106『深夜食堂』と、おぼろげな記憶


 『深夜食堂』は好きなドラマですが、原作は漫画です。漫画も最初の方を読んでみたのですが、ドラマのような「うら寂しい」雰囲気はありません。


 なぜドラマの方が「うら寂しい」感じがするのかというと、それはおそらくオープニング・テーマ曲の印象だと思います。


 ドラマが始まったのが2009年なので、その頃の東京の夜景がオープニング映像にずっと使われているのだと思いますが、その夜景をバックに流れる歌が、とても寂しく感じられます。


 この歌『思ひで』を歌ったのは鈴木常吉さんという方で、2020年7月6日に亡くなられてました。


 私は長く洋楽(※西洋音楽)を聴いていたせいで、歌詞を聴かない癖があります。そのために、何度も聴いているのに、何を歌っているのかわかりませんでした。

 それで歌詞を検索してみたのですが、なんというか、これはポエムなのだとわかりましたが、ちょっと解釈が難しいですね。


 さて、この曲がバックに流れるオープニングは、タクシーから見た、あるいは高所から見下ろした東京の夜景です。私が最後に東京へ行ったのは、15、6年前だったと思いますので、その頃を思い出してしまいます。


 映像に映っているストリートは、今はどうなっているのでしょうか。パチンコ店が多いような感じですが、きっと今は変わってしまっているのでしょう。


 そう考えると、なぜかとても怖ろしく感じます。時代が変わり、風景も変わってしまうことに、恐怖を覚えてしまうのです。




 3月でしたか、車で隣の市へ出かけたのですが、確か郊外のこのあたりに、昔本屋さんがあったなと思いました。その本屋へは何度も行ったはずで、夢にも見たりしたのですが、今は跡形もありません。


 あまりにも変わってしまったものですから、「あの本屋は本当にあったのだろうか?」とまで思ってしまいました。それこそ全部夢だったのではないかと。


 かように年寄りの記憶は、段々おぼろげになっていくのです。私はそれが怖くてたまりません。



 ちょっと暗い話になってしまいましたね。『深夜食堂』の話に戻りましょうか。


 『深夜食堂』の中で一番好きなエピソードは、第14話の「煮こごり」ですね。

 以下、ネタバレです。





 「めしや」で出会った男女、男は弁当屋に勤め、女は親の借金を返すためにソープ嬢として働いていました。


 女は勿論そのことを隠していたのですが、男はそれを知ってしまいます。


 男は母親が倒れたため、実家に帰って店を継ぐ決心をし、最後に「めしや」を訪れます。


 その時女も「めしや」を訪れ、マスターに「ようやく男と別れた。お祝いして」と言います。それはつまり、借金を返し終わって店をやめてきた、という意味でした。


 それを聞いた男は、実家に帰るのでもう東京へは来られない、ぜひ田舎へ遊びに来てくれないか、と女にお願いします。


 1年後、「めしや」にハガキが届きます。裏面には写真が印刷されていました。

 「めしや」と書かれた提灯と、作務衣さむえ姿の男と、女将おかみさんになった女。笑顔の二人がそこにいました。


 「勝手に『深夜食堂』の支店と名乗らせてもらってます」という文章とともに・・・。



 ・・・思い出しても泣けてきます。



●本日の猫


 ハチコの5匹の子のうち、ハチコと同じ白黒のハチワレはハチオだけです。


 ハチオが大きくなってからは、ハチコと見分けがつきにくいのですが、良く見ると腰のあたりにうっすらと白い線があります。


 顔もよーく見ると、どこがどうとはいえませんが、ちょっと違っています。強いて言えば、ハチオの方がちょっとふてぶてしい顔つきをしています。


 そのハチオ、最近ハチコともども私の手をよく舐めに来ます。


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