頁04:神とは 1
「えっ……? あ!? あれ、私───」
「ああ、うん、そう、死んだよキミ」
「はぁ!?」
「死んだって──」
ここに包丁が、と我ながら間抜けな台詞を
「──無い…」
腹部に垂直に立っていた包丁も、背中にあるはずであろう傷も痛みも、刺されて切り裂かれていた服の切り口すらも。
「うん、要らないしネ」
何を言ってるんだろうかこの人は。
大きく深呼吸をし、何とか気持ちを冷静に
私とこの人物以外、何もない。
地平線まで一切
たった二色だけで表現されたのっぺりとした世界に、私はいる。
自分の
ちなみに謎の彼が着ているのは茶色が
※そうじゃない大学生の皆さんは申し訳御座いません。※
「ビックリしたっしょ? 世界を
「は…? 世界? トラック??」
私の反応になぜか驚く様子を見せる。
「ちょ、えっ? まさかトラック知らない系? うっそマジで!?」
「いや、トラックは分かりますけど」
「だよねぇ! あっひゃっひゃっひゃっ!!」
なぜか爆笑する。何が
「オレも説明とか苦手でさァ、要点だけチャチャっと説明するけど、とりあえず何百年もかかってやっと世界の下地が完成したんだけどネ、細かい設定とかが全然決まってなくてさァ。ぶっちゃけ人類が最低限度の文明の中で原始的な生活をしてるだけって状態なのヨね」
#__i_f86878f5__#
何? 何の話をしているの?? 下地? 設定? 私が死んだって件はもう説明無し?
「オレちゃんがやらなきゃならない事らしいからオレちゃんにしては珍しく真面目にコツコツやって来たんだけどさァ、もう無理。マジ限界。頭あっぱらパーン状態。生態系なんて適当に【種】散らしておけば星が勝手に修正してくれるから楽だったけどさァ、歴史だ文化だ魔法だってのを考えるのダメなんだよねオレちゃん。考えるよりは誰かが作ったのをプレイするのが専門だったし? だからその辺のメンドクサイのをキミに───って…え、何? 何だって??」
目の前の多分人類だと思われる存在から吐き出される言葉は、単語の一つ一つの意味こそ分かるものの、何について話しているのかが私には理解が追いつかなかった。
理解出来ない空間で理解出来る単語が理解出来ない文章に変わる。
その奇妙な
「……マジで? チョット確認するわ」
ここでようやく私の反応がおかしい事に気が付いた様だ。いや、彼の
「…もしかもしてもしかもするとだけどサ」
どういうかもしだろう。
「どういう状況か…まさか分かってない、とか?」
「分かりません」
「オイいいィィィィィィ! マジかよぉぉォォォォォ!! うわああああぁぁぁァァァァ!!!」
彼は両手で顔を
そんなに
すると私の心が通じたのか彼はピタッとローリングを止め、私を見る。
#__i_89e03514__#
「ざけんなおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
とうとう遠くの方に向かって切れた。
叫びが山びこの様に何度も響き渡る。山も無いのにどうやっているのだろう。変な空間だ。
「ハァ…ナンテコッタイ」
「キミ、令和の日本で生きてたんでショ? それとも山の中で人知れず修行とかしてたの?」
「…スーツ着てますけど」
「デスヨネー!」
「つまりオレちゃん、とんでもないレアキャラを釣っちゃったってワケか」
「レア…キャラ?」
ガクッと
「レアって表現も分からないモンな…。まさかあの時代のワカモノでこんなガラパゴス人間がいるとはなァ」
「…すいません」
ガラパゴスという表現で何となく馬鹿にされてるんだろうという雰囲気は理解できた。
反論したい気持ちもあるが、何が何だか全く分からない以上はとにかく現状の理解を優先すべきと悔しさをぐっと飲み込む。
恐らく彼が私に対して共通の知識として求めたのは、私が思春期に至るまで両親によって
「しゃあねぇ、
どこに向かって喋ってるんだろう。
(次頁/04-2へ続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます