第2話 カゲトオドレ

背中に何かが触れた。正確に言えば誰かだ

カゲルが死に触られた瞬間

その誰かもカゲルに触れたのだ。


それは生との別れを惜しむ生命を

奈落に突き落とす悪魔のようでもあり

はたまたカオスの濁流の中に

無邪気に引き摺り込む子供にも見えた。


「そうか、こうやって人は死ぬんだな。」

声に似た魂の吹き出しにカゲルは言葉を並べた。


「生命が死ぬ時、俺たちの魂は影に食われるのか」


死のバトンを受け取った刹那、今の今まで

従順に召使の老婆のごとく、足に擦り付いていた影は本性を現し、カゲルの魂に襲いかかっ

た。


それは日光の中を泳ぐシャチのように

カゲルの背中に噛みつき、地中に

連れ去った。


「イタイイタイイタイイタイ!!」


黒曜石のような牙にギリギリと削られながら

カゲルは閃光色の鮮血を流しながら

絶叫した。


魂は内臓をぶちまけカゲルは絶命しかけた

しかし、思った以上に魂というものは

丈夫らしく、痛み続けるしかなかった。


「もう、、やめでぐれ、、もう、、俺は

死んでるんだ、これ以上は、、」


シャチは地中から白黒の顔をだして答えてみせた。


「カゲルうううううう!コレは試験だ!!

輪廻転生のためのなぁぁぁあ!!」


シャチは水中の胴体を大きくしならせて

カゲルに飛びかかった。


カゲルに成す術はない。


シャチは続ける。


「命ってのはなぁ。なくなった時、魂と分離し

輪廻転生を繰り返す!

それはバカな人間どもも知っての通りだ!

だが、誰もがタダで転生出来るなんて

甘い話はねえ!わかるよなカゲルううう!

死んだらテメェの影と喰いあって生き残ったヤツだけが転生出来る!

つまり、テメェはオレをやらねえことには

転生出来ねえってことだ!

そして、俺がお前に負けることはネェ!!」


シャチに咥えられたままカゲルは

指ひとつ抵抗できなかった。


「テメェには踊ってもらうぜ」

不適な笑みを浮かべながらカゲルを噛み締めた

後、尾ビレで豪快にカゲルを空へ放り投げた


バシィぃ!!


上空200メートル程まで飛ばされた後

カゲルは急降下して地に突き刺さった。


バキイイイ!!


「踊れカゲルゥ!!頑張れダンスだ、腰を振れ!」


二発目


バキイイイ!!


三発目


ボキいいい!!


カゲルは魂のまま気絶した。


悠々とシャチは泳ぎ、無力な魂の前に

口を開けた


「そんじゃあぁあああ


いただきまあああ」




「チュン」



ヒヨコのような声の主はシャチ本人だった


シャチの脳天には穴が空き、ドロドロとした

黒色の血液が噴出した


「あでぇぇえええええええ?」


「協力プレイありなんて聞いたねえええぞ」


そう言って絶命したシャチは奈落に落ちていった。影の海の王者の肉に魚が群がり

数刻で骨も残さず彼は消えた。






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