第5話 ゲコゲコとしか伝えられない声です。あたしの声が、届かない。

 あたしが酷いセリフを言ったはずなのに、王子は私のことを覚えていた。それよりももう一度会いたいって。


 カエルの姿の呪いの私に彼は気が付くだろうか?


 奇しくも私の呪いも好きな人を見つけること。初めて会った時からとても気になっていた人。素直になれずに辛い言葉をぶつけたはずなのに。


 次に会ったときは謝りたかった。


 彼が愛されているのに嫉妬した。


 私が愛されていなかったからうらやましかった。


 ごめんね。私があの時言わなかったらもしかしたら、魔女の呪いも跳ね返せたかもしれない。愛されていないという気持ちの隙間に魔女が入ってきた。


 王様のことを好きだった魔女。同じ人のはずなのに、魔力量の違いで寿命が異なる。きっと長く生きてきて恋焦がれた相手。気が付けば恋に落ちていたから、同じ苦しみを相手に味合わせたかったのかな。


 私を頭の傍に大切に置いてくれている。迷い込んだだけなのに、どうして大切にしてくれるのかな。普通ならカエルだもの、捨て去ってもいいじゃない。ノリで姿を変えられてから大切にされた記憶はない。


 カエルの王国に逃げ込むことも考えたけど、そこに行ってしまえばきっと呪いを解くことができない。私はカエルに恋できない。相手がカエルの呪いがかけられていた人なわけじゃない。本当のカエル族。


 私は人の姿に戻りたい。戻れるものなら。


 ねぇ、わたしに気づいてくれる?


 君が探している姫様は今すぐそばにいるんだよ?


 お願い、気づいて。

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