幕間 木兎杏奈の裏顔?
私の学校の1日は朝4時から始まる。起きたらまず、洗面台で顔を洗い、寝癖を直す。その後はコップ一杯分の水を飲んで、歯を磨く。次は動きやすい服に着替えて、1時間ほど、ランニングをする。
運動は体型を維持する上で重要な習慣。毎日欠かさず、行うようにしている。
「はぁはぁはぁはぁ…」
外の空気は気持ちい。嫌なことを忘れることができるし、前向きにいろんなことを考えることができる。
「あらあら、学生さん?」
ランニング途中、おばあちゃんに出会した。
「はい!!」
「こんな時間にランニングなんて、えらいわね」
「そ、そんなことないですよ」
「もしかして、天竺高等学校の生徒さん?」
「はい、そうですよ」
「やっぱり、すごいわねぇ」
「全然すごくなんてないですよ。私なんてただ偶然、入学できただけなので」
「そんなことないわ。偶然だとしても、入学できたことがすごいんだから、じゃあ、またね」
「はい、おばあちゃんも体には気おつけてくださいね」
「はははっ、優しいね〜〜ありがとう」
満遍な笑顔、決して笑顔を崩さないように接した。
本当に疲れる。疲れる。疲れる。疲れる。疲れる。はぁ〜うざい。
寮に戻る頃には6時半を過ぎていた。そんな中、朝ご飯を用意して、一杯のコーヒーミルクをコップに注ぎ、朝ごはんができるまでテレビを見ながら、くつろいだ。
「よし!!今日も一日頑張るぞ!!」
朝ご飯を食べ終えると、制服に着替え、学校に行く準備をする。
そして、扉を開けて、学校へと向かった。
「へぇ〜最近はこんな服が流行ってるんだね」
「そうだよ〜〜杏奈ちゃんなら絶対に似合うからさぁ。今日一緒に見に行かない?」
私は一切女子のグループには属していない。広く浅く、仲良くなるタイプなのが私。決して偏らない中立な立場。
「いいよ〜〜」
「やったぁ〜〜!!みんなもいくよね?」
周りにいる女子も全員が頷いた。この子は1年C組の
彼女の言葉にほとんどの女子が頷く。これは女子特有のだけど、女子はグループを作り、みんなで助け合う関係を構築する特徴があり、彼女はその中心的、リーダー的存在。
あ〜あ、消えてくれないかな。さっさと退学してくれないかな。こんな女、消えちゃえばいいのに。
「じゃあ、今日の授業終わりね、みんな!!」
約束した私は、授業が終わった後、ショッピングモールへと向かった。ただし普通のシッピングモールではない。この天竺高等学校の周りには不自由がないようできる限り用意できるもの、お店は全て置いてある。
有名ブランドのお店や、ファーストフード店、美容院、病院、スーパーなど、全てが用意されている。
「きゃーー!!やっぱり、似合うじゃん!!」
「そ、そうかな?」
「うんうん、杏奈ちゃん似合うよ」
「やっぱり、神奈ちゃんが選ぶファッションは当たりしかないね」
「当たり前でしょ、私を誰だと思ってるの。将来、世界で活躍する期待の女優よ」
「さっすが〜〜神奈ちゃん!!」
そう、
何より、彼女のスタイルは世界レベルで美しいと言われている。すごいよね?羨ましいよ。そんな自慢できる才能があるのって、これが本物の天才というのでしょうね。私と違って……。
「今日は楽しかったね〜〜」
「うん!!すごく楽しかった。それにしてもいいの?この服…」
「いいのいいの。杏奈ちゃんは可愛いんだから、こんなの安いものよ」
「えへへ」
「じゃあ、また明日ね」
「うん!!みんな、今日は楽しかった。また遊ぼうね」
1日が終わった。
私はそのまま寮に戻らず、近くの公園に向かった。
特に理由はないけど、ただ行きたかった。そう思った。
「よいしょっと」
ベンチに座り、視界全体に映る沈んでいく夕日を見つめる。
「疲れたなぁ〜〜」
女子との付き合いはとても疲れる。別に断ることもできたけど、Cクラスでやっていく以上、ある程度の関係は作っておかないといけない。それに、情報収集も大事だ。
「くそ…」
心の声が漏れる。
「くそ……くそ…」
あんな奴らといると頭が狂いそうになる。
「くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ…はぁ!?」
咄嗟に気づき、口を抑える。
