花の恋人

主道 学

第1話

 花の恋人は誰にでもいるんじゃないかしら?

 その人はすぐ近くにいるのかも知れない。

 

 二軒隣の花屋が私の勤め先だった。

 給料も悪くなく。

 今まで不平を言ったこともない。


 ただ、お客もあまり来ないのに給料がいいのは何故かしら? と、いつも考えていた。

 その日は久し振りにお客が来た。

 白髪の老人だった。

「この店はとても良い。お客が一人だけで来たとしてもお茶を淹れてくれる。みんな落ち着いていつも綺麗な花が見れるんだ」

 そう言っていた。

 確かにそうだ。

 店長が数少ないお客へと、紅茶のサービスをしているんだ。

 ハイビスカスの香り漂う美味しい紅茶。

 勿論、冬にはシナモンの香りの紅茶を淹れるのだ。

 お客は皆、満足している。

 とっても控えめだけど、私の小さな幸せだ。

 

 花にも色々あるように、人にも色々とある。

 花の恋人は意外と近くにいるんじゃないかしら?

 

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