急接近②
「⋯⋯アンタみたいな女が、なんでこんなロクでもない浮気男と付き合ってんのよ」
見るからに気の強い女性がマリアンヌに声を掛けてきた。突然のことに驚きを隠せないマリアンヌは戸惑いながらも口を開く。
「⋯⋯え? わ、私は————」
「それは⋯⋯! 僕のつまらない意地が原因なんだっ!!」
しかし、マリアンヌの声を遮るようにしてノアが話し始めた。
「実は彼女————マリアとは、些細なすれ違いが原因でケンカしてしまったんだ。⋯⋯それで、悪いことだとは分かっていたんだけど、寂しさを埋めるために君たちに声をかけてしまって⋯⋯」
「「「「!!」」」」
3人の町娘だけで無く、マリアンヌまでもが息を呑む。何故なら、何の打ち合わせも無くノアが事実無根の出鱈目を口にしているからだ。
「サイッテーね!!」
「彼女がいるのに声かけるとか信じらんないっ⋯⋯!」
「そうよそうよ! このクズ男っ!!」
ノアの言葉を聞いた後、しばらくの間その場で凍り付いていた3人だったが次第に我に返り、口々に彼を責め立てる。
しかし、表面上は深刻そうな顔をしてはいるものの肝心のノアにはどこ吹く風で、ここぞとばかりに顔を寄せて迫ってきた。
「一時は気の迷いで君たちに声を掛けてしまったけど、僕はマリア一筋さ。⋯⋯ね、マリア?」
「え、ええ。そうね⋯⋯?」
ふいっと顔を逸らしながらそう答えると、細身のノアからは考えられないような力でグイッと強引に腰を抱き寄せられる。
ピッタリと意外にも逞しい身体付きをしている彼と密着する形となり、マリアンヌは内心、心穏やかではいられなかった。
(ノア⋯⋯! いくらなんでも近すぎるわっ!!)
恥ずかしそうに頬を赤らめるマリアンヌを穴が開くくらいに見つめる3人の町娘たち————。
曲がりなりにもフレディ公爵に見染められた美貌を持つマリアンヌに叶う女性はそうそういる筈もない。
圧倒的な美しさを前にして怒りを鎮められた3人は、それぞれノアの頬にビンタを食らわせた後、「あいつに飽きたらもっと良い男紹介するわよ」と言い残して颯爽と広場を去っていった。
騒ぎの中心人物であった3人が帰ると、広場に集まっていた野次馬たちも次第にその場を後にする。
いつの間にやら、残ったのはマリアンヌとノアだけだった。
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