頁02:正しさとは 1
両親はともに公務員で、父は警察官、母は教師。法と
厳格で
同世代の子達が私には絶対に分からない話題で盛り上がっている。子供ながらに友達の輪の中に入りたい欲求はあった。でも皆の会話についてはいけないだろうという不安が付き
学年順位が上がった分だけ孤立感も比例した。普通ならいじめの対象になりそうなものだが、父の肩書と母の
私は勉強しか出来ない自分と勉強そのものを憎んだ。だから勉強を組み伏せる為に勉強した。
父はただひたすら人としての正しさと法を、母は清く生きる事の素晴らしさを。
──まるで壊れた機械の様に
超難関と言われていた高校に成績トップでこそなかったものの難なく入学できた高校1年の時、ある転機が訪れる。
母がまさかの
私は父に付いて行く事を選んだ。同じ女として不貞に走った母への生理的嫌悪感からの簡単な消去法だ。
父は警察官を辞しはしなかったが、確実に何かが壊れていた。
正しさと法について一切語らなくなり、あまり飲まなかった酒に手を出す様になった。
眠れないからか気絶に近い倒れ方をするほど飲んだかと思えば悲鳴の様な叫びをあげて夜中に目を覚まし、しばらく
様子を見に行った私を母と間違えるのか、時に殴られそうになったり、泣きつかれそうになったり、───襲われそうにもなった。いずれも
それなのに朝には夜中の出来事が何も無かったかの様なスッキリとした表情で出勤する。
まだ若かった私はその姿を見て『まあ多分大丈夫なんだな』と思い込んでいた。世の中に同じパターンの話が結末込みでいくらでも転がっていたというのに、ウチだけは大丈夫だとなぜか思い込んでいた。
進学先を決めた高校3年の春、父が倒れた。説明を受けるまでも無く心も体もボロボロだった。修復出来ない程に。
日に日に
勤勉で浪費をしない父の
受験を間近に迎えたある日、父の
何に対してなのか分からない
安心したと思っていない自分がいた。
それから数日、父は目を覚まさなかった。
現役時代は丸太の様に太かった腕も今や私の手の親指と人差し指で作る輪っかの中に通ってしまう程に細くなっていた。
それは
(次頁/02-2へ続く)
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