43 好きな漫画⑦「修羅の門」
『修羅の門』は川原正敏(かわはら まさとし)先生の作品で、月刊少年マガジンに1987年から1996年まで連載された後、続篇の『修羅の門 第弐門』が2010年から2015年まで連載されました。
1990年に第14回講談社漫画賞(少年部門)を受賞しています。
当時は確か格闘技ブームで、テレビ放送もあり、私も良く観ていました。
ここでは便宜上、『修羅の門』を『第壱門』、続篇の『修羅の門 第弐門』を『第弐門』と表現することとします。
この作品は、一子相伝の架空の古武術・陸奥圓明流(むつえんめいりゅう)の継承者である陸奥九十九(むつ つくも)が、実戦空手の「神武館(しんぶかん)」に道場破りに現れるところから始まります。
その後、全日本異種格闘技選手権、プロボクシング世界ヘビー王座統一トーナメント、ブラジル柔術主催のヴァーリ・トゥード(素手で戦う格闘技で、総合格闘技の原型)地上最強決定戦と、戦いの場がスケールアップしていきます。
陸奥圓明流が1000年の間無敗という設定なので、主人公が負けないことは最初からわかっているのですが、そうだとしても唸らせられるほど壮絶な戦いが描かれています。
『第壱門』で九十九は、戦いの中で3人の格闘家を死なせてしまいます。一人目は実の兄で、河原での練習中のことでした。これは事故といって良い状況だったと思います。
二人目は全日本異種格闘技選手権の決勝戦で、陸奥圓明流の分派である不破圓明流(ふわえんめいりゅう)の継承者でした。このとき彼は、九十九を殺しにかかってきていましたので、九十九は奥義を超えた超奥義で迎え撃った結果、死なせてしまいました。
三人目はヴァーリ・トゥード地上最強決定戦の決勝戦で、両腕が使えない状況ながら、グラシエーロ柔術の最強の使い手、レオン・グラシエーロを超奥義で倒します。ところが相手は何度も立ち上がり向かってきて、セコンドも決してタオルを投げ入れようとしません(タオルをリングに投げ入れるのは、「降参」を意味します)。
結果、九十九はレオンを何度も倒さなければならなくなり、レオンは絶命してしまいます。
このことについて、読者から批判の便りがあったことを、作者は明かしています。
「なぜ殺すまでやる必要があった?」「人殺しが一番強いなどと言わないで欲しい」といった内容だったそうです。作者には、それがとてもショックだったといいます。
作者は、最初はレオンを死なせるつもりはなかったそうです。ですが、描いているうちに「あっ、これは死ぬな・・・」と感じたといいます。それはレオンが貧民たちを助けるために、どうしても優勝賞金が欲しかったからです。
セコンドも、レオンが戦うことをやめないのにタオルを投げ入れることはできないと、泣いて堪えます。作者はそれで、レオンを死なせるしかなかったそうです。
物書きの端くれの底辺にいる私ごときがいうのも何ですが、私も最近同じような経験をしました。作品の主人公が勝手に自己主張を始めて、物語の結末を変える。続篇を書けと言い出す。
不思議なことですが、そういうこともあるのでしょう。
しかし川原先生は、それで連載をやめてしまいました。『第弐門』として連載を再開するのは、それから14年後のことでした。その『第弐門』で、作者は『第壱門』で残された伏線を見事に回収して終わらせました。
ですからおそらく、さらなる続篇はもうないのではないかと思います。もっとも、姉妹編である『修羅の刻(しゅらのとき)』と異世界編ともいえる『修羅の紋』は、不定期掲載ですがまだ続くでしょう。
最後に私が「超奥義」と表現した部分について補足します。この方が手っ取り早く理解していただけると思い、こう表現したのですが、原作にはこの言葉は使われていません。
原作での表現は「四門(死門)」です。「四門」は奥義を超えた存在であり、言い伝えに過ぎませんでしたが、九十九によって初めてその門が開かれたといいます。
「四門」の先に「朱雀(すざく)」「玄武(げんぶ)」「白虎(びゃっこ)」「青龍(せいりゅう)」という四つの技があり、『第壱門』では「朱雀」と「玄武」が披露されました。
これらはまさに名が体を表した技であり、感心させられました。特に「玄武」は、これぞまさに、といった型でした。
それで残りの「白虎」と「青龍」がどんな技なのか想像を働かせましたが、それは『第弐門』においてようやく披露されました。これもまさしく技名のとおりの技で、見事というほかはありませんでした。
●本日の猫
「なめこ」はご飯の時間になると、ガラス戸に体当たりしてアピールします。とてもデカくて重いやつなので、早くあげないとガラスが割れてしまいそうです。
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