道路の白線が消えているので、代わりに私が描きます

!~よたみてい書

ロード

主人公「ここもだよー、消えてる」


 私は大きくため息をつき、路上を見つめた。


 まただ。


 この場所も道路の白線が無くなっている。


変声した主人公「うーん、仕方ないな。ボク達でなんとかしよう」


主人公「そうだね、私達が元の姿に戻してあげよう!」


 ウィザードハットの前方部分のツバをつまみ、上にあげて視界を確保する。


 ちなみに、変な目を向けられないように、一般的に近いデザインの帽子だ。


主人公「左よし、右よし……後ろよし、前よし、ついでに上もよし」


変声した主人公「うん、誰にもみられてないよ、今だ」


 腰に巻いていたサイドバッグに手を近づけていき、備わっていたチャックをつまむ。


 それを今度は横に引っ張っていき、サイドバッグが奇妙な悲鳴を上げながら大きな口を開いていった。


 口の中に手を突っ込み、中から二つの品を掴み取る。


 小瓶と筆だ。


 液体が詰まった小瓶の蓋を軽く握り、回して開けていく。


主人公「ふんぬっ」


 そして、筆の先端を小瓶の中に貯まっている池に水没させていった。


 それからすぐに筆を引き抜いて、前方の道路に向かって筆を左から右に思い切り振るっていく。


主人公「そ~れっ!」


 筆先から飛沫が飛んでいき、路上に散布されていった。


 道路の随所が液体に濡らされて濃い灰色に変化していく。


 そして時間が経つと徐々に白い線が描かれ始めていった。


 どうだ、すごいでしょ。


変声した主人公「うん、元通りになったね」


主人公「これで車を運転する人も歩く人も目安が分かって安心できるね!」


 私は腰に手を当てて、胸を張ってみた。


 太陽の光がまるで賛美するかのように一人の女性と道路を明るく照らしていく。

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道路の白線が消えているので、代わりに私が描きます !~よたみてい書 @kaitemitayo

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