1話 この世界の仕組みと死神の役割

●1

 空間に一筋の閃光が生じると、そこに二つの人影が現れた。

 一つは黒髪のほんわかな雰囲気をまとう青年で、もう一つは白いワンピースを身に纏った白髪はくはつの小さな少女である。

 並んで立つ二人。背丈の差だけ見れば、親子のようにも見える。

 そんな二人のうちの一人、黒髪の青年は三歩ほど前進すると、誰に言うわけでもなく、爽やかにこう言い放った。

「これはまた絶景だねー」

 時は夜なのか、既にあたりは真っ暗だ。しかし、青年の瞳には光が映っていた。それはいわゆる「夜景」という光源で、幾つもの光る建造物が一面に散布している。

 白髪の少女──シロナは、そんな目を光らせる青年の隣に並ぶと、淡々と説明を始める。

「ここは第11世界、シュルミナーゼ。下界の中でも最高峰の文明を持つ世界」

「なんだか猫型ロボットが生息してそうな街並みだね」

「? ねこがたろぼっと?」

「あはは。なんでもないよ。それより、これからどうする?」

「まずは目的地に向かう」

「おっけー」と青年は指で丸を作って了承する。──その直後だった。突如、シロナの背中から大きな翼が現れた。

 それは、暗闇の中でも白く輝く、美しい翼。宙を舞う羽は、まるで白雪のようだ。

 それを目のあたりにした青年は、思わず目をパチパチとさせると、笑顔で言う。

「綺麗な翼だね♪」

 爽やかな様子の青年。けれど、いまいち実感していなかった認識は、彼の中で確実に昇華している。

 そこにいる可愛らしい女の子は、ただの可愛らしい女の子ではなく、紛れもない神の使いである──『天使』なのだと。


●2

 空を移動する二人。シロナは自前の翼を羽ばたかせて飛行する。

 一方、青年の方はというと、シロナに服のえりを掴まれて運ばれていた。

 その姿はまるで猛禽類に捕獲された小動物のようである。

「さっきの場所は出入口ゲートだから、もしわたしとはぐれたら、あそこに向かうようにして」

「うん、了解♪」

「それじゃ、『死神』の仕事について説明するわ」

 シロナは前を向きながら、言葉通り青年に説明を始める。

「まず、『死神』というのは、世界の秩序を保つことを役割にしているの」

「世界の秩序? ピンとこないな」

「秩序を乱すケースは色々あるけど、その元凶を一つ一つ摘んでいく感じ」

「うーん、まだいまいちピンとこないけど、話の腰をおるもの悪いし、そういうものだって一応の理解はしておくよ。それで、僕たちは今その元凶のところに向かってる訳だね?」

「うん、そう」シロナは静かに頷いた。風のせいで、その頷きは非常に聞き取りづらいものだったが、青年は次の言葉を紡ぐ。「それにしても、僕の知っている『死神』とはだいぶ違うなぁ。『死神』って、寿命の尽きた人間の魂を刈り取ったりするものだと思ってた」

「それどこ情報? そんな事しない。そもそも死んだ人間の魂は自然に天に返るようになっているの。全自動なの」そしてシロナはこう続ける。「第一、人間なんてウジのようにいるんだから、わざわざ魂を回収するなんて非効率」

「し、シロナちゃんって意外に毒舌なんだね……。人間に恨みでもあるの?」

 そんな会話をしていると、やがてシロナはゆっくりと下降して地上に着地する。どうやら目的地はそれほど遠くはなかったようだ。もちろん、青年も無地着地した。しかしそこは……、

「ここが目的地? 見たところ荒野のようだけど?」

 そこは人、建物、といった文明の要素が一切見当たらない場所だった。

「ねぇシロナちゃん──」

「確かこの辺りに……」疑問を浮かべる青年を他所に、シロナはそんな事を呟きながら、探るように両手を地面にかざしている。その行動だけでも謎だが、空中飛行が終わったというのに未だに翼を広げているシロナに、青年は首を傾げた。

