4限目 いつも


 Dear my friend.

 It's kind of boring every day.

 I wonder if there will be something exciting and fun.




 *****



 毎日は変わり映えなく過ぎていく。

 決まった時間に起きて、決まった時間のバスに乗って通学し、スケジュール通りに授業やテストを受ける。友達と話したり遊んだりしながら、時に将来のことについても考える。


 最近なんだかそういうこと全てがあまりに単調に感じる。


 前まではそんなものだし、そういう毎日が嫌だとも変えたいとも退屈だとも思わなかった。特に何かあったわけでも、誰かに何かを言われた訳でもない。なぜか急にすっぽりと何かが抜け落ちたかのように、目の前の世界が色褪せた。



「安芸、次現社やで。はよ行こ」



 ぼんやりする私に咲希が声をかけ、次の授業の教科書とノートを持って教室を出る。2年生になってから選択授業で現代社会を選んでおり、その時は複数組の共同授業となる。


 自分のクラスの教室を出て、階段を登って廊下を進む。同じような景色が続き、同じ扉や窓が羅列されている。そこを通り過ぎた先に、2年生になってから選択授業のたびにずっと使っている「選択B」の教室がある。選択教室はいくつかあるらしいが、その数や場所まで詳しくは知らない。


 いつも通りの窓際の前から5列目の席に座る。現社のときはいつもこの席で、席が決まっている訳では無いがいつの間にか周囲もそれぞれいつもの決まった席に座るようになった。


 窓からは運動場が見え、たまにどこかの学年やクラスの体育の風景が見える。ぼんやりと外を眺めながらも、授業ではテスト範囲となりうる場所をマークして過ごす。


 9月になったとはいえ、日差しの強さは弱まる気配がない。教室内は冷房が効いているとはいえ、窓際は強い陽光のせいで暑い。




 こうして一日は変わらず過ぎていく。淡々と過ぎていき、代わり映えのないタスクが消費されていく。

 学校がひどくつまらないとも思わないし、友達と遊ぶことは楽しい。イベントがあればワクワクだってするし、そのうち始まる文化祭だって楽しみだと思う。


 それなのに、最近ずっともやがかかったかのように目の前の景色が霞む。いつからといつ明確な時期がある訳ではなく、気がつけばこんな状況だった。何かをすっぽりと無くしたかのような、何かをずっと探しているような──言葉にできない焦燥感のようなもので溢れている。



 勉強や小テストを繰り返す度、私はこれからどうなるのだろうと漠然とした不安のようなものが襲ってくる。

 このまま勉強をして、大学や専門学校へ行ったとして・・・私は何をしているのか、何をするのか。


 特にやりたいことや目標がない私にとって、この先の将来はずっと漠然としている。きっと、どこかへ進学して、どこかに就職して、働いてそれなりに生きていくのだろう。それで満足だし、そういう生き方がいいと思うのに、たまに学校の先生から進路の話をされる度に「どこで何をするのか」を問われる。


 そんなの、私が聞きたい。


 それなりに楽しい毎日、それなりに充実した現在いまがある。それなのに、その先を考えると色なことが色褪せて見えてしまう。



 考えなければならないけど、答えもすぐには出ないそんなことを考え続けてしまう。




「安芸ー、明日の放課後って予定ある?」


 相も変わらず、どこかフィルター越しに息をしている私に咲希が話しかけてくる。


「いつも暇人やで」


「買いもん付き合って」


 どこかそわそわした様子の咲希の誘いを断る理由がないので二つ返事で了承する。

 聞いたところによると、もうすぐ咲希と一輝が付き合って1年が経つらしく、記念日のプレゼントを買いに行くという。


 そういえば、確かに咲希からNIKKUの一輝と付き合ったと聞いたのは去年の今頃だった気がした。去年、私と咲希は一輝と同じクラスだった。




 気だるい残暑を感じながら、私は咲希と放課後の街へと繰り出す。

 正直、夕方の街の空気感は結構好きだった。疲れた雰囲気を出しつつもどこか開放感と明日への憂鬱を抱えた空気が、私が今ここにいることを感じさせてくれるようで。


 少しずつ日暮れが早くなり、ほんの少し秋の到来を感じる。

 雑多な人混みをかき分けながら、今話題のポップアップストアやバラエティ雑貨のある生活雑貨店などを覗くのは楽しい。どうでもいい忘れてしまうほどささいなことを話し、つまらないことで笑い合う時間は不思議と私を焦燥感から解放してくれる。


 あちこちの店を渡り歩き、話題の新商品や可愛いヘアアクセなんかも気になって立ち寄ってしまう。寄り道の方が圧倒的に多い放課後のショッピングは楽しくて仕方がない。

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