日常のとある。

南方 華

かなしみのプリン

かなしみのプリン その①

 半年前のことである。

 本作の主人公であるきのみは、普段からお世話になっている方へお返しの品を、某インターネット通販サイトで吟味していた。


「うーん、どれがいいかにゃー」


 きのみは独り言が独り歩きして青春18切符を買って電車に乗り、宛てのない旅へ出るようなやつである。

 今日も絶好調でブツブツとしゃべりながらマウスをスクロールさせてはクリックを繰り返していた。


「これにするかにゃー」


 ちなみに語尾が猫なのは割と多い。

 意図して言っているわけでなく楽だから使っている。

 勿論、人前では使わない。

 使わないはずだが、仕事中、気がついたら「にゃー」と言っていると指摘され恥ずかしい思いをしたのは記憶に新しい。

 そうこうしているうちに、お返しの品を購入かごに入れ、会計を済ませる。

 インターネットは実に便利だ。

 パパパーっとやれば、バババーっと届くのだ。

 ちなみに購入したのは、プリン。

 普通のプリンではなく、糖質カットされていて何らかの理由で普通のプリンが食べられない人でも安心して頂ける代物だ。

 一時代前に比べると、こういった配慮された商品が増えてきた。

 アレルギー対応なども、社会の理解が深まったように思える。


 そんなわけで、きのみは満足した表情で相手からどんなレスポンスが返ってくるか、その妄想に浸っていた。

 なんなら、下手くそな鼻歌さえ歌っていた。

 が、大きなミスを犯していたことに、その時は全く気付いていなかった。

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