 と。

 その直後だった。シロナの真下に、まん丸な円が現れた。いや、『円』というより『穴』と表現した方が正確だ。覗けば、その穴の中は真っ暗で何も見えない。シロナはそんな真っ暗な『穴』の上を、真っ白な翼を羽ばたかせて浮遊していている。

「??? これはどういう……?」

「この『穴』は実際には空いてない『穴』なの。わたし達だけが視認して通れる架空の『穴』」

「? 理屈はよく分からないけど。要するにこの先が本当の目的地ってこと?」

「そう」

 一連の疑問が解消したところで、シロナと青年は『穴』の中に入っていく。といっても、重力に身を任せて落下しているだけだが。

 しかし、深い。100メートルくらいはあるであろう、『穴』。ようやく底に辿り着いたかと思えば、そこには大きな空間が広がっていた。シロナは翼を広げて着地する。青年はそんなシロナにしがみついて着地した。

 底の空間には誰もいなかった。けれど、機器や機材などが溢れんばかりに置いてある。

 ……そして、その中でも一際注目を集めるよう置いてある、立方体の形をした大きな金属の塊。

「これって……」

「多分タイムマシーン」

「へー。……えっ⁉︎」青年は遅れて声を上げた。  

 本当に猫型ロボットが実在しそうな展開になってきた、と青年は少しワクワクする。

「でもまだ完成していないみたい。……よかった」

「よかった? 完成していたら何か不都合でもあったの?」

「不都合も何も、今回のわたしたちの目的が『これ』なの」

 シロナは言いながら大きな立方体を指さす。そう言われて、青年はタイムマシーンを眺めながら考えた。

「もしかして、未来や過去に行ったりしちゃダメだったりする?」

「別に未来に行くのは問題ない。そもそも、世界というのは未来に向かって進んでいるものだから。けど、過去に戻るのは絶対ダメ。世界の理に背くことだから、神々の取り決めでは『禁忌』にあたる事なの」

「まあ、確かに過去を好き勝手に変えられちゃ、たまったもんじゃないよね。それじゃあ、今回の僕たちの仕事は『これ』を壊す、って事でいいのかな?」

「合ってるけど、少し違う」

「?」

 シロナは一旦会話をとめると、あたりを見渡す。そして通路を見つけると、そこへ足を進めた。青年はその後に続く。

「人が人に課す罪は色々あるけど、神が人に課す罪って案外少ないの。これはその数少ない罪にあたるもの──だから、これを造った人間には罰が下る」

「……っ」 

 青年の目じりが少しピクリとした。だが、決して笑顔は崩さずにたずねる。

「罰っていうと、定番なのは『呪い』とかかな? 一生激痛に見舞われる呪いとか、子孫を残せなくなる呪いとか。あ、でも人によっては全く呪いにならない人もいるから気を付けた方がいいよ?」

「……なにを言ってるの? そもそも、わたしたちは『呪い』なんて物騒なものかけない。……たまにしか」

「たまにはかけるんだね」

 はは…、と青年が苦笑いする。

「じゃあ、罰って?」その流れで青年が尋ねると、シロナは青年の方を振り向いた。──シロナと目が合う。

「それを下すのは、あなたの仕事」

「僕の?」

「あなたの『役割』の名前は?」

「……」

 ……なるほど。

 それで青年はようやく理解する。

「死神、だね」

「そういうこと」 

 シロナは機械的にそう言うと、再び前を向いて足を進めた。

 ほどなく歩くと、大きな金属の扉にさしかかる。

「この先にいるみたい」

 そう冷静にシロナは言うが、こんな厳重な扉、一体どうやって開けるんだ? と青年はふと考えたが、シロナは先ほどと同じように、目の前の扉に架空の『穴』を作る。どうやら、彼女にとっては全てが通り道となるらしい。

