第20話 対峙(前編)

「大丈夫か?あの家に帰るけど。」

「多分大丈夫。私が夜中にリビングに行かなければいいだけの話だから。いろいろとありがとね。」

と、いつもどうりの様子に戻っている。

今はと言うと、帰っている途中だ。まだ怖がっているのであれば、お金を犠牲にてお祓いをしてもらおうと思っていたが、そんな心配はいらなかったらしい。実際お金は貰っているが、生活費として消える分と、お小遣いとして消える分を合わせたら、あまり余裕は無い。夏休みにでも入れば少しは貰えるだろうけど、何週間か先の話だ。そんなのあてにしない方が良い。

「てかさ、さっきから視線感じない?」

「お前も感じるか?」

またストーカーか。ヒナであれば止めさせる事なんて容易いかもしれないけど、今日の最後のセリフ。

「今の話を聞いているストーカーがいるよ。」

この言葉が本当であれば注意さなければいけないが、隅々まで調べた結果、人も盗聴器も見つからなかった。だから今回もヒナなのか?と、聞かれると違う気がする。花音も感じるくらいの視線を出しているのだ。警戒心が強くなったからといっても、あまり視線やオーラなどを感じる力がすぐ上がるはずがない。そこまで無防備だったらわかるけど。

「昨日と同じ作戦で行こう。」

「わかった。」

花音は道を曲がって、走って行った。ここから歩くスペースを下げればこっちに近ついて来るはずだけど………そう簡単にいかないか。

視線がこっちから離された。足音も少し早くなってる。花音の方に行ってるな。これは助けないと。

そう思い、俺はそのストーカーの所へ向かった。花音が曲がった道まで戻り、そっと覗くと、見たことのある銀髪の女の子が立っていた。その事実は、信じられなかった。なぜならそこにいるのは栞だから。内気な性格の栞が、こんな犯罪寸前の事をするとは思えなかった。ヒナか、颯天の回し者だと思っていたのもあるが、おとなしいで人気の栞とはまるで逆だったのもあるだろう。

そうこう悩んでいると、栞はこっちに気がついたのか、こっちに歩いてきてこう言った。

「何?花音を誘惑する詐欺師さん?今度は私を誘惑する気ですか?」

と。

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