99 好きな小説「雪の断章」


 やっていそうでやっていなかった「好きな小説」の紹介です。


 好きな漫画、好きな映画、好きなドラマは何度か紹介してきましたが、「好きな小説」は今までやっていませんでした。


 でもそれっぽいのは一度ありましたね。漫画として紹介した『百億の昼と千億の夜』です。この作品は光瀬龍先生の小説が原作で、私は原作も読んでいたのです。


 ところが、私は社会人になって以降、ほとんど小説を読んだ記憶がありません。それで、好きな小説を紹介するとなると、それ以前に読んだものになりますが、実はストーリーを覚えているものがほとんどありません。


 おぼろげながらでもストーリーを覚えているのは、

・アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』と『2001年宇宙の旅』

・W・H・ハドスンの『緑の館』

・マイクル・コーニィの『ハローサマー、グッドバイ』


 そして今回紹介する佐々木ささき丸美まるみさんの『雪の断章』ぐらいのものです。


 光瀬龍先生の『たそがれに還る』なんかは、読んだ記憶はあるし、凄い話だったとも記憶しているのですが、肝心のストーリーは全く思い出せませんね・・・。




 さて、佐々木丸美さんは(※今まで作家に限らず著者には「先生」をつけて紹介してきましたが、今回はさん付けとすることをお許しください)、2005年に56歳の若さで亡くなられました。ウィ〇ペディアによると、死因は急性心不全とのことです。とても残念なことでした。


 『雪の断章』は佐々木丸美さんが26歳のときの処女作で、1975年に発刊されています。1985年に斉藤由貴さんの主演で『雪の断章-情熱-』というタイトルで映画化もされていますが、そちらの方は「なんか違うっぽい」感じがして観ていません。


 今回、本棚を整理していてこの本を見つけたのが紹介するきっかけになったのですが、上下2段に小さな文字で224ページに渡って印刷されたこの小説を、私は中学生の時に徹夜で読み明かしたと思っていました。


 ところが私が持っている本は1979年の第10刷であり、その当時私が中学生だったはずがありません。高校生ですらない。成人しているじゃありませんか。


 どうしてこんな思い違いをしていたのか、さっぱりわかりません。ですがそこは本題から逸れるので、やめておきましょう。


 この小説は昭和の時代に書かれたものですので、今では倫理的に考えられない設定になっていることをお断りしておきます。


 また、もう一度読み返したわけではないので、所々違っていることもあるかも知れません。何しろ全てがうろ覚えなので、勘弁してください。


 話の中で殺人事件が起こるので、分類するとこれはミステリーになるのかも知れませんが、それよりも「秘めた恋」の物語といった方が合っているでしょう。


 ストーリーはというと、当時「孤児院」といわれていた施設(今でいう児童養護施設)から、少女が大邸宅に引き取られていきます。しかしその家では引き取り手からもその子どもからもいじめられ、少女は家出してしまいます。


 その時、施設時代に迷子になったときに世話になった「お兄さん」と再会し、少女は帰りたくないと駄々をこねて、「お兄さん」のアパートで一緒に暮らすことになります(少女は小学生になったばかりで、「お兄さん」とは20歳近く年齢差があったと思います。)。

    ↑

 この辺が今では倫理的にあり得ないところなんですが、当時はそうは思わなかったですね。


 以下、ネタバレになります。





 少女は成長し、やがて「お兄さん」の友人から告白されます。(←この辺、かなり曖昧)


 そしてその友人の転勤に伴い、一緒について行くことにします。ですが、少女の想いは実はずっと「お兄さん」の方にあるのです。


 これ以上「お兄さん」に迷惑はかけられないという思いが、彼女にそうさせるのです。


 一方「お兄さん」の方はというと、以前少女と喧嘩になったときに、少女から「偽善者」と言われたことが十字架となっていて、いつか自分の手元から羽ばたいて行くのを親代わりとして見守らなければならないと、使命感を持っていたのでした。(←この辺もかなり曖昧)


 要するに二人は両思いだったのですが、なかなかその思いは成就しません。この小説は少女の目線で書かれているので、読んでいる間はずっとハラハラし通しでした。


 最後、二人はようやくプラトニックに結ばれます。「お兄さん」はずっと少女の親代わりだったので、二人がもう一度他人に戻って付き合うところから始めなければならないと、まず別居するんです。


 微笑ましいほど清々しい結末です。殺人事件もあったし、犯人がアレだったんで、清々しい結末というのとはちょっと違ったかも知れませんが、私の印象はそうでした。


 思えばこの小説での「年の差恋愛」、気づかないうちに私の拙作「グレイトヒーローズ」(※今は非表示にしています)にも影響を与えていたんですね。まあ、あの作品ではプラトニック・ラブではなくてエロティック・ラブだったのですが(^_^)。


 ウィキ〇ディアによると、佐々木丸美さんの著書は17冊なんですが、確か全部買ったはずです。(でもおそらく半分くらいしか読んでいない)


 著書のほとんどの表紙に味戸あじとケイコさんのイラストが使用されているのも気に入っています。味戸さんの画集もほとんど買ったと思います。

 さだまさしさんの『風見鶏』と『私花集』のジャケットイラストを手がけた人です。


 ところで『雪の断章』の本のカバーに、「著者紹介」として佐々木さんの住所まで書いてあるのにはたまげました。さすが昭和の本です。



●本日の猫


 おそらく私のことを好きでたまらない猫、に対して、私をよくおちょくる猫。


 チャチャとドンマイですね。


 チャチャは私が猫のトイレ掃除をすると、スコップに猫パンチを浴びせてきます。


 以前にも書いたと思うんですが、ドンマイは箪笥の上からしょっちゅう私の頭をポンポンと叩きます。(その仕草が命名の由来です)


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