第37話 キョウカイニヒソムクマ

神龍教会は第四層のブライドン海岸にそびえる

岸壁の上にあった。打ち寄せる白波が岸壁を

這い上がり砕かれる様は今はここを去った神を

待つ祈りにも見えた。


カゲル達はジャングルの神リオの許可をもらい第四層への渡航を許された。現在のアースファビオなる世界は五つの平行世界により成り立ち

動植物の支配する第五層、神の支配する第四層

悪魔の支配する第三層、快楽が支配する第二層

ファビオの支配する第一層とに分かれているのだ。


平行世界は互いに影響を与え合いながらもそれぞれの角度に小さなヒビを作りながら発展していった。


神龍教会へ向かう道すがら小さな教会をいくつか2人は目にした。バロック様式で過剰に誇張された建築物に竜が巻き付いている歪なそれは一つの形式美の破壊のようにも見えたが、その竜すらも形式の中に埋もれてしまったようにも見えた。


「あそこですね、、。」



オレンジが指差す先にサンピエトロ大聖堂を

思わせる荘厳で煌びやかな神龍教会が海を眺めるように背中を見せていた。


「でかい、、。」


「おっきいのだー!!」


驚くカゲルにはしゃぐナナゴウ。2人は神龍教の誇大広告にまんまと引っかかった間抜けな消費者の面で宙を仰いだ。


「中でヴァズギア様がお待ちです、、。」


案内役を終えた騎士は教会の扉を開け2人を中へ

いざなった。


ギギギ、、


格調高い半円の扉がうめくように開く。

建物に入ると広いエントランスがあり、受付嬢らしき人が出迎えてくれた。教会は会社やコミュニティスペースの側面もあるようだ。


「カゲル様ですね。ヴァズギア様は三階応接室でお待ちです。」


「わかりました。さあ行こうナナゴウ、、。すぐに終わらせてやる。」


カゲルはすでに胸の奥に手を伸ばし戦闘のスイッチを押していた。


受付嬢はエレベーターまで2人を案内してれた。

ボタンを押すと4階で点灯していたエレベーター

はゆっくりと数字を数えながら降りてきた。


4.3.2...


1....


ガシャン!


ウィーン


扉の中にはヴァズギアいた。

次の瞬間にはカゲルはエレベーターの中に引き摺り込まれ、ナナゴウは受付嬢によって抑えられた。


「イタイ!!離すのだー!!!」


手を伸ばすナナゴウ、しかし無情にも扉は閉じていく。


カゲルはヴァズギアによってエレベーターというリングのすみにクリンチ状態で押し付けられた。


「カゲルううう!!!この時を待っていたぞオオオオオ!!!」


パン!!


肘関節で振ったようなボディがカゲルの腹に

刺さる。


「ガッ、、!!ゲプッ。」


その一撃でカゲルは口から逆流した胃液を吐いた。


エレベーターの中は大きな教会に似合わず、意図的に小さく作られていた。


「シッコクノツカイを出してみろよカゲルゥゥ!!この狭さじゃぁ剣は振れねえだろウウウ!!振ってもクリンチしてしまいだ!

俺はじっくり、、!!」


ボコォ!!!


腹がえぐられた。


「げええええええ!!!」


エレベーターの地平はカゲルの吐瀉物によって覆われ、酸性と悪臭の世界が生まれた。


「これが俺の革命だァァァァ!!くたばれ

カゲルウウ!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねエエエエエエエ!!!」


コーナーに押し付けられてありったけのラッシュをカゲルは受けた。顔は3倍にはれたらこ唇

の醜男となり、体は黒いあざだらけになった。


崩れ落ちるカゲルをヴァズギアはコーナーに押し付け、倒れることも許さずボディで突き上げた。


「意識飛んでんなぁぁ!!カゲルウウウ!!!

あの世までぶん殴ってやるよおおおおお!!!」


復讐の巨グマは涎を撒き散らした。




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