 『穴』をくぐると、そこにはそれほど広くない空間があった。機器や機材があるのは先ほどの空間とさほど変わりないが、ここには決定的に違うものがある。この空間には、人がいた。

 宙に浮く形なきディスプレイに向き合う、キーボードをひたすらタイピングし続ける白衣姿の老人が一人。

 青年は、この老人があのタイムマシーンを造った張本人だと、何となく理解した。

 すると、脈略もなくシロナが前に出る。

「(……え、そんな堂々とっ!)」

「大丈夫。あの人にわたしたちの姿は見えてないし、声も聞こえてない」

「え、そうなの……?」

 青年はそんなシロナの言葉を疑いつつも、あとを忍び足でついていく。

「人間たちの認識の範囲じゃわたしたちを捉えることは出来ないの。人間には見えない世界でわたしたちは生きて──ううん。実在している。だから、目の前で合唱したり、踊ったりしても全然気づかれない」

「なんだって⁉︎ それじゃあ、イタズラし放題ってことじゃないか!」

「落書きでもする?」

「いや、この老人に対して何かしようとは微塵も思わない」

 青年は笑顔で即答した。

 ……しかし、なるほど。これほどの設備の施設で、ブザー1つ鳴らなかったのはそのためか。

 青年はそんな納得をしてから、立ち止まり、老人に目をやる。

「……この人で、いいんだよね?」

「うん」

「えっと、それでいまからこの人を殺──この人に罰を与えるだけど、何か手順とかあるのかな?」

「絶命させて、魂を回収する。それだけ」

「絶命させる方法は?」

「なんでもいい。首を絞めて窒息させても、そこら辺のもので後頭部を強打しても」

「まるで殺人鬼みたいだね」

 ……いや。

 大義名分があるだけで、やろうとしている事は結局同じか。

 青年はそんなことを思いながらも一歩前に出る。そして、老人の背後に立つと、自身の左手をぱっと開いた。するとそこには、一秒とかからずに剣先が鮮やかな鉄色の剣が出現する。青年はその剣を強く握り、振り上げた。……あとはこれを振り下ろすだけ。

 ──と?

