CASE-1 30~40代 氏名等不詳の女性 死因:溺水

CASE-1 120_氏名等不詳女性_令和6年10月1日

鑑定書


鑑定人 

北海道中央医科大学大学院医学研究科 法医学講座

氷見蓮之助 堀田圭一 

北xx大学大学院歯学研究院

南原俊之


札幌方面豊平警察署司法警察官警部XX XXの嘱託により、令和6年9月30日に北海道札幌市豊平区平岸X条X丁目S川流域内で発見された氏名等不詳の女性死体について、令和6年10月1日午前8時00分から午前12時00分まで北海道中央医科大学法医学講座において、令和6年9月30日札幌簡易裁判所裁判官XX XX発行の鑑定処分許可状に基づき解剖を行った。鑑定結果および解剖内容は下記のとおりである。


<鑑定結果>


1,死因

溺水による窒息死である。


2,自他意、事故の別

他意もしくは事故の可能性が高い。


3,損傷の有無と成傷方法、成傷器の種類とその方法

右肩部に皮下出血。

左大腿部に皮下出血を2か所認める。鈍体と接触し成傷したと考えられる。

右側頭部、擦過傷と線状の骨折を認める。鈍体と接触し成傷したと考えられる。


4,疾病の有無

子宮に縫合痕を認める。


5,死亡推定時刻、もしくは死亡から解剖までの経過時間

死亡から解剖までの経過時間は約48時間以上であると推測される。


<解剖内容>


身長は約158cm、体重は約45kg、栄養状態はやや貧である。皮色は蒼白している。死斑は背部から腰部にかけて発現し、鮮紅色調、指圧では退色しない。全身の関節の硬直は寛解している。頭毛の長さは約40cm。頭頂部は黒色、頭頂部から約3cm以降は茶色である。


前額部に方向不明の擦過傷、約3cm×幅約4cmを認める。左右の上眼瞼結膜、下眼瞼結膜、眼球結膜に溢血点を認める。瞳孔は混濁し、透見できない。


口腔内。口腔粘膜に溢血点を認める。歯牙。上顎、右第8番、下顎、右第8番および第7番はメタルクラウンである。下顎の切歯にエナメル質までやや摩耗している。


上肢。左右の手掌面は漂母皮化している。右、手背面に方向不明の擦過傷、約2cm×幅約4cmを認める。肩部に紫赤色の皮下出血を認める。肘部から手背に向かって約3cmの部位に径が約1.5cmの黒子を認める。


下肢。左、大腿部に高さ約12cm×幅約2cmの皮下出血を認める。その皮下出血から約10cmの位置に、並列するように皮下出血を認める。二重条痕であると推定される。


腹部。臍から約10cm下方、陰毛の直上に幅が約10cmの手術痕が存在する。


頭部。右側頭部、擦過傷による表皮剥脱を認める。擦過傷の大きさは約5cm×約6cmであり、傷の方向は下肢側から頭側に向かっている。


開頭。頭蓋冠、右側頭部に約5cmの線状骨折を認める。硬膜外出血を認め、軟凝血を認める。頭蓋冠、矢状縫合は後部で癒合している。冠状縫合、人字縫合はやや癒合している。


開腹。

胸部。左右の肺は膨隆している。胸腔内に水分の貯留を認める。


胃内容は透明な液体と砂粒を認める。十二指腸内に白色の食物片の残渣を認める。


子宮は腹膜と癒着しており、表面に幅が約10cmの縫合痕を認める。子宮の割面に筋腫を認め、大きさは約1cm×約0.9cmである。


気管内に砂粒を認める。舌骨および甲状軟骨に骨折は認めない。

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