頁06:選択された歴史とは 2

       








「………あぁ?」


 何を言われたのか分からず、固まる彼。


「……ゲーム? 面白い? 生きる実感? そんなものの為に奪われる命があるって? 仕方ないって…アンタが生み出した人類だろう!! 命を何だと思ってんだ!!!」


 こんなに大きな声が出たんだな、私は。

 そういえばここまで激しく怒りをあらわにしたのはいつ振りだっただろうか。もしかしたら初めてかもしれない。

 彼は私を冷たい目で眺め、何かをさとったかの様に瞳を閉じ、息を吐いた。


「───あの~、何でキレてんの? 超ウケるんですけどw」


 まとう空気が変化する。構わずに続けた。


「アンタの趣味に付き合わされて殺される人がいるなんて黙っていられるか! 今すぐ取り消しなさい!」

「いや無理w 一度実行した選択肢は取り消せないんだわww」

「そんな…!」


 彼は手にした本を閉じ、背後に向かって投げ捨てる。落下する直前に本は消えてしまったが、その光景に驚くのは後回しだ。


「キミさ、何が不満なの? この星だってオレが頑張ったからこうして存在してんだヨ? オレが作ったモノをオレがどうこうしようが勝手じゃね?」

「それでもその星で生きてる人達はアンタの事なんて知らない。知らないけれどみんな必死に生きてるんでしょう? 死にたいと思いながら生まれてくる人間なんていない! 単に生きる実感を得る為だけに死と隣り合わせにある日常なんて、そんな世界…マトモじゃない!!」


 自らの声の余韻よいんの中、しばらくにらみ合う。


「ふ~ん、そっか。じゃあ仕方ないよネ」


 少し、困った様な表情で彼が呟いた。

 私はそれを理解してくれたものだと早合点した。そう、私は油断したのだ。


「んぐっ!?」


 全身が───足元の白い地面に吸い込まれる様に前のめりに叩きつけられる。

 すんでの所で顔面が激突するのは防いだが、私という体についているパーツというパーツが髪の毛一本に至るまで私を地中に引きり込もうと重さを課してくる。支える物の無かった眼鏡が先に落下しバウンドもせずに地面に張り付き、細い金属のフレームがゆがんだ。

 私を拘束しようとする髪を無造作に束ねて私の頭を吊り上げた彼が、にこやかにこちらを見ていた。




「生きる実感を得る為に死と隣り合わせにある日常はマトモじゃない、と。まあ確かに一理あるよね♪」





 ◇◆◇◆◇◆








   (頁01を経て、頁07ー1へ続く)







       

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