世界を彩る七つの国

明璃

第1章物語のはじまり

第1話 七つの国

その世界には七つの国がありました。

いつからその世界が存在するのか・・・現在この世界に生きている住人達の中にはそのことについて知る者は誰一人おらず、またこの世界に残されている歴史書の中にもこの七つの国の始まりについては何も手掛かりは残っていないのでした。


それでも一つだけ言い伝えられていることがありました。

それはこの世界が初めから七つの国で作られていたということでした。


この世界は中央に円の形を描く様に五つの国があり、そしてその円を外側から半分ずつ包み込むように二つの国が存在していました。

中央に位置する木の国、火の国、土の国、金の国、水の国の五つの国があり、そしてその外側にさらに二つの国があるといわれています。


どの国もそれぞれの土地の力の影響を大きく受けており、その地の風土や生活、また人々の気質もそれぞれ独自のものがあり、お互いの交流はごくわずかの交易などの行き来を除いてはあまり交流がない状態が続いていました。


中央に位置する国の一つである土の国に生まれたミアは他国の書物や交易品を手に取る機会があり、小さい頃から他の国の文化に興味を持っていたので、いつかすべての国を旅してみたいと思っていました。

そんな彼女も今では16歳になり、土の国では成人とみなされる年齢になっていたので、旅に出たいという気持ちがこれまで以上に高まって我慢できないほど強くなっていたのでした。


「ああ、もう我慢も限界よ!旅に出たくて仕方ないわ!

この国の人間なら、成人を迎えたら色々と言われずに済むはずでしょう?

それじゃなくたって行きたい所がたくさんあるんだから、のんびりしてたら旅が終わるのがいくつになるかわからないわ!」

彼女は近頃こんなことばかり呟いていたので、その度に家族や幼馴染たちに軽はずみなことをするなと諫められていました。


彼女の暮らす土の国は気候も住んでいる人間たちも穏やかな性質を持ち、安定した国だったので、住んでいる人たちも自分の国を愛し、気に入っている人間が殆どでした。

そのため、彼女の様に他の国へ出かけようと考える人間はあまりいませんでした。

彼女が自分の国を出て、色んな国へ旅がしたいのだと話をすると、大抵は「こんなに過ごしやすく安全な国に生まれて暮らしているのに、なぜわざわざどんなことが起きるか分からない他の国に出かけて行きたいのか」と怪訝そうに言われることになり、彼女の気持ちを理解してくれる人間に出会うことは稀なのでした。


この国にも自国と他国の特産物を売り買いするため、ごくわずかに交易などで他の国を旅することのある人間もいましたが、大抵は商売の為に旅しているにすぎないと割り切っていて、やはり自分の土の国が一番居心地が良いのだと話す者が多いのでした。


こんな環境の中では他の国の事を知ることができるのは大抵は商人からの情報であり、それが彼女にとって外の国の事を知る貴重な機会になっていました。

そんな商人の中でただ一人、ミアにとって大切な情報源でもあり、いつも頼りにしている人物がいました。

その人物は商売の為に一年の間七つの国を巡って旅している人物で、ミアが姉のように慕っている女性でした。

ミアは小さい頃から彼女にいつもせがんで旅の話や、出かけた国の景色やその生活、人々がどんな気質なのかなどを飽きることなく質問して教えてもらっていました。

他国への憧れや興味を強く持つようになったのは、彼女から得た知識の影響が大きかったのかもしれません。


今日もちょうど彼女が旅から帰って来たという知らせが来たので、ミアは、いそいそと彼女がいつも宿泊している宿へと向かったのでした。

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