高校のマドンナ達が迫ってきた

漆黒の白竜

高校のマドンナ達が迫ってきた

 俺、青川克己あおかわかつきは黒岩高校に通う地味で目立たない高校2年生だ。そんな俺は今、人生最大の修羅場を迎えている。

 クラスの席替えで学園の四帝と呼ばれる4人の女子に囲まれたからだ。

 前に座っている女の子はバスケ部のキャプテン石山明音いしやまあかねだ。彼女は誰にでも気軽に話しかけるクラスのムードメーカーで、笑いの孔雀くじゃくと呼ばれる四帝の一人だ。

 「かっちん、これからよろしくね。」「かっちんって俺のこと?」

 「そう。かっちんの方が呼びやすいもん」

 かっちんなんて呼ばれ方は中学以来だ。中学時代、クラスからのいじめが原因で人間不信になった。俺の通っていた中学は学力が低かったから、みんなが行けないようなこの高校に進学したんだけどな。

 「明音ちゃんやめてあげて、青川くんその呼び方好きじゃないみたいだよ。」

 そう言ってきたのは右の席の西岡結愛にしおかゆめだ。彼女は誰に対しても優しく、学園の女神と呼ばれている。

 「青川くん···困ってた。」左の席の七野萌衣ななのめいは小動物のようなおとなしさとかわいさで学園のポメラニアンなんて呼ばれている。

 「ふしだらすぎるわ。鼻の下伸ばして。変態。」俺にそんな言葉の刃を飛ばしてきたのは鬼のような厳しさと誰にでもブレない性格から鬼の生徒会長と呼ばれている白野夏花だ。

 俺の後ろの席なのをいいことに罵倒のシャワーを浴びせてくる。

 「ちょっとなっちん、かっちんを悪く言わないでよ。」「夏花···素直じゃない。···本当のこと言えばいい。」

 「うるさい。本当のことでしょ。私たちに囲まれてるからっていい気になっちゃって。」「青川くんはとても心優しい人ですよ。今朝もおばあちゃんの荷物を持ってあげていましたから。」

 4人は家も近く、昔から仲良しだったらしく、お互い思ったことを口にしていた。

 

 その後も4人は俺を中心に言い合っていたので、俺は気まずくなってその場から逃げた。ああ疲れた。確か昔にも似たようなことがあった気がするな。


                  *


 私、白野夏花は黒岩高校2年生。私たち4人は小さい頃から家も近く、昔から仲良しだった。

 そんな私たちにも恋心という感情が現れた。

 彼、青川克己が私たちの関係を複雑にした。

 小さい頃からみんなに分け隔てなく優しく、そんな克己のことが好きという感情が沸き上がり、私たち4人はお互いを「特別に仲良しな恋敵」として12年以上生活してきた。でも小学校低学年の時に克己は転校していってしまった。

 高校で同じになれたのはいいのだけど、克己は昔と大きく変わっていて、向こうは私たちのことを忘れてしまっている。

 今も私たちは克己に想いを寄せているけど、私は想いの真逆の行動をしてしまう。今日だってあんなこと思ってないのに言っちゃった。

 どうしよう。私ってダメだな。


                  *

 席替えから約1週間、相変わらず4人は俺を中心に言い合っていた。変わったことと言えばここ最近は白野があまり俺に突っかかってくることも少なくなってきた。何か心の変化でもあったのだろうか。他の人には変わらず鬼の厳しさであるが。

 「そろそろ決着つけようよ。」「いいですよ。誰になっても恨みっこなしですから。」「うん。···私も。」「···」「夏花はそれでいい?」「···うっ、うん。」

 今日は朝から4人が教室の隅で何やら話してた。何だろう。

                その日のクラス活動の時間

 「ねぇ、かっちん。かっちんってさぁ、その、好きな人とかっているの?」

 「えっ、···何でそんなこと授業中に聞いてくるの?」「だって気になるんだもん。」 『···ゴクッ···』「俺はそんな人いないよ。中学でのいじめで人間不信なんだよ。そりゃ、いるわけないよ。」「そっそっかー···」何だろう。4人とも落ち着きがない。

 「そうだ、青川くん、今日の放課後屋上に来てもらえませんか?」「なんで?」「いいですか。絶対ですからね。」

 何の用かを聞こうとしたら授業が終わり話す機会を失った。


 放課後、屋上に行くと、なぜか学園の四帝が待っていた。「用って何?」

 俺は何か失礼なことをしてしまったのだろうかと最近のことを振り返っていると、「来てくれてありがとうございます。克己、今日ここに呼んだのは···」

 あれ、なんで?「えっ、今克己って···」「あっ···」克己という呼び捨てで思い出した。

 ここにいる4人と昔遊んでいたときの呼び名だった。「···聞いてもいい?4人って昔一緒の小学校に通ってたよね。」

 『······』沈黙。

 「···そっその事はごめん。私たち、克己と離れる前のあの約束で自分を磨いた。今なら克己と···その···お付き合いしたいなって···思ってる。」あの約束、それは俺が4人と離ればなれになるとき、再び会った時に4人のうちの誰かと付き合うという約束を交わしたのだ。実際、4人は魅力的になっているが、俺は人を信用できなくなっている。

 「ごめん。おれは···」「あーもう無理!」「なっちん?」

 「人間不信だから私たちと付き合えないって言いたいんでしょ。」

 「···まぁ、そうだな。」

 「そんないつまでも待ってられない。4人と付き合えばいいじゃない!もう誰も後悔しない。」「いいね。なっちん」「夏花···すごくいいね。それ。」「納得です。時間はかかっても最終的には1人に決めてくれればいいんですから。」


 『というわけで覚悟しててよね。克己❤』

 俺の学校生活はどうなるんだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

高校のマドンナ達が迫ってきた 漆黒の白竜 @shikkokunohakuryuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