「ダメダメ。ここはまだ外なんだから。やっぱり、溜まってるのかな〜〜」
この学校に入学できたのは偶然だった。本当に偶然に偶然が重なっただけ、本当は入学する気もなかった。
「めんどくさいCクラス。学もめんどくさい。北条もめんどくさい。神奈もめんどい。奏馬も……彼は気持ち悪い」
彼だけは気持ち悪い。彼の目を見ているだけで、体が震えそうになる。彼が持つ瞳、あれを見ているとまるで全てが見透かされているような感覚に襲われる。
「彼についてはもう少し調べないと…じゃないと……安心できない」
少し苛めてやろうと、わざと退学について言わなかったけど、結局、乗り越えちゃうし……でも、流石に一人ぐらいは出ると思ったんだけどな。
「もしかしたら、彼が何かしたのかも…」
いや、やめよう。妄想はいくらでも広げられるから恐ろしい。
「さぁ、戻ろっと…」
私はベンチから立ち上がり、帰ろうとした時、一人の全身黒で覆った謎の不審者が目の前に現れた。
「だ、だれ?」
私は一歩下がり、語りかける。
身長的には女子?かな。でも見た感じはこの学校の生徒っぽい、けど断定はできない。
「少し、聞きたいんですけど……杏奈さん…で、すよね?」
少しオドオドしながらも、私の名前を聞いてくる。
口調や話し方からして、人話すのが得意ではないのかな。でも私の勘が言ってる、油断するなと。
「ええ、そうだけど…」
「あっ!!そうなんだ〜〜よかった。間違ってたらどうしようかと…」
安心した様子を見せる謎の人物。
「で、一体何がようなの?その口調からこの学校の生徒でしょ?」
「うん!!そうだよ、杏奈ちゃんと同じ1年生だよ」
「1年生!?」
「あ、ごめんなさい。それでね、聞きたいことがあるんだ」
「な、何かな?」
「Bクラスの有馬京介くんって知ってる?」
「有馬京介くん?」
有馬京介くんって確か、Bクラウスの中でもかなり頭いい子だったよね。
「名前ぐらいは知ってるけど」
「あ、名前だけ?」
「ええ…」
「本当に?」
「しつこいよ」
「ご、ごめんね。そっかぁ〜〜じゃあさぁ、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
少しずつ口調が柔らかくなっていた相手。私は少し恐怖を覚えた。
「どうして、私が顔も知らない相手にお願いを聞かなきゃいけないの?」
「え…あ〜そうだよね。うん、確かに…で、でもね。杏奈さんに断る権利はないと思うんだよね」
急に声のトーンが下がる。
「え?」
「だって、今の私なら、杏奈さんのことメチャクチャにできるもん」
それは圧倒的自信からくるものだった。私にはわかる。
「ねぇ、私知ってるんだ〜〜杏奈ちゃんのひ・み・つ…」
そう言いながら、私との距離を一歩ずつ詰めてくる。
私は恐怖のあまりに、体が動かない。そして気づけば、すぐ目の前まで近寄っていた。
「その秘密っていうのはね〜〜」
そう言って、私の耳元である一言を呟いた。その一言を聞いて、私は愕然とする。
「ど、どうして、知っているの?」
「え〜そんなのどうでもいいよ。それより、これでお願い聞いてくれる気になったかな?」
顔は隠れてわからない。でも私にはなんとなくわかる。その隠れた顔にはきっと人間の皮を被った醜悪な表情が隠れていると、そう思った。
「わ、わかったわ。それで私は何をすればいいの?」
「そんな難しいことじゃないよ。ただ有馬京介の今までの人生経験を教えてほしいの」
「全て?」
「そう全て、一つのかけらもなく全てだよ。わかったら、このメールに送ってね。じゃあ、バイバイ。杏奈ちゃん」
そう言って、一枚の紙を渡され、その謎の生徒は去っていった。
「ど、どうして……くっくそがぁぁぁぁぁ!!!!!」
私は思いっきり、ベンチに足を叩きつける。何度も何度も、怒りをぶつける。
「はぁはぁはぁはぁ、必ず潰す…潰してやる」
今は従う。けど必ず、その化けの皮を剥がして、地獄に叩きつけてやる。
「さすが、天竺高等学校、曲者が多いのがまたうざい…」
こうして私の忙しい1日が終わった。
そして次の日、CクラスとBクラスの学級裁判が始まった。
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