彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)

YAYOI99

第1話 吉凶入り乱れ!ツッパリ『凛』と真面目『凛』の日常!!(1)



朝が来る前に帰還する。


1人も欠けることなく、夏休み最後の集会は終了した。



「凛、お疲れ。」



そんな僕の帰りを待っていてくれていたお方が、冷たく冷えたカップを差し出してくださった。



「ありがとうございます、瑞希お兄ちゃん。」



幸せいっぱいでお礼を言えば、笑顔で彼は僕の頭を撫でてくれた。


凛道蓮(りんどうれん)、15歳。


カテゴリーは『ヤンキー』の龍星軍4代目総長。


ただ今、爆走りの集会を終えて、無事に帰ってきたところです。


一介のキッチンカウンターの定位置の席で、用意された『カッフェ・ドルゾ』を飲みながら一息ついています。



「いただきまーす♪」


「おう、飲め飲め!」



そう言って、僕をねぎらって下さるのは真田瑞希さん、20歳(はたち)。


バリスタ見習いの可愛い系の素敵なお兄さんで、僕の大好きなお方♪


彼が作ってくれたドリンクは極上です。



「甘くて美味しい~!」


「ハハハ!そりゃあ、よかった。」



瑞希お兄ちゃんは優しくて、面倒見が良くて、ちょっと天然。


しかし、穏やかな見た目に反して、実はめちゃくちゃ強い人。


なぜなら、僕が総長を務める龍星軍を作った人物で、初代総長だったんです。



「バラさんどうだったよ?」


「いました。いつも通りでした。」


「病み上がりとはいえ、しつこく凛を追うと思ったんだけどな~正直、帰りはもっと遅いと思ってたぜ?」


「他の暴走族も集会していたので、そちらに行ってしまいました。」


「あん?龍星軍を無視して行ったっていうのか?」


「違うっすよ~他の族を利用したんす。」


「高千穂。」



そう言ったのは、同じように休憩しているヤンキーガール。


同じチームの友達、高千穂カンナさんだ。


僕が率いている現役メンバーの中で、紅一点の唯一の女子。


親衛隊長として、漢と互角以上にわたり合えるハンサムガール。



グビッと、オレンジジュースを飲んでから言った。





「ポリのあおりがウザかったんで、他の族の群れにみんなで突っ込んだんすよ。それで大乱闘になって、あたしらはスムーズに帰って来れたんす。」


「マジか?誰が考えたんだ、そのナイスな案?」


「そりゃあもちろん、凛さんですよ!」


「可児君。」



元気よく言ったのは、同じくチームメイトの可児良信君。


今はなき、SHIELDというチームの元・総長候補で、現在は龍星軍の副総長。


疲れを全く感じさせない様子で、こちらへとやってくると言った。



「凛さんの他の族をけん制して、サツ共をかく乱させる作戦が大成功だったんすよ!さすが、俺らの総長です!一石二鳥の案を思いつく凛さんに惚れ直しましたよ!」


「へえ~よかったな、凛?」


「う、うん・・・ありがとう・・・」


「オッス!」



どういうわけか、可児君は僕をすごく慕ってくれる。


好かれているのは悪いことではないけど・・・舎弟とか、子分とかにしてくれって言ってくるところに引く。


義理堅くて漢気があるのはわかるけど、何度も僕がお断りしているのに、しもべにしてくれと言ってくるところにドン引き。


悪い五分刈りじゃないんだけどね・・・。



〔★五分刈りにも、良い悪いがある★〕



「ウェイウェウェイ!俺の方がリンリンに惚れてる的なー!もう、今夜みたいな小悪魔のような攻め方に~マジ胸キュンで鬼ヤバ~!!抱きしめてたーい♪」


「って!?もう抱きしめてますよ、ちーちゃん!?」



僕に抱き付きながら言うのは、チームの仲間の幡随院長政君。


全国ナンバーワンの半グレチームの元ボスで、現在は龍星軍の遊撃隊長。


チャラオだけど、ブチギレると怖いので怒らせない方向で頑張ってます。





「リンリン何飲んでるのー?ちーちゃんに一口ちょうだーい♪俺のもあげるから~♪」


「おい!やめろ、幡随院!凛さんが飲んでるのを取るな!」


「前も一口とか言いつつ、凛のドリンク全部飲んだじゃねぇーか!?オメーが飲んでるカフェオレを飲み干してから、アイスココアを注文しやがれ!」


「にゃははは!可児っちとカンナっちが、俺が羨ましくて焼きもち妬いてる系~!」


「「なんだとぉー!?」」


「カンナは焼きもち妬いてねぇーよっ!!」


「悠斗君。」



可児君とカンナさんのツッコミに続き、響いたのは長谷部悠斗君の怒声。




「テメー幡随院!カンナがりんどーとデキてるって表現やめろ!!うちの親衛隊長を侮辱すんな!!」




そう語る悠斗君は、龍星軍ではカンナさんと行動を共にする親衛隊長補佐。



「にゃははは!なんで悠斗っちがマジギレ系~!?ウケるんですけどー!?」


「あんだとテメー!?」


「ちょ、喧嘩はやめて下さい!」


「リンリンが言うから喧嘩しない系だけど~リンリンカンナッチのことどう思ってる系?」


「好きですよ?」


「はあ!?」


「ちょ、凛っ!!?」



真っ赤になる悠斗君とカンナさんにどうしたんだろうと思う。



「くっふふ♪だよなー凛はカンナさん大好きだよなぁ~?」


「瑞希お兄ちゃん、その顔やめてください。」


「あ~ん?どんな顔よぉ~正直者めぇー♪」



瑞希お兄ちゃんにほっぺたをツンツンされるのはいいが、僕を見る彼のニヤニヤ顔だけは良い気がしない。


冷やかしてるみたいで、なんかヤだ。



〔★みたいではなく、冷やかしている★〕






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