男子校哀歌 (青春篇)

@J2130

第1話 なんで白…?

 今なら

 体罰、校内暴力、ハラスメント、

 問題行動、倫理違反

 なんて言われてしまいますが、

 当時はまだおおらかだったのです

 いろいろな意味で…


*****


「成田、最上、伊藤! 」

 なんで怒られたのかわからないですが、その3人が大畑先生に授業中に呼ばれ、黒板の前に並ばされました。

「おめえらはまったく! 」


 呼ばれた3人は付属の中学からあがってきた人達です。

 1年生ながらヌシみたいなものです。


 呼びつけた大畑先生もこの高校出身で、

 かつ昔から彼らのことは十分に知っていました。

 腐れ縁の刑事と犯罪者みたいなものです。


「何が起きるのだろう…」

 僕は怖い気持ちで席に座り見ていました。


 殴られるのか…でもそれほど悪いことでもなかったろう…。

 本当によく覚えていなくてすいません。

 生徒が教師に怒られることなどいつものことだったので。

 先生のそのあとの言葉だけは覚えているのですがね…。


「オイ、お前ら…」

 直立不動となる3人の生徒。


「バニラ、レモン、イチゴのどれがいい! 」

 先生の手には

 白いチョークと

 黄色いチョークと

 赤いチョークが握られていました。


 3人とも同じ言葉を返しました。

「バニラでお願いします! 」


 うるさい生徒にチョークを投げるのは中学でもありました。

 でもね…

 高校って怖いですね。


 彼らは“バニラ”をまずそうに少しだけかじりました。


 

「ねえ、チョークってどんな味がする…? 」

 僕は最上に訊きました。


「まじいよ…」

 顔をしかめて応える最上。


「なんで白…?」

 バニラの味なんかしないよね…。


「いつも白にしているよ。黄色や赤より白のほうがまだ体に悪そうじゃないだろう…それだけだよ…」


 それだけだそうです。


 ちょっとそのあと“バニラ”を舐めてみました。


 ええ、おいしいものではありません。


「声がきれいになる」なんて童話がありましたが、3人の声はいわゆる狼のような「男の声」のままでした。



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