメージあるし、それになんだか、一緒にいると落ち着くというか、そんな雰囲気もあるし、あり得ない話ではないと思うけど」
かなり具体的だな。てか、俺って周りからそんなふうに見られていたのか?ふ〜ん、もう少し身の振り方には気おつけないとな。どうしても北条といると自分が抑えれないのは俺の弱点なのかもしれない。
「赤木くんはまず、女の子の気持ちを理解しないとダメだよ」
「女の子の気持ち?って、杏奈、話に入って来んなよ」
「なぁ!?せっかく、貴重な女の子の意見を聞かせてあげようと思ったのに!!」
「確かに、女の子の意見は大事かもしれないよ、赤木くん」
学がフォローするように意見を述べる。
「女の子の意見かぁ〜〜」
考えてみれば、この手の問題は女の子が一番理解しているのは確かだ。そして今、目の前にCクラスの中でも上位に位置する杏奈がいる。こんな滅多にないチャンスを逃すのは惜しいのでは?
でも、なんか杏奈に聞くのは釈然としない、いや、人とはプライドを捨てでも聞かなければいけないこともある!!そう!!全ては俺の高校生活を輝かしいものにするため!!
「わかった。で杏奈はどう思うんだ?」
俺はさらっと切り替え、杏奈に聞く。それはもうサラッと……。
「態度が少し気になるけど…まぁいいよ。けど、やっぱり、私が言葉で教えちゃ、面白くないよね」
「はぁ?」
少し、いたずらっ子な表情を見せる杏奈を見て俺は思った。杏奈のやつ、何かロクでもない事を考えている顔だ。
「だからね。ここはやっぱり、本番を迎える前に、一度体験した方がいいと思うの?」
「それってつまり、擬似的なデートを赤木くんに体験してもらうってことかな?」
「そうだよ!!学くん、理解が早いね!!」
「待て待て待て!!擬似的なデートってそれってもうデートじゃん!!」
「そうね。もうデートね、けど考え見て、経験しているのと、していないとじゃあ、考え方が変わると思うの。安心して!!私がより優れた女の子を用意するから!!」
「え、ちょっと…」
「よかったね。赤木くん!!」
「あ、あの…学?」
「それじゃあ、デート前日にデートの予行練習するから、ちゃんと予定空けておいてね!!わかった?赤木くん……」
空いた距離を埋めるように詰め寄り、顔を近づけ、威圧していくる杏奈。満遍な笑顔なのに、瞳が全く笑っていない。
「は、はい…」
人生で初めて、女性の圧に負けた日だった。
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この章はラブコメチックに話を構成していますので、ぜひ楽しんでお読みください。
言うなれば、箸休めです。
少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします!!
ご応援のほどお願いします。
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