第20話 真野アズの初舞台は歌番組
『アズ、みんなと少し動きが違うから直して』
『アズちゃん、歌が少し気持ちが入ってないから、気持ちを入れ込んでね』
『アズくん、もっと楽しんで。僕みたいにね』
アズは自分のことを過大評価していた。
このチームのレベルが高すぎるのか、新曲を披露するにはアズには時間がかかるようだった。
アズは自分のパートを一生懸命練習した。
でも次の日には他のメンバーはアズよりもっと上手くなってダンスや歌を披露する度にアズは泣けてきた。
いつのまにかアズは歌を披露する舞台のリハーサルで泣きながら歌とダンスをしていた。
マネージャーが気づき、真野アズに駆け寄ってきた。
『アズくん、どうしたの?舞台で緊張しちゃった?』
周りのメンバーも心配そうにアズを見ていた。
アズは震えながら言った。
『出来ないです。私は自分がこのグループの核になるくらい出来る人だと思っていました。それなのに、みんな私よりもっと凄かった。私、同じ舞台には立てません。足りないものが多すぎます』
そう言われて、マネージャーも他のメンバーも困っていた。
だけど国光無二だけは違っていた。
無二は泣いているアズの胸ぐらを掴み、目を合わせて言った。
『出来ないことぐらい知ってるよ。でも、諦めずにやることで悔しさを強さに変えてやるんだよ。もう脱退するか?何もチームに貢献できずに何もかも捨てるか?そんなのカッコ悪いだろ。少しぐらいあなたの個性を舞台で出してみなよ。アズがミスしたら私たちがカバーするから、初舞台は好きに踊りなよ』
マネージャーさんは、無二に『乱暴はやめようね』と胸ぐらを掴んだ手を離させた。
マネージャーは泣いているアズにハンカチを渡し言った。
『アズくん、君はこのチームの期待の星の1人なんだから、簡単に辞めるとか言わないでね。いつもの自分を出せば良いんだから。言いたいことは無二と一緒だから。なんていうか、諦めないでね。じゃあ、本番は頑張るんだよ!』
そして、歌番組の時間になった。
場所は花畑の中で歌うというものだった。
そして、番組が始まり無二のグループが歌う番になった。
アナウンサーが、私たちのグループを呼びかけた。
『ブルージーニアスの皆さん、こんにちは。今日は新曲のLOVEノートを披露してくれるそうですね。しかも、新メンバーが入ったと聞きましたが、ご紹介よろしいでしょうか』
無二はアズに合図をした。
アズは答えるようにカメラに向かって言った。
『まーのーまーのー。真野アズです。アズで覚えてください』
『真野アズさん、ありがとうございます。国光さん、今回の曲はどのような曲なんですか?』
『今回は、新メンバーのアズが作詞を務め、作曲はラビットボーイがしました。愛に疎い少年が初めて好きになった人との事を歌詞に込めた歌になっています』
『ありがとうございます。今から初披露ということで、では改めてブルージーニアスでLOVEノートお聞きください』
すると途端に照明が赤くなり、優しく無二が歌い出した。
その後、ラビットボーイが無二と2人で歌い、花鈴がカメラに手でハートを作り、ダンスをしながら歌った。
アズは画角の中には入らずに、歌が終わる後半ごろに間奏でダンスを披露して最後は4人で歌い上げた。
生中継が終わり、4人は深々と頭を下げて終わった。
4人はロケバスに乗り、マネージャーさんが乗り込んできて言った。
『今日の反省会だけど...』
マネージャーさんが話そうとした時に、3人がノートとペンを取り出し話を聞く体勢になっているのをアズは見て、自分もやらなきゃと慌てて、紙が無かったので携帯のメモで代用した。
そして、マネージャーは話した。
『まず、無二は歌い出しも完璧だった。照明さんが褒めてたよ。次の課題としては、ハモリが出来るようになるといいね。少しガタガタだったから。次にラビットボーイはダンスでもう少し、少年の恥ずかしさを表情に出せると良いね。それから、花鈴は歌は少し上達したけど、舞台を楽しむ力が足りないよ。そこを気をつけてね。最後にアズくん、初めての舞台お疲れ様でした。まずは大きな舞台で踊れたことにはなまるをつけたいぐらいだよ。君の最初の課題は練習通りやり過ぎかな。もっと、肩の力を抜いてやってみると良いよ。それじゃあ、今日の反省会は終わりです。みんなお疲れ様でした』
無二はありがとうございましたと言ったのを同時にラビットボーイや花鈴も言ったので、真似してアズも言った。
無二はアズに声をかけて言った。
『アズ、お疲れ。今日は休みな。明日はまた練習だから。今日はごめんね。厳しいこと言って。でも、上手くならなきゃ上には行けないから』
『分かってます。あの、なんでみなさんは私よりもっと上手いんですか?』
無二は笑って言った。
『だって、練習してるから』
アズは練習だけの上手さではない気がした。でも、それ以上追求出来なかった。
だって、上手くなるには練習あるのみだって、知っていたからだった。
真野アズは、必ず上手くなると心に決めたのであった。
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