密やかに重ねる逢瀬①
アスモデウスの策略により、マリアンヌとセオの距離は順調に縮まっていた。
2人は後ろめたい気持ちから目を背け、毎日のように人目を忍んで書庫へと通っている。
「セオ! 貴方の教えてくれた本、今回もとても面白かったわ!」
「それは良かった。義姉さんが勧めてくれた本も面白かった。主人公が意中のヒロインから辛辣な言葉をかけられるところでついつい笑ってしまったよ」
そう言ったセオはマリアンヌの勧めた小説の内容を思い出したのか、クスリと笑みを
出会った当初のセオは、頑なにマリアンヌの瞳を見ることなく、微妙に視線が合わない2人であったが、今では真っ直ぐに視線を合わせて話すようになり笑顔を見せることも増えていた。
セオの好きなものをきっかけとして徐々に心の距離を縮めていったマリアンヌは、確かな手応えを感じていた。
今日もマリアンヌとセオの2人は書庫に集まっていつもの長椅子に座り、時々会話を交わしながらお互いが選んだ本を読んでいる。
しかし、今回彼から勧められた本は、マリアンヌには中々に難解なものだった。そのため、分からないところは逐一セオに質問しながら読み進めている。
(この文章、どういう意味かしら⋯⋯?)
再び理解が難しい文章に遭遇したマリアンヌは、集中するセオに話しかけようと身を乗り出してグッと彼に近づく。
「ねぇ、セオ。ここって⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯どうしたんだ?」
すると、マリアンヌの声に反応したセオもすぐにマリアンヌの方を向いた。
「「!!」」
2人は息を呑む。
それもそのはずで、マリアンヌの目の前にはセオの顔が迫り、唇が触れてしまいそうなほどの至近距離まで近付いていた。
「うわっ⋯⋯!?」
「きゃ⋯⋯っ!」
しかし、我に返ったセオが後退ろうとしたところバランスをくずしてしまい、彼はマリアンヌに覆い被さるようにして倒れ込んでしまう。
そのことをマリアンヌは特に気に留めることは無かったが、セオは顔を真っ赤にして起き上がり、無罪を主張するかのようにバッと両手を高く上げる。
セオの身体が離れても尚、マリアンヌには、バクンバクンと彼の心臓が激しく脈打つ音が聞こえていた。
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