頁03:私とは 1
大学を卒業後、私は就職した。『正しさとは』を追求する為に公務員の道も考えはしたが、両親の迎えた結末、それを間近で見せられていた自分がいつか同じ道を
就職先は大企業にこそ名を
私は相変わらず人と深く関われず、同僚からは
早すぎるという違和感は正直あった。
けれど限りなく会社の
「社長、お
「社長、今週のスケジュールを
「社長、○○部の××部長ですが、部下へのハラスメントが問題になっているとの報告が上がっております。社員全体のモチベーションに関わりますので
「社長、大変申し上げにくいのですが……とある収支報告書に不審な点を見つけまして…。その、該当案件を担当管理しているのが……奥様でした」
自分でも明らかに
私はそれが『自分の正しさが認められたのだ』と思い込んでいた。
だが、現実は善悪よりももっと
目の前には呼吸を荒くした社長が私の顔のすぐ横の壁に腕を立てて
「───これは何の真似でしょうか、社長」
どういう状況かくらいは恋愛経験が
私の冷静な言葉を虚勢と勘違いした社長は更に興奮したのか
「分かってるだろう? もう限界なんだよ…! 君も人が悪い。いつでも君の方から来られる様にお
「何の事だか分かりません」
冷たくあしらった言葉をなぜか嬉しそうに噛み締めて社長は含み笑う。
「そうやって強がっている姿が実にそそるんだよ…! 本当は今すぐにでも僕の胸に飛び込んで
想像力だけは作家級ですね。気持ち悪い。
実際の所恐怖は一切感じてはいなかった。別に
私は無表情を崩さずため息を小さく一つ。
「奥様はどうされるおつもりですか」
その問いに社長は心底汚い物でも見たかの様に表情を歪めた。
「ハッ! 奴の事なんかもう用済みさ!
「
「うるさい!」
壁についた右手で社長が私のスーツの
その瞬間、頭の中が一気に
(次頁/03-2へ続く)
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