 そのときだった。

「……」

 ふと、青年の視界にあるものが映った。

 それは古びた木製の写真立てであり、もっといえばそんな写真立てに入った、一枚の色あせた写真。──そんな写真に写っているのは、一人の若い女性だ。

 すると、作業をしていた老人は唐突に手を止めると、そんな写真を手にとって、とても愛おしそうにこう呟く。


『……


「……っ」

 そのとき、青年の脳裏には様々な光景が浮かび上がった。

 ──それは、愛し合う二人の人間の姿。

 ──それは、愛する人を失い、涙をこぼす片割れの人間の姿。

 ──それは、愛する人との幸せを再び掴み取るために奔走ほんそうする一人の人間の姿。

 このとき、青年はこの老人の『目的』を理解した。

 『死』とは、平等なものだ。どんな人間にも、『死』はかならずおとずれる。

 『死』とは、不公平なものだ。生きることのできる時間は人によって大きく異なっている。

 『死』とは、絶対的なものだ。どれほど手を尽くしても、どれほど願っても、どれほど泣き叫んでも、それが覆ることは決してない。

 それでも、この老人は何年も、何十年も、愛する人とまた出会うために、足掻き、抗い続けてきた。

 天国でまた会えるだとか。

 生まれ変わってもう一度出会うだとか。

 そんな諦めのようなことを口にしないで、この老人はたった一人、孤独に生き続けてきた。

 気付けば、青年の持つ剣はカタカタと震えていた。

 そんな青年の服の裾をひっぱりながら、シロナが問う。


「どうしたの? ──らないの?」


「……っ」

 青年を映す純粋な青い瞳。

 そこに悪意だとか穢れだとかは微塵もない。

 ──けれど、青年には、どうしても、この可愛らしいはずの白髪の『天使』が、残酷な『悪魔』のようにしか見えなかった。

 青年は俯く。けれど、すぐに顔を上げてシロナへこう応える。

「ううん。なんでもないよ。♪」

 平然と、にっこりと、満面の笑みで。

 そして青年は剣を振り下ろし、老人の首をはねた。床に落下した写真立ては、真っ赤に染まる。


●3

 青年とシロナは神界に戻ると、報告を済ませるため、上司である女神アイリスの元を訪ねた。

 が、青年の合図とともに、シロナがアイリスのスカートをめくりあげるという事件が発生。

 青年はねじ巻きにされたうえ、九度壁に叩きつけられ放り投げられた。部屋には血しぶきが散乱する。

 青年が起き上がるのに、30分ほどの時間を要した。

「いたた……よし! これで明日からも頑張れる!」

「ちょっと待ってください⁉︎ おかしい。今の反応はとてもおかしいですよ⁉︎」

「おや、そこにいるのは一見清純っぽいけど、実は黒フリルなアイリス様じゃないですか。どうもお疲れ様です」

「……も、もしかしかして怒ってます? 確かにパニックになって少しやりすぎてしまったかもしれませんが──って、悪いのはどう考えてもあなたの方ですよね⁉︎」

「はは、愛らしいなぁ」

 そんなことを呟きながら、青年は立ち上がる。

「あれ? シロナちゃんは?」

「彼女なら報告を済ませて出ていきましたよ。……全く、あなたというひとは。シロナに変な事を吹きこまないでください」

「すみません。今時珍しい純粋な子だったもので、つい」

「……確かにシロナの世間知らずは異常ですが」

「それも愛嬌じゃないですかね。シロナちゃんのような女の子は世界の宝です」

「言っておきますが、シロナはあなたより600歳は年上ですよ?」

「ほー、それはいわゆる合法ロリってやつですね。俄然がぜんやる気が出てきます」

「……やはり、この男の『従者』は考え直した方がいいかもしれません」

「ところで、アイリス様は今おいくつなんです?」

「今度は左巻きに捻りますよ?」

 冷たい笑顔でそう口にするアイリス。それ対して、青年は笑う。

 できる温度差。

「……」

 加えて、その後アイリスが無言で立ち上がって青年の元まで歩み寄ると、その温度差はさらに広がった気がした。

「どうしたんです? 僕に近づくと子供ができるって避けていたのに……は! もしかして『了承』って意味ですか⁉︎」

「……一体どんな飛躍解釈ですか。それに私はそんなこと言った覚えはありません。生理的に近づきたくない、と言ったんです」

「あれ! そんなこと言ってましたっけ⁉︎ ……まあ、アイリス様の僕に対する認識はよく分かりました。ではどうして?」

「……今だけです」

 それを期に、場が静まりかえった。

 そこで青年は気づく。アイリスの瞳が先程までとは違う、真剣な眼差しに変わっていることに。

「どうしたんです? 急に……」

「少し、真面目な話をします」

「……」

 青年はしばしの沈黙ののち、笑顔で応えた。

「分かりました。真面目に聞きます」

 それにアイリスは頷く。すると、改まって言った。その表情はどこか深刻だ。

「今回の事で分かってもらえたでしょうが、あなたにとって『死神』の役割とは、とても辛く、苦しいものになるでしょう。それでも、やたりたい、続けていきたい、本当にそう思いますか?」

 それは再確認。いや、聞き手によっては厳しい忠告のようにも聞こえたかもしれない。どちらにせよ、第三者がいれば、間違いなくその場を立ち去ってしまうほどに空気が悪く感じる。

