第18話 吉凶入り乱れ!ツッパリ『凛』と真面目『凛』の日常!!(18)



「そのゲーム、月額はどれぐらいですか?使った現金はいくらですか?」


「あ、使ってないよ。無料で始められるゲームだったから。」


「無料?」


「うん。有料だったらやってないよ。」



(それ、あやしくねぇか?タダほど高いものはねぇーぞ?)



凛道蓮モードで考えていれば、あ、と吉田さんが声を漏らす。



「無料で登録は出来たけど・・・それは、小村さんの招待状があったから出来たんだった。」


「『招待状』?」


「そう。小村さんの友達紹介を利用したら、月額料金を無料で始められたんだった。」



「そうでしたか・・・」


(完全に詐欺の匂いしかしない。)




〔★怪しさ満点だった★〕




よくそんなアプリで、変なゲームで、遊ぼうと思えたわね。


顔に出さないように、心の中で呆れる。


そんな私の前で、吉田さんは詳細を語る。



「だから・・・余計に小村さん達を怒らせたの。彼女のおかげで特別に無料会員になれたのに、まったく勝てなくなったから。」


「勝てなくなった・・・・・ですか?」


「うん・・・。それまでは、負けてもやり込めば、最後は+ポイントになって利益が出てた。だけど、最近は、負けを取り戻せない・・・!」


「それは仕方ないですよ。今まで勝ちすぎだっただけだと、あきらめた方がいいです。」


「そうはいかないよ!今まで、私の勝ちポイントを稼いでたから、小村さん達に構ってもらえたのに・・・!そのお礼で、雑誌に出てる有名店につれてってもらえて、パーティーとか、イケメンを紹介してもらえたの!私が勝ったポイントで、他のゲームで課金したり、いろいろ遊んでたのが出来なくなって・・・!!」



(おいおい、ゲームのお返しにしては、豪華すぎねぇか?)



ただのゲームじゃ無くねぇ?



完全に、詐欺を疑いながら聞いた。




「あの・・・吉田さんの勝った分で遊んでいて、それが出来なくなって小村さん達が怒っていじめてくるのって、完全な言いがかりだと思いますよ?距離を取って逃げた方がいいですよ?」


「それができないから困ってるの!!」


「?どういうことですか?」


「・・・りたの。」


「え?なんですか?」


「・・・つまりね・・・」




モゴモゴ言う相手に聞き返せば、唇を震わせながら吉田さんは言った。





「小村さん達から借りたポイントが返せてないの・・・」


「借りたポイント?」


「そのゲーム・・・ログインと、マイフレンドへのフォローやコメントをつけると、ポイントがもらえて・・・友達の数やログイン回数が多いほど、ゲームで遊べるポイントもたくさんあるの。私はそのポイントを使った、持っていたポイントを10倍に増やしていたの・・・。」


「10倍!?普通じゃないですよ!?」


「そうなの!あんなに簡単だったのに・・・何で勝てないの!?」




(いやいや!勝てる確率がおかしすぎる!だまされてるが確定だろう?)




と、言いたいけど、切羽詰まった状態の吉田さんにそんなことは言えない。



「手持ちのポイントが半分になっても、倍以上で取り戻すことが出来たの!ポイントが0になっても、マイフレンドのフォローとログインの繰り返しをして、1回分のゲーム資金にして逆転した!!何度も0ポイントから逆転して、最後は私が勝ってた!損することなんてなかった!!」


「~・・・。」



というか、吉田さんがメッチャしゃべるので、指摘をする隙がない。




「私がゲームをするためのポイントをチマチ集めるのを見て小村さん達は、自分のポイントを私にくれた!『あたし達じゃ負けて損するだけだから、よっしーが使ってくれた方が良い。よっしーを信じてるから。』って言ってくれた!それで、10倍にして返した時なんて・・・!!本当に、あの頃は幸せだった・・・!!」



(それ、本当の幸せとは言わなくね?)




〔★個人差はあるが、凛の幸せカテゴリーには入らない★〕





いろいろ思うところはあったが、吉田さんの現状はわかった。




「つまり・・・小村さん達からポイントを借りても勝てなくなって・・・返せないポイントがたまりすぎた結果、先ほどのような暴言と暴行が始まったということですか?」


「う・・・うん・・・。」


「そのポイント、ログインとマイフレンドへのフォローなどで稼げるのですよね?当分は、その方法で地道にためて少しずつ帰していった方がいいですよ。」


「ダメよっ!!そんなやり方だと、10年以上はかかっちゃう!」


「そんなに負けたのですか!?」


「そ、そうだけど、大丈夫よ!一発当てれば、大逆転できるわっ!負けた分をすべて取り返すのは無理かもしれないけど、小村さん達から借りたポイントは返済できる!リベンジする分のポイントは、私のところに戻ってくるわ!」



「この期に及んで、なに甘いこと言ってるんですか!?」



自分に都合のいい夢見るのもたいがいにしろや!!


てか~~~



(~~~ダメだっ!!ポイントの額もだけど、吉田さんの精神状態もダメだ・・・!!)




〔★ギャンブルで失敗する人間の思考になっていた★〕




「ダメですよ!小村さん達から借りたポイントを返せたら、もうそのアプリはやめて下さい!このままじゃ、泥沼から抜け出せませんよ!?」


「いやよ!小村さんにポイントだけ返して終わらせるなんて・・・出来ない!私の評価を下げたままやめられない!」


「なに言ってるんですか!?ゲームの評価が吉田さんのすべてじゃないでしょう!?」


「すべてよ!ただでさえ、マイフレンドがどんどん減ってきてるのに・・・戻ってきてもらわなきゃ!」


「そんなの・・・本当の友達だとは思えませんよ!?」


「―――――――――――――――菅原さんは友達がいないからわからないのよ!!」


「!?」




その瞬間、息を飲んだ。


呼吸できなかったことが自覚できた。




「あ・・・・・・!?」




マズいという顔で、吉田さんが口元を抑える。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る