急接近③
いつの間にやら、ポツンと2人きりで広場に取り残されたマリアンヌとノア。
「なんとか、切り抜けられたのかしら⋯⋯?」
「うん。義姉さんのおかけだよ、ありがとう」
「一時はどうなることかと思ったけれど、なんとかなって良かったわ。⋯⋯あら? ノア、頬が赤くなってるわよ」
マリアンヌはノアの頬に鮮やかに咲いている3つの見事な紅葉を指して言った。その言葉に、ノアは参ったというように頬をさすりながら苦笑いで答える。
「ああ⋯⋯うん。⋯⋯あの子たち本気で叩いてきたから⋯⋯」
すっかり人が居なくなり、先程までの賑わいが嘘のように閑散とした広場でマリアンヌとノアは顔を見合わせて笑った。
✳︎✳︎✳︎
「義姉さんに迷惑かけたお詫びに、ここは義姉さんの好きなもの何でも奢るよ」
ひとしきり笑った後、マリアンヌはノアに連れられて、活気溢れる街中でも比較的目立たない立地にある隠れ家的カフェに来ていた。
「うわ〜っ! どれも美味しそうだねっご主人さま!!」
ガラスのケースに行儀良く並べられたケーキを見るや否や、今まで事の成り行きをただじっと見ているだけだったアスモデウスがわっと声を上げた。
マリアンヌはそんな彼をジトリと恨みを込めた視線で見つめる。
「わーっっ! ご主人さま、そんなに怒らないでっ!? さっきは僕の出る幕が無かっただけだからっ」
(アスモデウスったら、いったい私がどれだけ肝を冷やしたと思ってるのかしら⋯⋯!?)
未だアスモデウスの裏切りを引きずるマリアンヌは、おろおろとする彼を無言で見つめる。
「だって、あの3人も中々整った顔立ちだったけどそれ以上にご主人さまが————」
「⋯⋯⋯⋯?」
マリアンヌはアスモデウスの言わんとしている言葉の意味を理解出来ずに首を傾げる。マリアンヌの反応にアスモデウスはため息を吐いた後、「ご主人さまはそのままでいて⋯⋯」と呟いた。
「とっ、とにかく! 美しきは最強ってことだよ、ご主人さまっ!!」
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