 しかし、アイリスのそんな言葉を受けても、青年は不思議と不快な気分にはならなかった。それどころか、愛おしい感情が指数関数的に大きくなっていく。

 ……あぁ、本当にこの人は。

「心配、してくれてるんですか?」

「! い、いえ、あくまで上司として! 上司としての仕事の一環です!」

「そういうところ、本当に好きですよ」

「っ⁉︎  ま、全く、あなたという人は……っ」

 アイリスは大いに照れている。この人ならざる女神は『愛』を象徴する神でありながら、男性経験が今までに一度もなく、案外チョロかったりするのだ。

 そんなことを思いながら、青年は答えを返す。

「僕は大丈夫ですよ。というか、僕から神様になりたいって申し出たんですから」

「……無理、してませんか?」

「えぇ、もちろん」

 安心させるようにそう言う青年。

 しかし、アイリスは無言になった。

 その重たい口が開いたのは、その数秒後のこと。

「私はあなたの『歴史』を知っています。けれど、あなたの『心』まではわかりません。だから不安なのです。 ──にとって、この世界はあまりにも残酷すぎるのではないかと」

 青年は笑顔を崩さない。そのままの表情で言葉を繰り出す。

「確かに、今回は少し感情が揺さぶられてしまいました。それは事実です。否定はしないし、特に言い訳もしません。でも、本当に大丈夫ですよ」

 そして、青年は最後に付け加えるようにこう言った。


「──そのうち慣れますから」


 無感情な瞳で笑いかける青年。

 その笑顔はあまりにも冷たく、非情で──危うい。

 アイリスにはそう思えてならなかった。


●4

 青年が後にした部屋でアイリスは一人窓の外を眺める。

 窓の外には、芝が生い茂る庭が広がっている。もともとは何もない無の空間だったが、安らぎを求めてアイリスが300年ほど前に創造したものだ。気持ちが乱れたとき、アイリスはいつもこの庭を眺めるようにしている。

「……」

 しかし、今日ばかりはこの乱れが治る気配はない。

 窓ガラスには、光の玉を両手にのせる不安定な自分の姿がくっきりと映し出されていた。

「……どうか、彼に溢れんばかりの幸福を」

 祈る。

 アイリスは、愛する人とまた出会うために足掻き続けてきた科学者の、いや、その成れの果てである男の魂をその手に、心から祈る。それが決して叶わぬことであることを知りながら。

 通常、人は生を失えば魂が肉体から引きはがされ、天に昇り、神々の導きによって新しい肉体を与えられる。そして、再び世界に産み落とされる。そう循環している。

 しかし、罪を犯した者──罪人の魂は別だ。罪人は神々の手によってそのサイクルから排除され、削除される。危険分子として、世界に存在することを許されない。それは決して破ることのできない神々の決まり事の一つだ。

 それでも、アイリスは祈る。祈って祈って、祈り続ける。ずっとそうしてきた。

 自分は本当に神様に向いていないな、とアイリスは思う。一人の人間にここまで入れ込んでしまうことが、神としてどれだけ愚かしいことか。

 先ほどまでこの部屋にいた新米神の青年のことを想うと、余計にそう思う。

 アイリスはあの青年が『神』になるなんて望んでいなかった。いや、それ以前に、なるだなんて想像すらしていなかった。

 元々は人間であった青年が、『神』になったのは、偶然であり、自然な事だった。作為的な要素なんて一切なかった。

 けれど考えずにはいられない。──彼は、本当に『神』になるべきだったのか。

 アイリスは、青年と初めて出会ったときのことを鮮明に思い出す。

 初めて出会ったとき『青年』はただの『少年』だった。……不幸な死を遂げた、ただの少年。

 そんな少年が、まさか7つの世界を生き、7度の死を経験するだなんて。そしてまさかその経験の果てに、自分と同じ『神』の位にまで昇り詰めてしまうなんて。あの時は想像すらしていなかった。

 少年は大人になった。いくつもの生死を繰り返す中で、愛情を知り、悪意を知り、……そして諦めを知っしてしまった。

「それを『成長』とは呼びたくないですね……」

 アイリスは、そんな考えごとに終止符を打つように、とある青年の名を感情的に呟く。本当に自分は神様に向かない、そう心底思いながら。


「……レイ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る