崩壊した世界で願いを守る

リネット

プロローグ


 2×××年××月××日、突如その化け物は発生した。人の3倍ほどの大きさと強靭な力、禍々しいとしか言い表すことのできない黒い体を持つ化け物は人の「願い」を喰らい、その勢いは収まることを知らない。願いを喰われた者は自我を失い化け物となり、また新たに人を襲い始めたのだ。


人々はそれを死者の国の神「ハデス」と名付けた。


ハデスはその名に恥じることなく、何十、いや何百万もの人を襲い世界を崩壊させた。大都市や政府でさえもその力に争うことはできず、次々と都市は機能を失い法は意味をなさなくなった。


そしてたったの1ヶ月で人口はおよそ10万分の1となり、2000年以上かけて人類が築き上げた文明や文化、その他多くが世界から一瞬で消え去った。また、家族や仲間を亡くした人々は生きる意味を失い、そして次第に希望を失った。


しかしそんな中、まだ希望を捨てていない都市がある。その都市は街の周りに防壁を築き、ハデスに対抗できる力を持つ選ばれし者が壁の内外のハデスを倒すことで人々を守っていた。そうして人々は壁の外に出ることを禁止される代わりに、ほんの少しの平和を約束されたのである。


そしてその都市を守り、選ばれた者だけが入れるその組織の名は「ヴィーナス」と言う。

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