夕飯


「フェン。貴方が捕ってきた魔獣の解体手伝ってくれる?」

「ああ。お易い御用だ」

「助かるわ。私は皮を剥ぐから、終わったら、部分ごとに解体して」

「うむ。分かった」

 フェンの身体が綺麗になった後二人はその場で捕れた獲物の解体作業に入った。

 まずは、レイがナイフで獲物の皮を丁寧に剥いでいく。彼女の使うナイフの素材は、ミスリルと呼ばれる希少鉱石。加工すると切れないもは無いと言われるほど、とても切れ味の良い刃になると言われている。とある町の鍛冶職人として有名なドワーフ族の一人が彼女のためにと、特別に作ってくれたものだ。毛皮は高く売れるため、綺麗に掃除して魔法収納マジックボックスへ。


 皮が剥げれば、次はフェンの出番だ。

 彼お得意の水魔法を状態変化させ氷にし、鋭く尖る爪に纏わせる。そしてナイフ代わりにその足を、素早く解体する場所目掛けて振り下ろす。素早く下ろすことで肉を凍らせずに解体することが出来るのだ。

 二人は、手慣れた手つきで作業を進めていく。


 作業は、1時間もかからずに終わった。

「みんな、食材もそろったし、そろそろ帰ろう」

「ああ」

「うん」

「僕おなかすいた~」

 彼女の呼びかけに、フェンたちはそれぞれ返事をした。


 レイは木の実などが満杯に入ったかごを背負い、フェンは頭にルビーラビットを乗せ(ルビーラビットが乗ったと言った方が正しいか)、セレリスはレイの隣に寄り添って全員で帰路をのんびりと歩く。

「夜ご飯まで時間があるから、家に戻ったらおやつでも食べる?」

「食べる!」

「あたしも食べる!」

 その言葉に反応したのは、ルビーラビットとセレリスだ。

 フェンの頭に乗っているルビーラビットは、ひょこっと嬉しそうな顔を覗かせ、レイの隣にいるセレリスは、小さな耳をパタパタさせ嬉しさを体現した。

「何作ろうかしら。マフィン、クッキー?」

 レイは、ぽそっと何を作るか独り言を呟いた。


 採集から家に戻ってきたレイたち。

「おかえり〜」

 帰宅したレイたちに声をかけたのはコハクだ。毛繕いをしながら、彼女たちの帰宅を出迎えた。

「ただいま。すぐ夕飯の準備するね」

「うん!」

 

 日が沈み、空が薄色に染まり始めた頃、庭が香ばしく焼けた肉の匂いに包まれていた。

「お?出来たか?」

 肉の匂いにすかさず反応したのはフェンだ。

「ええ。今、皆の分取り分けるわね」

 レイは魔法収納から一人掛けのイスとテーブルを取り出し、自分の食事を並べた。次にフェンや、コハクを含む黒ヒョウたちにステーキを分け、ルビーラビットやセレリスたちには木の実のサラダを用意した。

「早く食うぞ」

「はいはい。それじゃ、自然の恵みに感謝を」

「「感謝を」」

 そうして各々、食事を摂り始めた。


「はぁ~。食った、食った」

「おいしかった!!」

「そう?良かったわ」

 食事を終えたレイたち。お腹が満たされたのかほとんどの者たちが既に寝ていた。

 起きているのは、レイとフェンだけだ。

「(ぐっすりね)」

 丸くなって寝ている森の仲間たちを見て、彼女は小さく微笑む。

「さて、明日も早いし、後は湯あみをして寝るわ。」

 レイは準備したイスとテーブルを、魔法収納マジックボックスに戻しながら、フェンに声を掛けた。

「私も腹が満たされたことだし、寝るとしよう」

「おやすみなさい。また明日」

「ああ。おやすみ」

二人は挨拶を交わし、それぞれの夜を過ごした。


空は満天の星がきらきらと輝いていた。

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