第7話 黒薔薇姫のダンスパーティーは波乱万丈② 気晴らしデート!!

 ダンスパーティーが終わり部屋に帰ると、カエルがぴょこんと俺のところまでやってきた。悲しそうに眺めている。


「ちゃんと王女らしくできたわよ」


 素直に言葉にできないから、できたとしていたらきっとダンスを誘ってくる男どもにキツイお灸を添えていたと思うけど。


「どうしたの、カエル」


 ぴょんぴょんと私の足元で跳ねるカエルを手に取り俺はベルコにーに出た。

 月がまん丸く、照らしている。


 先ほどまでの賑やかさとは打って変わって静かに寝静まっている。


「戻れなかったらどうしよう」


 性別が戻らなかったにしても、せめて素直になれない呪いだけでも解けてもらわないと、家臣たちに誤解されていることが解くことができない。


「世界には魔法だけじゃなくて【ギフト】っていう力があるの」


 メイドか家臣が噂していた。神々に愛された者だけが持つ特別な力。国により生まれる人数などにばらつきがあるが、悪役女王の国では我が国よりも多く生まれると聞いたことがある。絶対治癒・守りの壁など、魔法よりも上位の力。絶対解呪の力を王は影に探させているとこっそり教えてもらっている。


 最悪の場合を想定して私に婚約者探し。


 国民はこのダンスパーティーの存在を知ってどう思ったのかしら。


「ねぇカエル、明日デートしようよ」


 時折城下に降りていて、自分が国民に好かれていないのを知っている。婚約者探しをどう考えているのか知りたい。護衛はいらない。ミハエルをうまく撒いて行動すればいい。


最後の瞬間まで諦めるつもりはない。


「ゲコゲコ」


 カエルがうなずいているかのように返答をする。


 俺はカエルをベッドに乗せて、明日のデートをどこに行くのか、考えていた。


***


 城で開かれたパーティは息苦しくて、父上が町娘だった母上を見つけられたのが私は驚いている。堅物で冷たい印象を受ける父上。見た目は麗しく人気があって、魔女に呪いをかけられた。見た目はどちらかと言えば父上似で諸外国の野郎に声をかけられるが、素直になれないがために、暴言を吐くから逃げられる。


 暴言を吐けない時に関しては、極力短文で、答えるようにしたりはする。


 カバンの中にカエルを忍ばせ町娘風の装いをしている。髪色も変える。


「お嬢ちゃん、いいリンゴがあるよ」


「おいしい焼き鳥はいかが」


 久しぶりの城下町。


 活気がある街づくりが出来ている。


 安易に口を開いてしまうと、相手に嫌な思いをさせしまうため、私は黙ってお店を見て回る。カエルはカバンの中で動き回っている気がする。モゾモゾと動いていて、カエルなのに、街の様子がよくわかるみたいだ。


 結界が張ってある城に入ってきたカエル。普通のカエルと雰囲気が近い、観察をしてみると魔力を感じる。もしかすると、魔物の一種なのかもしれない。


 最近父上の報告書にも魔物の出没が多いと書かれていた。


「隣国のお姫様は、悪役王女って言われていたけど、歌姫だったからな」


 口が悪いのに、彼女の魔力は聖魔法が得意だったと聞いている。魔物と戦い負傷した戦士達を助け「日頃の鍛錬が悪いから怪我をするのよ。ちゃんと鍛えないと駄目じゃない」と言ってしまったらしい。最近彼女の噂話を聞かない。


 魔物が活発になってきているというのなら、彼女が活躍して誤解が解ければ良いのに。 


***


 久々の城下町。カバンの中に居るカエルに小声で話しかけながら見ていく。


 ただプラプラと歩いていくと、骨董屋に惹かれて入る。


 不思議な本があった。


 呪いに勝つためにはという明らかに怪しい本。


 明らかに危ない本なのに、手に取ってしまう。


「おぬし、複雑な呪いがかかっているの」


 腰の曲がった老婆が私のと、一瞬カバンに視線を向けた。


「なんですかいきなり」


 手に取った本を手放さないように私は一歩後ずさりする。狭い部屋の中で埃を被った商品が多い中、この本は割と綺麗だった。


「店主に向かって酷い口の利き方をするんだな」


 手じかにある水晶玉と思える物を撫でる老婆。


「店主ならもっと堂々としていればいいでしょう」


 老婆は楽しげに笑う。私を一目見て呪いを言い当てるとは、老婆も魔女の血が流れているのかもしれない。力のある者なら、目くらましの術を怪しんで近づいてこない人もいるのに。


 カバンの中でカエルがモゾモゾ動いている。


 老婆がまたカバンに視線を向けた。


「きっかけを見つけているのに、うまく活用ができていないお馬鹿さんときた。そんなんじゃ呪いが解けるわけないよ」


「何を知っているんですか」


 城に居る魔導士ですら分からない事を知っているのか。


「ちょっとした助言さ。悪いがその本はお勧めしない」


 返しなさいと言いたげに私に手を差し出す。私は手にしていた本を更に力を込めて抱きしめる。


「お勧めしないのに棚に置いてあるんですか」


「本がその場所を望んでいてな。悪いことは言わない。買って帰らないことだね」


「言い値で買い取るわ」


 本に呼ばれている気がする。選択が間違いだとしても、既に二つも呪いを持っている私の呪いが増えたとしても誰も困らない。


「辞めときなと言っても聞かないのか」


「止められるのならば、私の呪いを解いてみなさいよ」


 挑発をしても解けるはずがない呪い。力のある者ならばきっと城に召喚されているはず。


 老婆は私が本を手放さないと判断したのか、タダだと言った。


「何か困ったらまたおいで。本に関するクレームは聞かないよ」

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