エピローグ

週刊野球

――――明けましておめでとうございます。監督、お越し頂きありがとうございます。

 いえいえ、こちらこそ。


――――思えば二〇二〇年代、『黄金のアベンジス』の中心選手を担い、コーチとして様々なチームで腕を振るい、その後監督としてアベンジスに戻り、数多くの選手を育成されてきたまさに野球一筋とも言える人生を歩まれて、今の実感はいかがですか?


 いきなり質問がでかいね(笑)。うーん、何とも言えないなぁ(笑)。でもねえ僕はやっぱりこのチームが好きだし、裏切れない思いがあったよね。


――――裏切れない思いとは。

 いろんな選手を見てきて思うけど、僕は、そんなに天才的な、いわゆる優秀な選手じゃなかったなあと。だけど嬉しいことに、僕を支えてくれた人たちが優秀な人ばっかりで、人生の底でそれに気付けたところから全く違う人生が始まったように思うんです。そこには奥さんもいたし、全く野球とは関係ない友達もいたし、アベンジスという場所があったなと思ってるから、いろんな経験を積んでもやっぱり戻ってきたかった。監督になったのも、子供が大きくなったから、もっと忙しいことをしようと思ったからなんですよね。


――――現役時代、黄金期前夜、様々なスキャンダルが起こった時期がありました。あの時期ですか?


突っ込んでよく聞いてくるよねそんな事(笑)。まあ、あたりですよ。でもあのキャリア低迷期が僕にとって、とてもありがたい時間になったと思っています。今思うとね……。ああ当時は地獄だったけども(笑)。あの時と比べて柔らかくなったでしょ?


――――確かに僕は三〇歳で、あの時は小学生でしたけども、お若い頃、とても鋭い目つきをされていて、どちらかと言えば近寄りがたい雰囲気をされていたのが、今こうしてお話を聞くと、お優しいなと思っています。


 そりゃ加齢だよ(笑)。いろいろホントに体が動かなくなったりしてきたし(笑)。まあ身体がフラフラになったのは初めてじゃないけどね。


――――むしろあの時よりも、その後三連覇と同時に広背筋症で電撃引退なさった時の衝撃のほうが覚えています。


 そうですね。それより前の弱い時の自分ならもう、あそこで終わってたと思いますよ。


――――私であればとても耐えられそうにありませんが……そこからどう立ち直られたんですか?


 それより前にあったことの方が最悪だったから(笑)。理不尽なことが当たり前に起こるのがこの世界の当り前だってことなんだろう。解ってたけど、認めたくなかったんだ。でも、そうね。あの時から、今もそうだけど。自分のやることはメジャーにはないなって思った。日本にいてやらなきゃいけないことがあるし、自分が輝くのは素晴らしいけれど、誰かが成長していくことがとても幸せだって感じた一瞬があって。それにあの頃の仲間とはずっと仲良しで。


――――それはアベンジスナインの選手の皆さんですか?


 違う(笑)。勿論彼らもだけど、それに言っても分からないから言えない(笑)。でもね。上手くは言えないけど。あの時自分を受け入れることができて、駄目な自分もいい自分も、いいことも悪いことも、認めてあげることができてよかったと思ってますよ。

 まあ、心残りはありますけどね。


――――それでは次のシーズンに向けて抱負を一言お願いします。


 方針は一つです。今年も変わらず全力のプレーを通して、皆さんにとって明日の元気になれるようなチームにしていきたいですね。

 ありがとうございました。


――――ありがとうございました。


ホントにね(笑)



       


週刊野球 二〇四六年 一月三週号 

全球団監督インタビュー 第三回 アベンジス 高峰修監督回より


  

                                  《完》


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