ちょっと変わった女達

しょもぺ

第一の女達 『隙間のある女』

俺の嫁はなかなか出来る女だ。


結婚して4年。

仕事で忙しい俺を助けながら、子育てに勤しんでいる。

ぶっきらぼうで口数の少ない俺なんかには、もったいないぐらいのできた嫁だ。


家事はしっかりキッチリとしていて、繊細な性格が家事に滲み出ている。

キッチンやトイレはいつもキレイだし、俺のYシャツのアイロンがけも完璧だ。

庭の花の水やりや、玄関の前の掃除も行き届いている。


完璧だ。本当によくできた嫁だ。こんな嫁をもらって俺はなんて幸せなんだ。

若くてキレイで可愛くて愛想も良い。なにひとつ不満は無い。


いや……ただひとつ。

そう……何というか、いや、気にするほどのことでもないが……

繊細な性格の嫁であるが、ただひとつ、気になることがある。


それは、フタというか栓が閉まっていないのだ。


具体的には、シャンプーボトルの詰め替えの際のフタ。

少し……いや全然フタが閉まっていないのだ。

また、洗剤の詰め替え等、ありとあらゆる家中の栓がゆるくて閉まっていないのだ。

調味料のフタも開いていて、倒れてこぼれてしまったこともある。

時には、水道の栓がチョロチョロと漏れていたりもする。


結婚したばかりの当初は、嫁の腕力が弱くて閉めるのを怠っているのだろうと思っていた。

しかし、あまりにもそれが目に付くので、やわらかい口調で注意したこともあった。

だが、それでも、嫁の栓の閉め方が緩いのは治ることはなかった。


ささいなことなんだ。そんなことでケンカになってもバカらしい。

俺が少し我慢すればいい。嫁だってワザとやっている訳ではないのだ。

きっと家事と育児が忙しくて、無意識に忘れてしまうのだろうと思うことにした。


クセというか、無意識な行動。ワザとやっている訳ではない。

俺が気が付いたら栓を閉めればいいだけのことだ。

そう、気にしなければいい。それで万事解決。必要以上に物事を荒らげることはないのだ。


そして。それからさらに5年の歳月が過ぎた。

俺の仕事は行き詰まり、苛立つ日々が増えた。

嫁は家事と育児を良くやってくれた。俺が文句を言うべきではない。


問題があるのは俺自身なのだ。

俺さえしっかりうまく仕事をしていれば、嫁にと子供を苦労させることもない。


しかし、遂に俺は、自分のストレスを嫁と子共にぶつけてしまった。

ああ、なんてことをしてしまったんだ!……自分の愚かさを悔やみ、猛省した。


俺は嫁に謝った。嫁は怒ることもなく笑顔で笑ってくれた。

ああ……嫁はなんて優しいのだろうか、なんて懐が深いのだろうか。


俺は、嫁にすまないと思い、たまには家事と育児を離れて羽を伸ばして欲しいと思った。

丁度、嫁が友人と久しぶりに会う機会があると言っていたので、それならばと、

俺は子供を連れて実家の母に会いにいくから、その友人と温泉旅行にでもいけばいいと提案した。


最初は、戸惑っていた嫁だったが、俺の後押しもあって、友人と1泊の旅行に出かける事になった。

そして当日。俺は実家でのんびりと過ごしていた。今頃、嫁ものんびりと旅行を楽しんでいるだろうか。

そんな事を考えながら、俺は子供と母と一緒に談笑していた。


後日。嫁の浮気が発覚した。

この時、結婚前から関係のある男と不倫旅行をしていたのだ。


俺はすべてが崩壊するかのように頭の中が真っ白になった。

当然、離婚することになり、子供も俺の前から去ることになった。


なんとも、閉まりの悪い嫁ではあったが、アソコの締りが良かっただけに、残念でならない。 おわり。



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ちょっと変わった女達 しょもぺ @yamadagairu

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